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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「トランサルピナの奸計」
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第28話 アイルの花、散る

      挿絵(By みてみん)




 ”闇夜の皇女”エリス。


 彼女を交えた”月の女神”アリアン・ロッド一行は、途中休憩を挟みつつ、二日後の夕暮れにウェルへと帰り着いた。


 北のアヌンと南のダヴィド。それぞれの都であるゼルフとノギオンから、丁度中央に位置する森に女神のフロッド宮殿はあった。




 帰着後。急ぎアリアン・ロッドは、アイルの女王モリガンに二人の皇女エリスとネヴァン謁見えっけん許可の申し入れを行った。


 アイル・ダーナがコリントス海域へ、監視艦隊を派遣するであろう事は彼女も承知していた。故に、使者にはテッサリア”虹の女神”イリスの妖精姉妹ハーピーのアエロ。彼女を召喚し書状をゆだねた。


 しかし、いくらアエロが疾風の如き速さを持っているとしても、時既すでに遅しであった。


 アエロがアイルのノーグ王城を訪れた時には、既にモリガンとヴァハは軍港イシュモニアを立っていた。


 仕方なくアリアン・ロッドは、ルゴスらの見送りから所領のニューグレンジとりでに戻っていた皇女ネヴァンに直接使者を送る事にした。


 アイル・ダーナ”戦女神”バズウ・カハの一柱であり、女王継承権第二位である事を考えれば、当然の処置と言える。




 程なく、女王の名代として謁見えっけんを許可する旨が、ハーピーのアエロ伝手づてに伝えられた。


 そして、翌日の昼過ぎ。


 首都エヴァンのノーグ王城にて、二人の皇女エリスとネヴァンの謁見は現実のものとなった。




◆・.。*†*。.・◆




 玉座に向かって雛壇ひなだん左手にロックホル城塞じょうさい司令であるダグザ元帥とクレーニュ国務大臣。右手にはディアン・ケヒト大神官と”冥府めいふの魔法使い”と呼ばれるミディール。


 雛壇下方左にはニューグレンジとりで司令でありネヴァンの副官ヌアザ将軍が。右にはウェルの使者としてヘルノギオン四天王の一人ペディヴィアきょうりん席した。


 そして、警護の騎士タナトスを左脇に従え、使者として控える”闇夜の皇女”エリス。




 やがて、アイル・ダーナ皇女ネヴァンが壇上に姿を現した。


 名代とは言え、女王として玉座へ着く彼女を見て、エリスは大げさなカーテシーで礼を取った。



「これはこれは、ケルトの女王様。御機嫌(うるわ)しゅう存じます……」



 微笑みに答えるネヴァン。



「エリス。まだ私は女王様などではないわ」


「あら!? そうね、少し早かったかしら?」



 悪戯いたずらっぽくエリスも笑みを浮かべた。


 そんな彼女の人懐っこさに、玉座を離れ雛壇ひなだんを降りるネヴァン。


 すると、彼女をクレーニュ国務大臣がいさめる。



「ネヴァン様……」



 確かに年や背格好も似ており、まして神器を分かち合った仲の二人ではある。


 しかし、女王不在の折り。あくまでも代行と使者の形を取った公式の謁見えっけんと言う建前で、国務大臣がウェルの女神アリアン・ロッドの仲介を受け入れた。



 クレーニュに止められたネヴァンではあったが、そのまま彼女はひな壇下で続けた。



「いいのです。堅苦しいのは性に合いませぬ。エリスもそうでしょ?」


「うれしいわ、ネヴァン。やっぱり貴方とは気が合いそう……」



 再び悪戯いたずらな微笑みを浮かべるエリス。ただ、その表情はあざけりとも見える冷たさを含んでいた。



「それにしても、よく来てくれました」



 そうとは気付かず、エリスへと歩み寄るネヴァン。


 すると、この機会を待っていたかのように、エリスは低くかすれ声にささやいた。



--- タナトスっ ---



 満を持したタナトスが答える。



「御意っ!」



 瞬間。タナトスはマントをひるがえして身構え、腰に携えた神剣フォール・アウトのつかに手を掛けた。



「ナニっ!?」


「エリス殿、何をっ!」



 同時に叫ぶヌアザとペディヴィア。二人は飛び出すタナトスをさえぎるよう左右から剣を抜き放った。


 が、タナトスは平然とうそぶく。



「遅い……」



 一瞬の内に間合いを詰める二人に対し、タナトスはさやから抜き上げるやいばでヌアザの右上腕を切断すると、返す刀でペディヴィアの右手首を切り落とした。


 そして、フォール・アウトの柄を自らの胸元へ引き寄せると、その切っ先をネヴァンへと向けた。


 瞬く間にネヴァンの懐に踏み込むタナトス。次の瞬間。鈍色にびいろに妖しげな剣が彼女の胸をつらぬいた。


 息を切らせるネヴァン。



「何故……」


「あなた、馬鹿ね……」



 そうつぶやいて冷笑を浮かべるエリス。


 その言葉を皆が呆然と聞く中。更にタナトスはネヴァンに体を預けるよう、ゆっくりと剣を胸の奥へと押し入れる。


 そして、彼女の耳元で静かにささやいた。



「すまぬが今生の命、俺がもらい受ける……」



 絶える吐息と共に、ネヴァンの頬を一筋の涙が零れ落ちた。



--- ルゴス ---






 つづく

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