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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「トランサルピナの奸計」
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第25話 野原の約束

      挿絵(By みてみん)




 神々の王国世界、古のガリア。そこで起きたアイトリア勢とテッサリア勢の争い。


 そのガリア世界全体を巻き込み疲弊ひへいさせた長き争いは、カルヤラ”白き愛の女神”エタニティとケルト”白き大地神”アルビオンらの調停によって一応の終止符が打たれた。




 数多あまたの神々は、大地母神ガイアが残した言葉



~ ガリアは新たな王たりうる者達へ ~



 それは”人の世”であり、それが彼女の意志であると受け止めた。




 また、争い後に結ばれた”神々の盟約”。



---- 隔たれた世界へ立ち入らざる事 ----


---- 分かたれた民の魂を犯さざる事 ----



 その盟約に従い、彼らは己が王国を次元を違えて再構築し、ガリアを去っていった。




 テッサリア”虹の女神”イリスの王国クレテが先にガリアを去る事を条件に、アイトリア”闇夜”のエレボスとニュクスらもドドナへと兵を引き連れ移りつつあった。




◆・.。*†*。.・◆




 ”白き大地神”アルビオンの”神国”アングル・ブリーン。彼を主神に頂くケルト四国として同盟を結ぶ”戦女神の国”アイル・ダーナ。


 その女王モリガンはアルビオンの求めに応じ、軍の派遣を予定していた。


 残るアイトリアの”神々の盟約”遂行の監視役として、海軍艦隊をコリントスの西北にあるイオニア海域へと駐留させる為だった。


 前衛艦隊指揮官にはアイル”三位一体女神”バズウ・カハの一柱である、”いかれる赤いたてがみ”ヴァハ将軍が。


 そして、監視艦隊総指揮官には、”死の女神”モリガン女王自らがおもむく手筈となっていた。




 その将軍ヴァハに随伴ずいはんする副官、アイル”白炎の騎士”ルゴス・ルクリウス。彼はアイルの都エヴァンにあるノーグ王城に出向いた後。軍港イシュモニアへと向かった。


 降り注ぐ日差しの中。そこで彼を出迎えたのは、バズウ・カハの末妹まつまいであり皇女でもあるネヴァンであった。


 彼女は所領であるニューグレンジ砦から、わざわざ見送りに来ていた。


 実は数日前。二人は挙式を終えたばかりであった。



「ネヴァンっ!」


「ルゴス!」


大袈裟おおげさだな。将軍の警護でいくだけなのに……」


「でも、アイトリアの軍が残っているんでしょ?」


「そりゃぁ、そうだけど……」


「だから、心配なの……」


「大丈夫。戦にはならないさ……」



 そんな二人のやり取りを、軍艦艇から降りるタラップで眺めていた将軍ヴァハ。


 うっすらと笑みを湛え、彼女が歩み寄る。



「やれやれ。やはり姉の私よりも恋人か。おっと、もう旦那だったな!?」


「ヴァハ将軍!」



 そう幾分驚くルゴスであったが、右の拳を胸に当てると騎士として生真面目にえりを正した。


 そんな彼の腹をヴァハが小突いた。


 すると、ヴァハに抱き着くよう、いや、ルゴスを庇うようにネヴァンが微笑む。



「ヴァハも気を付けてね♪」


「ついでに心配か……」


「そんなことナイわよ。ヴァハは直ぐカッとなるから心配なの♪」


「私の心配は御無用。いざとなったら、ルゴスも私が守ってやるさ」



 そう言って笑うと、ヴァハは---邪魔者は退散---とばかりに去っていった。そんな彼女の後ろ姿を見送るルゴスとネヴァン。



「君の姉さん、いやヴァハ将軍にも困ったものだ。気が早いというか、最近は、もうおいっ子の心配までしてる……」


「ホントに、まだ結婚式が済んだばかりなのに……」




◆・.。*†*。.・◆




 その後。二人は軍港が見下ろせる丘へと足を運んだ。道すがら、咲きこぼれる白い花を摘みながら、流れる涼やかな海風を心地よく感じていた。




 暫くして、明るく緑にきらめく芝と海が広がった。剣を脇にやり、寝転ぶルゴス。



「久しぶりだな。こうしてゆっくり過ごすのも……」



 寄り添うように腰を降ろすネヴァン。



「そうね、いつ以来かしら?」


「小さい頃は、良く野原で遊んだのにな……」


「ルゴス。花飾りの事、覚えてる?」


「ああ、覚えてる。まだ君も小さくて上手く編めなかったから、すぐに壊れちゃったんだっけ?」


「うん。それで泣いて帰ったら、モリガンが編方を教えてくれたの」


「女王は優しいからな」


「あの次の日の夕方。一人で野原にいたら、ルゴスが探しに来てくれたでしょ」


「そういえば、そんな事もあったっけ」


「花飾りを編むのに夢中で、気がついたら暗くなってて」


「帰り道がわからなくて、迷子になってたんだよな」


「そう。だからルゴスの顔を見た時。うれしくって……」


「そのお礼に、その花飾りもらったよな」


「でも、あの時。ルゴスに花飾りをあげた理由は他にもあったのよ……」


「そうなんだ?」


「あの時の約束。忘れちゃった?」


「忘れた」


「うそぉっ!?」


「嘘だよ、忘れてない」


「あの日から、ずっと私はルゴスのお嫁さんになる日を待ってた……」


「ああ……」



 そう短く答えて、ルゴスは体を起こすとネヴァンを抱き寄せた。



「ネヴァン。絶対、君を幸せに……」


「うん……。でも、あんっ、ちょっと待って……」



 ネヴァンはルゴスとの会話の中、手際よく花飾りを編んでいた。



「よし、出来たわ。はいっ、ルゴスの王冠……。似合うわよ、王・子・様……」




 やがて、アイルにも訪れる新たな時。その人の時代。この国の王と妃となるはずだったルゴスとネヴァン。しかし、これが二人で過ごす最後の時間となった。






 つづく

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