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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「トランサルピナの奸計」
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第23話 復讐の女神

      挿絵(By みてみん)




 古のヴァニラ・フィールズ。そのキュベレー大地南にあった港街ノーア・トゥーンと思しきゲート世界。


 その入江の海岸で出会った隻眼せきがんの海竜ストリ・イシェボ。


 ユランやフィン、そしてウーゼルは、競うようにゲート世界の疑問や不思議を彼女に問いかけた。


 そんな彼らに、どこか苦笑いのような微笑を浮かべるストリ。



「そうか。皆の問いに答えるのならば……」



 リーロを腕に抱いたまま、彼女は砂浜の流木に腰を掛けた。


 そして、感慨に耽るよう言った。



「そう、先に話さなくてはならないものがある……」



 それは、この港街ノーア・トゥーンの話であり、数百年前に起こった”ガリアの戦い”の話でもあった。




◆・.。*†*。.・◆




 時は、”神々の盟約”に従いアイトリアの闇夜が、その軍勢をコリントスのドドナへと移動する前々日の夜にさかのぼる。




 その美しい顔を怒りの形相に染め、夜の女神ニュクスが食い下がる。



「王よっ! エレボス王! このまま引き下がるというのですか?」


「言うなっ! ニュクスよ……」


「そもそも、あ奴らが大地母神ガイアの言葉を勝手に解釈しているだけではありませぬか。元々女神の直系であるのは我々。その王族たる我々をないがしろにした者どもを、このまま許すというのですか? しかも”神々の盟約”などと戯言ざれごとを……」




 ガリア世界の創造神である大地母神ガイア。彼女の亡き後。代わりにガリアの王となり、君臨せんと目した闇のエレボスと夜のニュクス。


 彼らは己が都市国家デルフィを中心とする連邦王国アイトリア、その民でもある”闇夜の軍勢”を引き連れ戦いを起こした。


 神々によるガリア統治を掲げるアイトリア勢と、大地母神ガイアの意に沿い民に世界を託そうとするテッサリア勢。その戦いは、元のガリア兵3分の1を占めるアイトリアが優勢かに思われた。


 しかし、その世界を燃え尽そうかと言う野望は、”カルヤラ創造の女神”エタニティと”ケルト創造神”アルビオンの調停によって一応の終焉しゅうえんを迎えた。


 それは”ガリア創造の女神”ガイアが託した二つの”封神の指輪”グレイプニル・リングが、辺境の神々と思われていた彼らの手にあると明らかにされた為でもあった。




「しかし、ニュクスよ。向こうには”グレイプニル”がある。あれをどうにか出来ぬ以上、仕方あるまい……。其方そなたにしても、アレがあっては生きた心地もせぬであろう?」


「しかし、しかしこのまま……」




◆・.。*†*。.・◆




 闇のエレボス王とらちが明かないり取りを終え、諦めきれぬいきどおりを抱えたまま”夜の女神”ニュクスは自室へと下がった。


 その深夜。


 月明かりに影を帯びる広い部屋の窓際で、椅子にもたれ独り呟く彼女の姿があった。



 「王も気弱になったものじゃ。たかだか指輪ごときに臆するとは……。ああ、口惜しや。何か良い考えは浮かばぬものか……」



 その時。彼女の部屋を娘である”闇夜の皇女”エリスが訪れる。




 チュールをあしらった黒装束をまとい、まるで蝋燭ろうそくのように白く細いうなじ。漆黒の夜空を思わせる艶やかな黒髪に、青みがかった灰色の瞳。


 その面持ちは”アイルの花”とうたわれる皇女ネヴァンと比べても、全く引けを取らない可憐さをにじませていた。



「何用じゃ?」


「母様……」



 そう言って、部屋の暗がりを抜け出たエリスはこぼれる月明かりにたたずんだ。


 しかし、エリスの第一声を聞いたニュクスは、持って行き場のない憤りをなかばぶつけるかに吐き捨てた。



「母? エリスよ、真にわらわを母と思うなら、この状況を其方そちの力でどうにかして見せよっ! 何の為に居ると思うてか!? 何か良い知恵はないのか!?」



「考えがないわけでもありませぬ……」


 

 そう静けさを伴って答えるエリスの一言に、ニュクスはわずかに顔色を変え声を低くした。



「何? あると申すか?」


「母様にも、労してもらわねばなりませぬが……」


かまわぬ。このガリアを手に出来るのならばな。して、其方そちの考えとは?」


「王とアイテールにも地に降りて動いてもらわねばなりません……」


「ほぉ、王と皇子にも?」


「ええ。ですから明日、王らの前で……」


「明日、王の前で? 今ではなくか?」


「はい。その方が母様の手間も省けるかと……」


「何やら奥歯に物がつまった言い様だな」


「少々、手の込んだ計略となりましょう……」


「計略とな?」



 そう言ってニュクスは、しばし思案を巡らせた。


 本来、気位の高いニュクスにしてみれば真っ向勝負にいての勝利を望んでいた。が、何よりも”神々の盟約”に従う事は断じて許しがたい事であり、今はそれ以外の事を考える余裕は無かった。



「して、必ず勝てるのであろうな?」


「はい、既に手は打っております……」


「ほぉ、手回しが良いな……。よかろう。明日の御前会議。必ずや王は私が同席させる。そこで其方そちの計略を申し上げてみよ」



 そう言ってニュクスは椅子から立ち上がると、エリスに背を向けて窓辺の月夜に目をった。そこには執念にも似た微笑みがあった。




 エリスは静かにこうべを垂れ、ニュクスの部屋を後にしようとした。その時。



「時にエリス。後ろの者たちは何者じゃ? 見ぬ顔じゃが……」



 それは色濃い影に紛れるよう、エリスの後ろで控えていた者達の事であった。



とばりの三騎士。タナトス、オネイロス、ヒュプノスに御座います……」



 ニュクスはわずかに半身を振り返すと、さげすむような視線を向けた。



「ふぅん……。見たところ、人族の様にも思えるが……。いや、人のたぐいではないな……。どこぞの土着神どちゃくしんでも拾ってきたか?」


「白き神々の希望をほふる者に御座います……」


「ふっ、大きく出たな。それ程に使えるのか? その者たち……」


「ええ、私の手足同様に……」


「お前の手足?」


「分身の如く……」


「ほう……。面白い。では見せてもらおうか。お前の分身とやらの働きを……」






 つづく

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