表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GATE 01「フィヨルドの騎士とセルリアの魔女」中編
19/45

第15話 亡霊船

      挿絵(By みてみん)




 竜神族の国スラフ・カザナス。その王城キフラの竜の間でカザナス王らとの謁見えっけんを終えた翌日。


 竜騎士ユラン・クァシーラ。

 女騎士フィン・ウゴール。

 そして

 竜王子ウーゼル。


 彼らはセマグルから預かった妖精リーロを”柘榴ざくろの森の迷宮地図”とし、旧アイル・ダーナ北方都市のフィンジアスに"炎の剣"を届ける為、リア・ファルによって作られた七つの”ゲート世界”、”柘榴の森の迷宮”へと旅立つ事となった。




 三人はセマグルやカザナス、マーリンらに別れを告げ、黄金の竜神殿キエフのほとりに流れる河からゴンドラに乗った。


 まだ明けきらぬ森の朝(もや)立ち込める暗闇の中へ。ゆっくりと船のぎながら、希望と不安の積み荷も乗せて……。




◆・.。*†*。.・◆




 どれ位歩いただろうか。


 夜の森から抜け出し、蒼白に揺らめく月と再会すると、そこは灯台のある港街へと続く街道であった。


 もう直ぐ花の丘陵から見下ろした街明かりに手が届く。



「ユラン……。ユランってば……」



 ウーゼルが呼んでいた。



「んっ、どうしたっ?」


「んっ、どうしたっ? じゃナイヨ。ったくもう……。ずっとボンヤリしてるんだモン」



 ウーゼルはユランの顔や声を真似てぼやいた。



「ゴメンゴメン。ちょっと考え事……」


「もう直ぐ街だヨ」


「ああ……」



 そんな傍ら、ずっと無言に月を見上げて隣を歩くフィンが居た。



「どうかした? フィン」


「おかしいわ……」


「えっ?」


「あの月……」


「月?」



 フィンが立ち止ったのに合わせるよう全員が足を止め、月を見上げた。



「あの月。ずっとあそこに居る……」



 フィンいわく。何刻かの時間を費やして歩いたにも関わらず、丘の上から見た月と位置が変わっていないと言う。



「気のせいじゃ?」



 フィンは首を横に振ると続けた。



「気のせいなんかじゃない。それに、おかしいと思わない?結構な距離を歩いて来た筈なのに、全然疲れてない?」


「そう言われれば……」



 後ろを振り返るユラン。視線の先にはゴンドラで辿り着いた花咲き乱れる丘の影が遠く見えた。ただ、そこには花の輝き、あの眩い光りは消えて無くなっていた。



「考え過ぎじゃナイ?」



 三人の中では一番の楽観論者であるウーゼルが言う。



「リア・ファルっていう石のせいかもネ」


「リア・ファル……」



 そう呟いて顔を見合わせるユランとフィン。



「でも、気を付けるに越した事はないわ。マーリンも言っていたし。何が出るかも分からないんだから……」


「そうだな……」



 そう言いつつも、ヴァニラ・フィールズの民ヴェリール族の転生者であるフィンですら、まだこの時までは”柘榴の森の迷宮”が、”ゲート世界”がどういうモノなのか気づいては居なかった……。




◆・.。*†*。.・◆




 遠い昔、眠りについた港街の喧騒けんそう


 今も、その営みは消えようとはしない。



 暗く広がる空と黒く波打つ海。


 そこに重たく輝きをにじませる蒼い光。


 ただ、色濃く影を帯びてそびえる木造の巨船の


 その帆柱にも高く伸びた古いタラップが


 新たな希望へと取りかれた者達を


 昨日見た星へと誘い導く。



 一人。


 また一人。


 そして、また一人と


 新たな終わりを求めるもう者達が階段を上りゆく。


 進める足取りにきしむ鈍い音色にも構わず


 背負う荷物と抱く望みの重さを鎖のように繋いで。



 そうして



--- 在りもしないのか ---



 新たな昼と夜とを想い


 彼の地までの帆を揚げる時。


 未だ明けようとはしない空の至る所から


 優しい歌声と共に幾千もの契りが


 誰にも気付かれぬように


 ゆっくりと降り始めた……




◆・.。*†*。.・◆




 街の外れにある港へと辿り着いたユランたち。


 そこには月に照らされて影を帯びる古びた巨大な木造船があるだけで、明かりは無く、人影も見当たら無かった。


 その右手を走る石畳の先。石造りの建物の壁に丘から見えたオレンジ色の明かりが映っていた。



「フィン。フィン……」


「どうしたのウーゼル?」


「ユラン。アレ。アレ……」


「なんだよ? 船がどうした?」


「ヒト。ヒト……」


「えっ、人。何処だよ?」



 ウーゼルが指差す暗闇を目を凝らして見る二人。しかし、そには高く聳える船のタラップ以外何も無かった。。



「ウエ。ウエ……」



 フィンは目をらすと、夜空に沈む船のデッキを見つめた。



「上……? ウーゼル、誰もいないわよ……」


「アレっ? 消えた……」



 ウーゼル曰く。騎士の格好をした人の様な列が、甲板に数珠じゅず繋ぎのように居たと言う。



「なんだ、まだ寝惚けてんじゃないのか?」


「違うヨ! ホントに居たんだってばッ!」



 一応、用心しながらもユランたちは船に近づいて行った。


 しかし、そこには朽ちて踏み板もまばらなタラップが、夜風に吹かれて小さく揺れているだけだった。



「ほら、ウーゼル。この様子じゃ、もうこの船は使われていないな……」


「そうね、これじゃ上にあがれないもの……」


「ええー、おかしいなァ。さっき本当に……」



 ウーゼルが見たという騎士たちの姿。それは幻だったのだろうか。いや、幻だったとして。


 ここは古のヴァニラ・フィールズ、キュベレー大地の南。”ガリアの戦い”で陥落かんらくした大灯台砦の港街ノーア・トゥーン……。






 つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆
∎∎∎続きと改稿執筆中♪もうチョットまってね♪∎∎∎
◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆
∎∎∎twitter∎∎∎
◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ