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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GATE 01「フィヨルドの騎士とセルリアの魔女」前編
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第8話 聖者と共に

      挿絵(By みてみん)




 それは自尊心の強いマーリンがゆえの特徴でもあるが、戦いにいて後手に回り守勢に追いやられた記憶は、彼にとって未だに悔い悔やまれるモノがあった。


 ただ、今はそれより、自分も知る騎士達の魂。その行方ゆくえに興味は向いていた。



「まあいい。それより爺さん。その騎士達の魂とリア・ファル、何の関係が?」


「ふむ……」



 セマグルは考え込むように神妙な表情を見せた。



「何故かのぉ……? 女神は何も言わんかった。ただ、騎士達の魂を入れた七つの石をワシに渡して消えていった。もっとも、”守護の眠り”にく間際じゃったからの。これはワシの想像に過ぎんのじゃが……」



 セマグルは、そう前置きをすると階段に腰を下ろした。




◆・.。*†*。.・◆




「主ら、ヴェリール族が転生する事は知っておろう。肉体が滅びても、魂が記憶と想いを携え、生まれる新しい肉体に繰り返し宿ると……」


「ああ……」


「それは女神エタニティがヴァニラ・フィールズを創造した時。彼女が彼女自身の力を持って決めた彼女の”ことわり”じゃ。


 しかし、あの戦で荒れ果て壊れた世界では、いや、女神自身その”理”を守る力を、もう持って居なかったのかも知れん……。


 何にせよ、ワシは騎士の魂を”理”へ返してやりたいと思った。それでリア・ファルに願い問うた。彼らの魂を輪廻りんね転生に戻すよう。


 ところがじゃ、石はワシに言った。



--- 騎士達は、聖者と共に故郷へ帰る ---



と……。



 それがリア・ファルの意思なのか? 騎士達の願いなのか? ワシにも分からんが、この妖精リーロの中に何かを残すと石は消えてしもうた……」


「で、その何かが迷宮地図ってわけか?」


「これを……」



 セマグルは肩に乗るリーロを手に取ると、神霊力をリーロに集中した。


 すると、リーロの体は瞬く間に色を無くし、透ける体の中に赤紫色に輝く七つの光点を浮かばせた。


 そして、点は光の線で結ばれると、その先と後ろに金色と白色の光を配した。



「この赤紫色の光。これは”柘榴ざくろの森”を表わす光に同じ。おそらく、白い光はヴァニラ・フィールズの”リンツコートの森”。そして、金色の光は”リュブリャナの森”。ワシらの森じゃ」


「要するに、カザナスからヴァニラ・フィールズまで七つの空間転移門。七つの”ゲート世界”が繋ぐという事か?」



 にわかに信じられないと言ったマーリンではあったが、以前、似たような光景を見た記憶があった。


 それはヴァニラ・フィールズを旅立つ時。女神エタニティから預かった空間転移門の鍵。”ゲート・キー”にも同じような光の輝きが透けて見えた。



--- なるほど。聖者と共に帰る、か ---



 マーリンは心の中で呟いた。


 思いがけず、改めて耳にした言葉。それは遠い昔。己が自身の心に誓った言葉でもあった。



「いいじゃないかっ!」



 マーリンは何かを納得したように声を上げるとカザナスを見()った。


 ところが幾分、カザナスは浮かぬ顔をしていた。



「ナンだカザナス? 何か不服でもあるのか?」


「不服などではない……」


「じゃ、ナンだ?」



 面倒くさそうに言うマーリン。


 そんなマーリンを横目に、カザナスは小声でセマグルに問うた。



「ユラン一人で大丈夫でしょうか?」


「んっ、そうじゃのぉ……」


「ワタシっ! 私も一緒に行きますっ!」



 それはフィンの声であった。


 確かに一人より二人。しかもヴェリール族の転生者であるフィンであれば、その役目には打って付けと思えた。



「僕もっ! 僕も行くっ!」


「バカ! ウーゼル、遊びに行くんじゃナイんだぞっ!」



 そう叱るユランであったが、ウーゼルにはウーゼルの、彼なりの深い理由があった。



「セマグル様。僕も兄さんに会ってみたい!」



 それはまことの本心からであった。




 まだ先の話とは言え、いずれウーゼルは竜神王の地位を継がねばならなかった。本来であれば長兄であるドライクが継ぐべきものであった。


 ウーゼルは聞いてみたかった。何故、王位を捨ててまで戦いに身を置いたのか? いや、自身が王となるには知らなければいけないと感じていた。



「お爺様。いえ、セマグル様。お願します。兄に会って話を……」



 ユラン同様、臣下の礼を尽くすかに膝を折りこうべを垂れるウーゼル。その真剣な横顔に思わずユランも言葉を失った。


 そんな孫でもあるウーゼルの姿を見て、セマグルは笑顔で答えた。



「ほっほっほっ、ま、いいじゃろ……」



 多少の呆れと、面白がるようにマーリンが言う。



「おいおい、爺さん。本気か? 可能性が低いとは言え、闇夜に限らず何が紛れ込んでるか分かんねぇぞぉ?」


「そうなったら、そうなったじゃ……。苦難とはな、決して避けては通れぬものじゃ。それに打ち勝つも、そこで朽ち果てるも一興いっきょう

 大切な事はの、その苦難に向き合う事じゃ。それこそが竜神族の血に連なる者の掟。そうは思わぬかカザナス王よ?」


「はぁ、それは確かに……」



 改めて多少の不安が生まれたカザナス王でもあったが、己の若き日の旅も同じように希望と不安、そして仲間と共に歩んだ事を思い出さずには居られなかった。






 つづく

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