第八話
黒田と泉水の言い争いの原因になった彼女は、恥じらいを感じていた。
あの二人は、
何故、言い争いなどするのだろう。
自分で言うのもなんだけど、私を巡って。何で?
二人が、私を想ってくれている。それは嬉しい。けど、私のために言い争って、そのせいで呼び出しまで喰らうわけがわかんない。
それに、少し恥ずかしくもあった。
最初は間接的に告白されたし、次は普通に好きだといわれたし。
嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい。
それに、一ノ瀬さんに悪いような気もする。
時々思う。
あいつは、私のことを好きなのかって。
束縛はされていない。私は束縛とか好きじゃないから別にいいんだけど、そのせいで不安になってしまう時もある。
束縛されることで好きってことを感じるなんて、ちょっとおかしいかもしれない。
でも、『好きだ』とも言ってくれないし、女好きなあいつに好きだって思われてることを感じるためには、束縛が必要なのかなって。最近思う。
そんなあいつが、さらっと「好きだよ」と言っていた。
泉水君の前だからそういったのかなって、一瞬思ってしまった。
よく考えてみれば、私のことを、多分本気で好きだと思っている泉水君の前で、そんなこと言うはずがないのに。
これも、あいつの『好き』を感じられないせいなのかな。
あの時チャイムが鳴って、宮下先生の姿を横目でとらえた途端、私はすぐに教室に戻った。
恥ずかしかったから。
『好き』を素直に受け取れない自分が、恥ずかしかったから。
これはもしかして、マンガでよく読む三角関係では?と思う。
本当はそうじゃないことに気付かされたのは、あの後すぐだった。