第六話
最近、浅間君の様子がおかしい。
誰かにアピールでもしているような振る舞いが、多くなった。
皆は気づいていないかもしれないが、僕にははっきりとわかる。
浅間君をじっくり観察してみると、その誰かが誰であるかが分かった。
ふーりんだ。
僕と浅間君は、どうやらライバル同士みたい。
でも、ふーりんと席も近く、大体僕が一方的にだが話しかける回数が多く、何より下の名前をあだ名で呼ぶことが出来る僕のほうが、浅間君より圧倒的に有利だ。
僕の方が余裕はある。
浅間君には負けない。
もちろん、黒田君にも。
想いを募らせるだけの僕に、転機がやってきた。
その日は何故か、いつもより少し早く家を出た。
学校に行けば、1-3に行けば、君がいる。
話しかけるのは、いつも僕からなのだけど。
教室に入った途端、見慣れた一人の女の子が飛び込んできた。
彼女は、1―3の人間ではない。
考える暇は、束の間だった。
「好きです」
…………え?
彼女は、一ノ瀬未来。僕の幼馴染。
クラスの大半が埋まり、しかもふーりんもいるって時に、なんて問題を吹っかけてくるんだ。
頭の中が整理が出来ず、何も言えずに困っているうちに、浅間君が教室に入ってくるのが見えた。
ふと閃いた。
これを利用するしかない。
「ごめん」
「嬉しいんだけど、さ」
未来ちゃんの目がぱっと開いた。
その表情が、チクリと胸を刺す。
でも。
「僕…その気持ちは受け取れない」
ふーりんと浅間君の視線を確認し、意を決した。
もう、後戻りはできない。
「僕は、坂本さんが
ふーりんが好きだから」
浅間君への挑戦状と
ふーりんへの恋文を兼ねたこの言葉
二人は、受け取ってくれますか?