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第31話「秘密」

【秘密】


美咲の相談と言うのはこういうものだった ―


「好きな人が振り向いてくれない」という

シンプルかつ面倒な相談だった


ってか、美咲に好きな人がいたことに

俺は、ビックリした


「ねぇ、美咲の好きな人って誰?」

「「えっ!?」」


なんで、森田先生まで

反応するんだろ?


「(どうしたらいい?)」

「(う~ん、まさか、ここまで鈍いとは・・・・)」


なにやら二人で話しているようだが

俺には全く聞こえない


「二人とも、なに話してるの?」

「い、いや、別に、なんにも・・・・」

「白川君、乙女の会話に入って来ちゃダメです」

「へーい」


だったら、なんで俺を連れてきたんだよ


「(み、美咲ちゃん。ここは、とりあえず話題を変えようよ)」

「(う、うん)」


「ところで、白川君って好きな人いるの?」

「ふぇ?」


いきなり、話しを振られた俺は

意味も無くあたふたした


「流一って好きな人いるの?」


美咲は妙に心配そうな

顔をして俺に聞いてくる


「好きかどうかはわからないけど、気になる奴はいる・・・・」

「「っ!!!」」


俺の爆弾発言に

二人は驚いた


そりゃぁ、そうだろう

俺だってこんな事を言うのは初めてだ


「「誰?」」

「へっ?」

「「好きな人って誰!?」」


怖いよぉー!!!

なんか必死の形相で

二人が俺のことを問い詰めてくるよぉー!!


「ちょ、二人とも落ち着いて」

「「教えてくれたらね!!」」


どっかの双子の姉妹か!?


「わ、わかったから、お、落ち着いて」

「「本当に教えてくれる?」

「ほ、本当だって」


もう、すでに二人の息はピッタリだ


「言っとくけど、好きな人じゃなくて気になるひとだからね」

「「何が違うの?」」

「そ、その人に告白するとかじゃないからね」

「「はぁ~、まいっか」」


もう、二人の息はシンクロ状態だ


「「で、誰?」」

「そ、それが・・・・」


ガラガラッ


「美希なんだ」

「えっ?」

「「っ!!!」」


な、何故美希がそこに!?

やばい、気まずい

なんか逃げ出したい


「(先生、この空気なんとかしてよ)」

「(うっ、で、でも・・・)」

「(林ちゃんは先生なんだからしっかりしないと)」


あっ、美咲の奴逃げたな

自分だけでも助かろうとしているぞ、こいつ


「りゅう、私がどうかした?」

「えっ、いや、別に・・・」

「そ、それより、美希ちゃんは何のよう?」


おっ、美希とも友達感覚!!

これは、新たな発見だ


「えっとね、相談があってきたんだけど」

「じゃ、じゃぁ、二人は別の場所で待ってて。後で呼ぶから」

「「うん」」


俺と美咲は保健室を後にした


なんか気まずいぞ・・・・


「ねぇ、流一」

「な、なんだ?」

「ここって四棟だよね?」

「そうだけど」


保健室は四棟の一階の突き当たりにあって

校庭に一番近い所にある


「話しがあるんだけど」

「ん、なに?」

「人がいないところで」

「う、うん」


ここは、いつでも人が来るからきっとダメなのだろう

となると残る場所は一つ「非常階段」だ

あそこなら見つからないし

人が来ることもない


「んじゃ、非常階段に行こうか」

「うん」


俺達は非常階段に上った

非常階段は各棟の突き当たりに設置されており

俺達は四棟の非常階段にいた


「で、話しって?」

「え、えっと・・・・私の好きな人の話」


おっ!美咲が好きな人でも教えてくれるのかな

誰だろう?

ここは、妥当な誠かな?

でも、あいつがロリコンだってことは

美咲も知っているはずだ


ということは、工藤か?

でも、小澤がいるから無いだろう


まさか丈翔ってことはないだろう


一平も無いし幸平は・・・・・


幸平かっ!!


あの、幸平のことが好きなのか


「流一」

「へっ?」


不意に名前を呼ばれた


「ど、どうした?」

「ずっと、秘密にしてきた

私が流一のこと好きたっでこと・・・・」


美咲が俯き加減で呟いた


俺は少しの間フリーズした


「み、美咲?」


美咲は肩を小刻みに振るわせていた

よく見ると美咲は泣いていた

美咲は俺の溝内に顔を埋めて泣いていた


俺のシャツが美咲の涙でどんどん湿っていく


これは、どうするべきなのだろう?


「まったく、昼間っから女泣かせてなにやってんだ?」

「なっ!しげちゃんっ!?どうして、ここに?」

「どうして?じゃねぇだろ。ここは非常階段だ

生徒がいたから俺は様子を見に来ただけ」

「そうなの?俺はてっきり

校内でたばこが吸える場所が

ここだけだからかと思っちゃったよ」

「うぐぅっ!・・・」


図星・・・・


まったく、この教師は何やってるんだか

まぁ、この状況で俺がいうのもアレだけどね


「りゅう、いち」

「なに?」


美咲はしげちゃんの存在に気付いていないようだ


「私は好きだよ・・・・いつまでも・・・・」


神経を使っていたから

疲れたのだろう


美咲はそう言って俺に寄り添って

寝息を立て始めた





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