第18話「気持ち」
【気持ち】
どのくらい時間がたっただろう
俺は美琴を抱きしめたまま
時間がたった
「ねぇ、流一」
「ん?」
美琴がまだ涙で潤んだ瞳を俺に向けた
可愛かった
俺と美琴は長い間一緒だったが
美琴のことを可愛いと思ったのは少ない
それは、美琴のことを異性として見ていなかったからかも知れない
異性として見るのが怖かったのかも知れない
ただ今の美琴の顔を見て
美琴に対しての気持ちが変わった
美琴のことを異性として見れるようになった
「やっぱりダメなんだよね?」
その一言を聞いて俺は正直迷った
今までならなんの理由もなく断っていたと思う
ただ、今は違う
俺は今までの美琴との思い出が蘇ってきた
記憶力の悪い俺なのに
美琴のことはちゃんと覚えている
(不思議だ・・・・)
「なぁ、美琴」
俺は今の気持ちを正直に美琴に伝えることを決めた
「俺は、美琴のことをどう思ってるか聞かれたらたぶんわからないって答えると思う」
「えっ?」
「美琴は幼なじみで一番付き合いの長い人だ。だからかもしれねぇ。
今まで美琴のことを異性として見ていなかった・・・というか
見るのが怖かったんだと思う」
「・・・・・」
美琴は黙って俺の話を聞いてくれる
「さっき美琴が泣いたとき胸の奥が苦しくなったんだ。
それが、なんでかはわからないけど・・・・
幼なじみだからか、あんまり泣かない美琴が泣いたから心配になったのか・・・・」
俺は次の一言がなかなか言えなかった
情けないぞっ!!
今の気持ちを言うって決めただろ?
だったら怖がらずに言うんだっ!!
俺は自分の気持ちに正直になろうとしていたのかもしれない
「・・・・それとも美琴のことが好きなのか」
「っ!!」
俺の言った一言に美琴はビックリした顔で俺の顔を見る
そしていつもの笑顔で俺を見る
俺は美琴のことをまた可愛いと思った
「だから、正直俺にも答えがわからないんだ」
「うん」
「少しは、俺の気持ちも改まったから恋愛対象として美琴のことを見ると思う」
「うん、わかった。チャンスはいっぱいあるってことだね?」
「あぁ、俺から告白するかもしれねぇしな」
「ハハッ、流一が?想像できないなぁ~」
俺は今更ながら自分の言ったことが恥ずかしくなった
「もぅ、照れちゃって可愛いっ!!」
恥ずかしくて顔が赤くなる俺を見て
美琴がいつもの調子で言った
元気になった美琴を見て安心した俺がいた
美琴は俺の話を最後まで聞いてくれた
そして俺は美琴のことを二回も可愛いと思った