第11話「ゴキちゃんVS俺ちゃん」
【ゴキちゃんVS俺ちゃん】
俺は朝食をすませた後、部屋に戻って制服に着替えるなど
身支度を整え時計を見たら意外と時間に余裕があることに驚いた。
「時間、余ったなぁ~」
※いや、早く学校に行けよ by作者
五月蠅いっ!
学校には時間ギリギリまで行かないんだよっ!!
夏海とか結香に会いたくない・・・
俺は時間つぶしとしてテレビを見ようとした。
コンコンッ
ドアをノックする音がしたので
俺はテレビを見るのを諦め
ドアを開けた。
ガチャッ
「はい?」
「おはよ、流一」
「・・・・美琴か」
「ちょ、なにその反応!?」
俺の隣の部屋は美琴だ。
何故かこの学校は、女子と男子の寮が一緒だ。
高等部と中等部に別れていて、学年ごとに階が決められており
二年の俺達は二階の部屋で寝ている。
一応女子と男子で別れてはいるが、境目がないので
誰かが女子と隣の部屋になるのだ。
そして俺は女子と隣の部屋になってしまった。
他の女子だったら喜ぶんだけど
隣が美琴だとわかったとたん俺のテンションはいっきに下がった。
「で、なんの用だ?」
「それが、その・・・・・・」
「なんだ?」
「ゴ、ゴキブリが・・・・・」
「ゴキブリ?」
「そう、ゴキブリが出たの」
ゴキブリが出ただけで俺の部屋に伝えに来ないでほしい。
俺は一瞬そう思ったが、すぐに俺に言いに来た理由がわかった。
「もしかして、お前ゴキブリダメなのか?」
「うん・・・・」
マジでっ!!
美琴って虫ダメだったか?
昔はフツーに虫捕まえて遊んでたのに
いきなりそんな可愛いこと言われても困る。
「だから、ゴキブリ退治をお願いしようかと・・・・」
「俺に?」
はっきり言って俺も虫は得意な方じゃない。
むしろ苦手だ。
※情けない・・・・ by作者
黙れっ!!
俺だって自分じゃそう思ってるよ
だから、頑張って虫退治できるようになったんだよ!!
だけど、あまり虫に関わりたくないそれが本音だ。
「うん・・・・・ダメ?」
うっ!!
上目遣いでものを頼んでくるこいつの顔は
可愛い・・・・
俺はこいつのこの顔に弱い。
仕方なく俺はゴキブリ退治を手伝うことにした。
「で、ゴキちゃんはどこだ?」
「・・・・・」
変だ。美琴が返事をしない。
「美琴?」
「あ、あそこ・・・・」
美琴はガクガク震えていた。
こりゃぁー、相当ゴキちゃんが苦手なようだな・・・・
う~ん、ここは俺がなんとかしなきゃいけない感じか。
はっきり言って嫌だッ!!!
カサカサッ
はっ!!
この音は間違いなく奴が移動するときの音。
俺は神経を集中させ奴の移動音に耳をすませた。
カサカサッ
来たっ!!
「おりゃぁー!!」
スパーンッ!!
俺は丸めた新聞を奴に向かって叩き付けた。
シーン・・・・・
しばらく沈黙が続いた。
俺は奴の方を見た。
一応、やったみたいだ。
だが、思い切り叩き付けたせいで
奴の変な汁が床に垂れていた。
やばい・・・・・
俺はそう感じた。
「流一、とりあえずやっつけてくれてありがと」
「お、おぅ」
危険だ。
美琴が素直に感謝するときは
大体の格率でその後に、怒られる。
怒られると言ってもなまやさしいものじゃない。
この世にないくらいの迫力で俺に迫ってくる。
今回もそうだった。
「確かに、やっつけてとは言ったけどグチャグチャにしてとは言ってないよ」
こ、怖いです、美琴さん。
なんか美琴さんの後ろにドス黒いオーラが俺には見える。
「み、美琴さん。一応ゴキちゃんやっつけたんだし今回は許してよ」
「グチャグチャにしたでしょ?」
「は、はい・・・・」
こうなった美琴は
すごく怖い。
将来絶対夫を尻に敷く女だ。
そう思っていた俺にはまだ余裕があったのかもしれない。
「これを、全部片付けてよ。それで、なにごとも無かったように綺麗にして」
「そ、そんな無茶な」
ゴキちゃんの死体は簡単に片付けられるような状態じゃない。
虫嫌いの俺には無理な注文というわけだ。
「なにが無茶なの?もしかして片付けずにこのままほっとくつもり?」
「そ、それは・・・・」
「流一はそんなことするような男じゃないよね?」
「うっ・・・・・」
そう言われるとつらい。
でも、ゴキちゃんの死体を片付けるのも嫌だ。
何とかしなければ
「ゴキちゃんの後始末ははっきり言って無理ですッ!!」
「そう、じゃぁ何をするつもり?」
正直に無理だといったことを後悔する。
美琴は並大抵のことじゃ許してくれない。
どうする俺っ!!
「ゴキちゃんの後始末以外だったらなんでもするから許してくださいッ!!」
もはやこれしか選択肢はないだろう。
そう思った俺は思いきって言った。
が、美琴の反応は俺の予想外なものとなった。
「な、なんでもいいの?」
どこか照れたように俺に聞いてくる。
「あぁ、なんでもいいよ」
俺は逆らうのは危険だと判断した。
「じゃ、じゃぁ、今日一日ずっと私の言うこと聞いてよ」
「はぁ!!?」
なんだそれ?
美琴がゴキちゃんの後始末やれって言ったら
俺はしなくちゃいけないことになる。
そんなの意味がないじゃないか。
「あっ、もちろんゴキちゃんの後始末はしなくていいよ」
「そ、そうか・・・・」
う~ん、だったらいいかな?
逆らったらゴキちゃんの後始末しなきゃいけないだろ・・・・
俺は二つを天秤にかけた結果・・・・
「よしっ!、わかった。今日一日、お前の言うこと聞いてやる」
俺がそう言うと美琴の顔は
ぱっ!と笑顔になった。
そんなに喜ぶことか?
まぁ、一日パシリに使えるから
嬉しいっちゃ嬉しいけど・・・・・
とりあえずそういうことになったので俺は一安心した。
そんな俺の考えは甘かったのかも知れない。
ゴキブリのことをなんとなく「ゴキちゃん」と
言ってしまう・・・・・