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ゆるり気ままなお猫様  作者: 一般通過純愛スキー


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偉大なる猫の務め

 鼠、どこにでもいるヤツらを己の縄張りで見かけると妙に心がささくれ立ち、本能が刺激されるのは何故であろう。

 ああ、待て貴様!逃がさん、逃がさんぞこん畜生め!おりゃっ、くらえ猫パンチ、猫パンチ、必殺天地引き裂く爪の一撃!

 ちっ、上手く隠れおったな。さしもの私もその小さい隙間には入れん。今日のところは見逃してやるとしよう。感謝するんだな!


「あれ、あっ、やっぱり!こないだの猫ちゃんじゃない」


 うん?誰かと思えばこの間の騎士娘か。元気にしておったかね。おや、以前とは何やら出立ちが違う気がするな。


「やっぱり教会の子だったんだね。また会えて嬉しいぞー」


 ふふん、なんだそれほどまでに我が魅力の虜になっていたのか。くるしゅうないぞ、ほれ肉球ふにふにー。


「ふにふにー、ふにふにー。かわいいねー君は」


 何を当たり前のことを。この世に私より可愛いく尊いものなど存在せぬゆえな。


「あ、君にもちゃんとお礼言わないとね。ありがとう、シスターの所に連れて行ってくれて」


 そうか、悩みは解決したようだな。以前とは見違えるほど良い顔であるし、何より気力がみなぎっておる。


「実はアタシ、街の騎士団から聖猫教会騎士団所属になったんだよー。シスターが口利きしてくれてね。なんと驚き、私を助けてくれた騎士様、実はシスターなんだって!もうアタシ感極まって泣いちゃった」


 おぉ、何やら分からんが、まあ良いことがあったのならば何よりだ。


「しかもなんとビックリ、元副団長!女騎士が副団長だよ、すごいよねぇ!もう騎士は引退してシスターに転向したみたいだけど、たまに騎士団の指導もしに来てくれてるんだって。もうアタシ俄然やる気出てきちゃったよ!」


 あの年寄り、引退したならば大人しく隠居しておればよいものを、恩と信仰は未だ尽きずなどとぬかして、未だ教会に出張ってきておる。まったく見上げた下僕よ。しかし悲しいかな歳には勝てぬ。最近はめっきり衰えてきておる。騎士娘よ、見込まれた者として、あの年寄りの後を継いでやってくれ。


「なんか頭下げてる?うぅん、よく分かんないけど任せといて!アタシ頑張るからね!猫ちゃん、今後ともよろしくね」


 うむ、励むがよいぞ。良い働きをすれば、猫吸いを許可ししてやるのも吝かではない。我が猫吸いはおよそこの世のものとは思えんほどの至福を約束するでな。


「さてこうしちゃいられない。今日も訓練、頑張るぞー!」




 教会は私の第一の縄張りである。街の中でも随一の日当たりを誇る昼寝スポットは我が聖域、何人たりとも侵すことは許さぬ。必然、周辺の見回りはより厳格に行わねばならぬ。目を凝らし、耳をそばだて、一つの異変も見逃すまいと全神経を注ぐのである。


「みぃ……みぃ……」


 ぬっ、この声はまさか!おお、やはりか弱き命が救いを求めて鳴いておるではないか!どうしたおぬし、何があった。私に聞かせてみるがよい。


「みー……」


 なに、下僕が迎えに来ぬ?ここに置き去りにされた?

 許せぬ、許せぬぞ人間!猫をぞんざいに扱うことすら罪深いというのに、あまつさえこのようなか弱き子供をだと!ありえぬ!子は宝であると生物なら知っておろうが!

 ああ、このようなことは何度もあるが、その度に人間を滅ぼしたくなってくるぞ。法神と魔神をけしかけてやろうか!


「みー……?にゅぅ……」


 ああ、違う、違うぞ。おぬしに怒っているわけではない。ほら、私が来たからにはもう安心だ。案ずることはない。さあ、安全な所へ連れて行ってやるからな。


「みゅっ?」


 細っこい首根っこだ。噛みちぎらぬよう、折らぬよう、優しく運んでやろう。なあにこれでも数多の仔猫の面倒を見てきておるゆえ、任せておくがよい。さて、あの年寄りはこの時間なら礼拝堂にいるだろう。まずはメシの用意をさせねばならぬな。




「おやまあ、どうしたのこの子」


 喧しい、御託はいいからさっさとコイツの世話をしろ。弱っている姿が見えんのか。


「まずはご飯と健康状態の確認かしらねぇ。ちょっとあなた、仔猫用の食事をもらってきてくれるかしら」

「はい、かしこまりました」

「お願いね。さて、少し触るわよ、ごめんなさいね」

「しゃー……くしゅん!」

 

 これ、威嚇はやめて大人しくしておれ。何も危害は加えん。私もおるゆえ、大丈夫だ。よしよし、良い子じゃ。


「女の子なのねー。うーんと、目が充血して目やに、くしゃみもあるから、風邪かしらね。栄養状態も良くない。傷がないのは救いね。大丈夫、これならちゃんとご飯を食べて休めば、きっと良くなるわ」


 よしよし、良かったな、大事ないそうだぞ。どれ、その弱った体では動くのも辛かろう。私が毛繕いをしてやるぞ。なに、汚い?馬鹿を言うでない。子は宝。そして私は猫の頂に立つ者。私が子の世話をせずしてどうするというのだ。


「みぃ、みぃ、んにー」


 なに、パパ?ふふふ、私から溢れる父性を感じるか。よかろう、遠慮なく私を父と呼ぶがいい。


「もうすっかり懐いて、流石ね。そうだ、ここで面倒を見るなら名前が必要ね」


 うむ、良い名を考えてやってくれ。今は毛並みも悪く薄汚れているが、きっと美しい猫に成長するぞこの子は。


「じゃあエミリー、貴方の名前はエミリーちゃんよ」

「みゃーう」


 気に入ったかね?よしよし、それはよかった。

 エミリーよ、よく食べ、よく遊び、よく眠り、よく育ちなさい。この私が見守っているのだ、不安などない。今より世界はお前の味方だ。

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