04:招待
エイルさんを後ろにつれて俺は家の方に向かう。
「あの、ここの木に実っている果実は……」
この森の木々は何の意味もなく木を生やしたわけではない。雰囲気作りのためというのもあるが主な理由は違う。
「それは俺が生み出したものですね」
「こ、これほど神聖なものを、生み出したんですか……?」
「はい。ここでは俺は絶対ですから」
どんな果実ができるのか気になりすぎて色々な果実を作った。
まずはどんな病でも治すことができる果実。さらにどんな傷でも癒すことができる果実。それにどんな呪いでも解ける果実。
他にも腰痛、肩凝り、筋肉痛、頭痛、腹痛など軽度なものを治せる果実もある。
あとはこの生活で自堕落になっても問題ないように肥満を解消する果実もある。
ただ肥満解消の果実はまだ食べていない。今のところ気分転換に適度に運動をしているから食べるまでもなかった。
「気になるのなら食べますか?」
「い、いえ! 私にはもったいないものですから!」
エイルさんはかなり気になっている様子だったから食べたいのかと思った。
「いっぱいあるから遠慮しなくていいんですよ。どうせすぐ生えてくるし」
「すぐにですか!?」
「はい。一日で元通りですね」
これらの木々の再生でも俺の魔力が必要になってくる。
だがかなり魔力を使った日でも全く減っている感じがしなかった。
もしかしたらチートな箱庭の性能が良すぎて魔力効率がいいのかもしれない。
「……これほどの希少な果実なら次に生えてくるまで百年単位はかかるものですが」
「他の土地ならそうかもしれませんね」
ここは神をも超越する箱庭。他の土地と一緒にしてはいけない。
それはともかく俺とエイルさんは森を抜けてスローライフに相応しい周りには田んぼやら畑がある一軒家とアパートにたどり着いた。
「これは……?」
そうか、この世界の人だからこういう家が珍しいのか。
「こっちは俺が住んでいる家です。そっちの家は複数人が住める家ですね。とりあえず俺の家に入ればお風呂が沸いていますからこっちへ」
「は、はい……」
やっぱりエイルさんは人が怖いようだ。
俺についていく時も警戒しているのが何となく分かったし家に招き入れようとした時も顔が強ばっている。
とりあえず休んでもらう以外に俺ができることはない。
ただまあ……試していないだけでエイルさんに干渉することはできると思うが。
俺は玄関で靴を脱いでから家の中に入るが、エイルさんはそもそも靴を履いていなかった。
「足、大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です……ですが、汚れて……」
裸足で逃げていたのなら足が血だらけになっているはずだがエイルさんはそんなことはなかった。
ただ汚れは綺麗にできないようで家に上がることを躊躇していた。
「大丈夫ですよ。すぐに綺麗にすることができますから」
「……はい、それではお邪魔します」
遠慮しながらエイルさんは家の中に入り、かなり物珍しそうに家の中を見る。
そんなエイルさんを少し面白いと思いながら浴室に案内する。
「ここが浴室です。お湯は溜めてあります」
「は、はい」
「それからこれがシャンプーで髪を綺麗にする薬品です。それからこれがボディソープで体を綺麗にする薬品です。好きなように使って大丈夫です」
「わ、分かりました」
「汚れた服はこの籠に。タオルと着替えは持ってきます」
そうしてどこか緊張しているエイルさんを残して洗面台から出る。
追われていたということは男からひどいことをされた可能性だってある。だからここは俺が離れる時間を作った方がいいだろうな。
バスタオルと着替えについては洗面室に俺が入ることなく置いた。
こういうことができるのもこの箱庭の強いところだ。この空間は俺のものだからな。
いわばエイルさんは俺の手中にあると言える。まあそんなことを言って怖がらせるわけにもいかないから言わないでおくけど。
家の掃除をパッと終わらせリビングに入る。エイルさんを待つ間何もせずに待つのもあれだから俺はエアコンがついたリビングでスマホをいじっていた。
スマホでも基本無料ゲームなら異世界でも全く問題なくプレイできてしまう。
こんな現代社会のゲームを遊べているのは異世界に転移や転生した数多く? の人の中で俺だけだろう。
スマホアプリでウォーターソートパズルをしてエイルさんを待っていればエイルさんが風呂場から出てくる音が聞こえてきた。
そしてしばらくして俺を探すエイルさんの声が聞こえてきた。
「あの……どこにおられますか……?」
「こっちです」
俺はリビングの扉を開けてエイルさんを呼ぶ。
エイルさんは俺が置いていたシャツに短パンを着ていた。これは完全に俺の趣味だがエイルさんは美人だから何でも似合うな。
短パンはやっぱりいいものだ。もう少し大きなシャツだったらよかったな。それで短パンを隠せば何も履いていないように見えるがさすがにそこまではしない。
「湯あみ、ありがとうございます。それから、あのような高級なものを使ってもよろしかったのですか?」
高級? あぁ、シャンプーとボディソープのことか。
「気にしないでください。タダみたいな感じですから」
「タダ……!?」
そう言えばああいうのって貴族とかしか使わないんだっけか。文明レベルが低いと嫌だねー。
その点、俺の魔力は減るところを知らないからほぼ無限に出すことができるという異常っぷりだ。
「こちらへどうぞ。紅茶でも出します」
「は、はい」
何だろうか、エイルさんは怖がっている他にも緊張している感じがするからこういうことに慣れていないのかもしれないな。
ま、俺もそうだけど全くないわけではないからエイルさんほどではない。
「あの、あなたのお名前を聞いてもよろしいですか……?」
「あぁ、そう言えば言ってませんでしたね。すみません。俺は優斗。この空間の主です」
「優斗様、ですね」
「様なんてつけなくてもいいですよ」
優斗様なんて呼ばれると気恥ずかしくなる。日本のほとんどの人は様付けなんてされないからなれないのは当然だ。
俺はキッチンに向かってお高い紅茶の葉を取り出して紅茶の準備をする。
何でも出せるのだからお高いものが売っているお店を出して持ってきた。
今では結構ハマっているから紅茶の準備もお手のものだ。
準備をしている間チラッとエイルさんを見ればこちらを見たり物珍しくキョロキョロとしていた。
テレビなんか見たらどんな反応をするのか気になるから後でやってみよう。
でもどうしてエイルさんが来たのか分からないことには安心できないなー。




