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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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14:二人目の迷い人。

 エイルさんがこのチートな箱庭に来てから早ひと月が経った。


 エイルさんに元の世界のことを教えるのは一週間くらいで終わり、エイルさんが知りたいことはよりコアなものになった。


 だからエイルさんのために図書館を用意した。


 今のこの空間の中央は俺の実家。その隣には俺が住んでいたアパートがあり、その二つの建物の周りには畑が広がっている。


 ちなみに俺が住んでいたアパートは両親に頼んで荷物を回収、解約してもらった。他の異世界に送られた人たちの家族は帰りもしない人を待っているのかと思うと少し切なくなるが俺のせいではない。


 図書館の場所は家の隣に作った。畑があったがそこは横にずらして作ったというこの箱庭でなければできないことをした。


 下にあるショッピングモールに連れて行こうかと思ったがあそこには大衆向けの本しか売っていないから図書館にした。


 エイルさんは図書館から本を持ってきてはリビングで熱心に読むということが日課になっていた。


 俺はそんな楽しそうにしているエイルさんが夢中になれるように家事はやると言っているのだがエイルさんはそれを断固拒否して分担してやることになった。


 今は今日食べる作物を収穫してからフリーな時間ができたから俺とエイルさんはリビングでそれぞれがくつろいでいた。


 俺はノーパソを触り、その正面にエイルさんが図書館から持ってきた本を見ていた。


 今は医学の本を読んでいる様子だが、俺にはさっぱりと分からないからもう俺よりも知識があるな、エイルさんは。


 俺はと言えばノーパソでいつもみたいに配信や動画を見ているわけではなく、最近のマイブームであるアイテル聖王国の現状を見ていた。


 俺のノーパソを作り直してアイテル聖王国をどこからでも見れるようにした。


 監視カメラのようなものだがカメラがなくて、重要な会議な場所でもどこでも見ることができ、誰にも気づかれないというものだ。


 ハッキリ言えばアイテル聖王国を丸裸にしているようなものだ。


 どうしてこれを見ているのかと聞かれれば、最初は暇つぶし程度にアイテル聖王国の事情を知りたくて見てみることにした。


 パナケア様が言っていた他の神も加護を打ち切るという言葉が気になってどうなっているのかが知りたかった。


 それで見てみればまあかなりまずい状況になっていた。


 偽物の聖女が聖女の座に座ってからというもの、国内で起こる異変はなくなったものの魔族や魔物からの攻撃がひどくなっていた。


 しかも偽物の聖女の結界というものが脆いものであるから守ることができずにいた。ただその聖女は攻撃には強いらしく攻撃が最大の防御みたいな感じだった。


 だから加護を持つ者たちが戦い方を変えざるを得なかった。攻撃的にならなければいけなかった。


 そこで今の聖女はどうなのか的な不信感を抱かれている中、ついに加護が打ち切られるという事案が発生した。


 最初は何かの不具合かと言われていたが一人、二人と増えていった。


 今は魔族の加護持ちを撃破ではなく撃退させるのが手一杯の状態になっている。前までは欲張った魔族は確実に消せていた言い草だ。


 こうなった原因は誰か。間違いなく今の聖女になったからだと思う人が大多数になっていた。


 さらに言えばエイルさんを今更ながら探そうという動きがみられるが、もうエイルさんはその世界には存在しないから無意味な話だと鼻で笑ってしまった。


 ただなぁ、偽物の聖女は別に国を陥れようとしている感じはしない。それはその聖女を注目していれば分かる。


 しっかりとアイテル聖王国を守ろうとしているのは間違いなく聖女だ。だが聖女としての力量が全く伴っていないからこんな状況になっている。


 俺は当初こいつが魔女で、アイテル聖王国を落とそうと仕組んでいるのかと思った。でも彼女を見ている感じそういうのは感じられない。


 ……アイテル聖王国を落とそうとしている別の思惑がある? この偽物の聖女はそれに乗せられている?


 ま、俺がそれを知ったところでどうしようもない話だ。それにその思惑に気づかずエイルさんを追い出した国の奴らが悪い。


「あっ、お昼ですね。今日は私が作ります!」

「それならお願いします」

「任せてください!」


 それよりも今はエイルさんとの共同生活が楽しいからどうでもいい話だ。


 もしかしたらエイルさんが殺されかけた国に対してまだ助けたいという気持ちがあるのかもしれないが、俺は何も言わない。


 何が正解なのか分からないのだからせめて異世界のことは忘れてほしいと俺はエゴを出す。


 エイルさんは俺がプレゼントした可愛らしい動物が刺繍されたエプロンをつけてお昼ご飯を用意し始める。


 最近テレビで知ったお気に入りの曲を口ずさみながら料理をしている。


 ……何だろうか、この新妻感は。


 俺がエイルさんの彼氏や旦那さんなら後ろから抱きしめたいくらいには新妻感が爆発している。


 あれだな、要はエイルさんができるだけここにいるようにしているだけだ。エイルさんがここを出たいと言えば止めはしないけどそれまではどうにかしてエイルさんとの生活を楽しみたい。


「どうしましたか?」

「いや、可愛いなーって」

「か、かわ……!」


 エイルさんのこの初々しい反応も好きだ。


「ッ!?」


 エイルさんで楽しんでいたが、不意に箱庭の異変を感じ取った。


「……どうしましたか?」


 俺の急な変化を機敏に気づいたエイルさんがそう聞いてきた。


 だが俺はすぐには答えずに箱庭に意識を向ける。


 そうすれば同じような感覚に覚えがあった。


 エイルさんがここに入る前の何か分からない感覚だ。言語化が難しい感覚。


 だけどその正体を知っているからこそ意識を集中させればハッキリと分かるようになった。


 これは俺の箱庭に誰かがチューニングしているんだ。俺の箱庭と異世界を繋げるためにチューニングして、人が入れるようにしているんだ。


「優斗様?」

「誰かが、ここに入ってこようとしています」


 その言葉を聞いたエイルさんが少し顔がゆがむ。


「大丈夫ですよ。ここに誰が入ってきてもエイルさんは守りますから」


 ここのことは俺の次に知っているエイルさんだからこそ、俺の言葉にすぐに落ち着いた。


「――はい。もしかしたら私のように逃げている方かもしれませんね」

「そうですね」


 そうじゃなければ俺の札を切るしかない。


 そうなれば初めてやるがまあ大丈夫だろうと俺は俺を落ち着かせる。


 そして誰かが俺の箱庭に入ってきた。


「入ってきました。俺は会ってきますからエイルさんはここにいてください」

「いえ、私も向かいます。少し待っていてください」


 昼食の準備をしていたエイルさんはすぐに火を止めて最低限ラップなどをしてキッチンから離れる。


 二階の自室に向かったと思ったらエイルさんは珍しくバタバタと音を立てていた。


 エイルさんの自室を前にチラッと見た時にテーブルに本が積み重なっていたから本棚を追加したのは最近のことだ。


 自室から出てくる音と一階に降りてくる音が聞こえてきたことで俺は玄関に向かう。


「お待たせしました、優斗様」


 エイルさんは聖女の恰好をしていた。


 今エイルさんが来ている聖女の服は俺が裁縫で直し、そこからちょっと変えた。


 服を丈夫にしてなおかつ清潔な状態を保つようにした。


 これはここから出たとしてもその効果は続くからエイルさんがこれを着て聖女をするのなら、それを支えれればと思ってやった。


「行きましょう」

「はい」


 エイルさんと共に箱庭に入ってきた人のもとに向かう。


 そいつは資材のために作った森の中に入ってきていた。


 俺とエイルさんは駆け足で進むのだが、加護を持っているエイルさんがかなり速い。


「近くまで飛びます」

「はい!」


 これはエイルさんに合わせられると思った瞬間、そいつの近くに飛ぶことで尊厳は保てた。


 聖女に負ける身体能力がひどいわけではない。俺はそもそもこのチートな箱庭があるからかなりのプラスになっているはずだ。……はずだ。


 森の中であるから死角があるものの俺はそんなこと関係なしにそいつを見つけることができる。


 隠れるように木にもたれかかっている存在を見つけた。


「人間……?」

「魔族!?」


 傷だらけになっている女性はこちらを見て怪訝に、エイルさんは驚いた声をあげた。


 怪我をしている存在はコスプレでなければ確実に人間ではない部位が存在していた。


 頭部に二本の立派な太くて黒い角が存在していた。


 その女性は綺麗な真紅の長い髪を持ち、気だるげな感じを見せていた。だが注目すべきはそこではなく、まず服の布がほぼない。


 元々布面積が少ない服だったのだろうがそれがボロボロになったおかげで恥部しか隠せていない。


 だからこそ素晴らしいプロポーションがよく見えて、かなり興奮する体をしていた。


 しかもこれは……におい? 俺の世界だから俺に害するものは通じない。ただこの女性からくる匂いは男を狂わせるほどのものだろう。


「……なんでここに人間がいる?」

「それはこちらのセリフです。どうしてここに魔族が……それもサキュバスが」


 サキュバス! おぉ、そう言われれば納得の容姿だ。


 リアルで見たけど……えぐいな、この体は。サキュバスなんて創作作品とかアニメでエロくかかれるわけだが、それを優に超えるエロさだ。


 エイルさんもえぐい可愛さだけどエイルさんと比べるのは違うからな。


「気を付けてください。サキュバスはその容姿や体臭で男を虜にする魔族です」

「体臭って。においにしてよー」


 そうか。俺はサキュバスがいても特に何も思わなかったが異世界では人間と魔族は敵対関係だったな。


 だからエイルさんも警戒しているしサキュバスも油断はしていない。


 ていうかこのサキュバスは無意識なのか意図的なのかは分からないが俺を虜にしようとしていた。


 このチートな箱庭じゃなければとっくにいっていたところだったな。


 ま、意図的であれば俺はこいつを排除しなければいけない。


「ここは世界とは別の場所にある俺が支配する箱庭だ。どうしてここに人間が、というよりはそっちが勝手に入ってきたんだ」

「あぁ……どうりで。逃げてたら急に変なところに来たなーと思ったし、追手もいないし」


 まあこれだけボロボロなら追われていたのは本当だろうな。


「それでだ、お前は俺を虜にしようとしたのか?」


 ここは聞いておく必要がある。答え次第では追い出さないといけない。


「優斗様、大丈夫ですか……?」


 それを聞いたエイルさんは俺の体に両手で触れてヒールをかけながら心配してくれる。


 ヒールで魅了がどうにかなるのかと思ったらこのヒールは状態異常を回復するものだとすぐに分かった。


「まさか、聖女がここにいるなんてね」


 それを見たサキュバスがエイルさんが聖女だと理解した感じだ。


「俺は大丈夫です。この箱庭では俺には何も通じないですから」

「……よかったです」

「さて、答えてくれるか?」


 俺がもう一度問いかければサキュバスは少しだけイラついた感じのため息を吐いた。


「あたしは何もしてない。あたしは生まれた時から何もしないで男を虜にできただけ。この体や、匂いで」

「そうか。気を悪くさせて悪いな」

「別にいいよ。こうして男と話せるのは父親以来だから」


 こいつもこいつで苦労しているんだなぁ。ていうかこいつをここに送ってきた神は誰だよ。


「エイルさん、このサキュバスを家に招こうかと思います」


 まあここに来たのなら仕方がないと思ったが、この世界は俺だけではない。


 そして魔族と敵対していたエイルさんをどう思うのか聞かなければいけない。


「……私は大丈夫です。おそらく彼女も同じ境遇だと思いますから、放ってはおけません」

「分かりました。じゃあ――」


 サキュバスに声をかけようと思ったところで再び誰かがチューニングしていることに気が付いた。


 そして今回はすぐにチューニングが終わり、ここに入ってくるものがいた。


「見つけたぞぉ! リリス!」


 サキュバスと同じような角を持ち、筋肉ムキムキでイケメンな上半身裸の男がそう叫びながら入ってきた。

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