18 終焉
あれから私は、とてもつまらない人間になった。
「生きたい」と思うようになったのだ。
なんだかもう、死ぬのが馬鹿らしくなってしまった。3度も死に損ね、神も信じられなくなった私は純粋に、生を実感するようになった。
「バルックハーゲン。モタモタしないで早く来て。」
「すまない。すぐに行こう。」
マイロとの関係は、 まぁ何となく、と言ったところだ。
あれだけ彼の前で恥をさらしてしまったので、隠すものも取り繕うものもなく、彼を信頼するようになった。
マイロはC.H.R。私の生命力を吸い上げ、私が死ぬまで稼働し続ける。
私は命を握っている相手に安心するようになっていた。彼は機械だから。彼は感情なんてないから。
色んな言い訳をしてみたけれど、でも多分。
彼に惚れてしまったのだろう。
突然の感情で戸惑うかもしれない。
私だって戸惑っている。
でも、私は弱い人間だから、何かにすがりついていないと生きていけない。
今までは「死ぬこと」や「信仰」に縋っていたけれど、今は「恋心」に変わった。
好きな彼に命を渡せるのなら、それが一番の愛情表現だと、そう思うことで戦場を今日も生き抜く。
死ぬ時はマイロに生命力を全て渡した時が良い。
そうすれば、その時私はやっと生に縋りつかず、「死にたい」と本気で思えるだろうから。
「マイロ。私は貴方の稼働に全力を尽くそう。」
すこし逸る鼓動を抑えて、僅かに頬を赤らめて。恋する人間だと分かって欲しい。
私はマイロに向かって振り返り、彼の灰色の瞳を見上げた。
パァンッ!!
「……え?」
いたい。お腹。赤。いっぱい流れて…?
「…ぁ。」
ドサリ。
体に力が入らない。
なんで?ここは戦場じゃない、のに。
あつい。いたい。マイロが撃った?
「俺は言ったはずだよ。」
冷たい淵がヒタヒタと近づいてきて瞼を開けていられない。
今までとは全然違う。明らかに「死」だ。
そんな中でもマイロの声は何故かハッキリと聞こえた。
謳うように軽やかで、僅かにノイズが混じった低音。
「用のない無意味な適合者なら殺すって。なに、その目は。次は恋愛ってやつに縋ろうとしてるの?」
「な……んで、」
「本当に馬鹿で救えないな。何も反省していないんだね、それが人間の特徴なのかな。」
見ていてイライラする。
マイロがそう吐き捨てた。
「無能すぎるから死んでね。バイバイ、適合者。」
絶望。左の頬が濡れた感覚がしたと思ったけど、次の瞬間には分からなくなってしまった。
光が途絶える。
後に残されたのは一体の女の死体と、生命力の供給が途絶えて稼働が止まる寸前の、旧型のC.H.Rだけだった。
ここまで閲覧いただきありがとうございました。
本編は終わりですが、番外編的な掘り下げを数話投稿しようと思っています。




