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16 失望
とても短いのでもう1話公開します。
沈黙が病室に流れる。
野戦病院の数カ所割れた窓から、戦場にいることを忘れてしまいそうなほど爽やかな風が吹き込む。
「…私も、同じです。」
気づけば、そう口にしていた。
「私はいつかそう思うことが怖くて、生きることが怖いのです。私はどこまで行っても籠の鳥だから。」
籠を出てしまったから、もう戻って飼い殺しになる息苦しさを知ってしまったのだ、と。
ジョーゼフ少尉は、私の言葉を困ったように眉を下げて聞いていた。
彼が静かに口を開く時の、粘膜がくちゃりという音が、やけに大きく響いて、ジョーゼフ少尉は一言だけ呟いた。
「若いね。」
そうして、彼はそのまま病室を去ってしまった。柔らかな風がカーテンを揺らす、5月の昼下がり。
私は前線に戻った。
今思うと、ジョーゼフ少尉は私に怒っていたのだ。
彼は艱難辛苦を味わってきたから、甘えたことを言った私に対して、「同じだ」なんて抜かした私に失望したのだ。
それは、マイロも同じだったのだろう。
彼に失望されるほど、彼に心が、そんな機能があるのかどうかは別として。
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