表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニア軍曹は全てに使われ絶望する〜人造兵器の適合者の末路〜(旧題:愚かな望みの終焉〜ニア軍曹は縋りたい〜)  作者: 朝倉 ねり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

14 正論という名の刃

「はぁ…。貴女がそこまでつまらない人間だとは思ってなかったな。」


 熱心に祈りを捧げる(わたくし)を見て、マイロは嘆息し、笑みを消した鋭い眼光で私を見た。


「……失望したか?私は貴方と違ってただの人間だ。悩み、迷い、絶望もする。その過程で思想が変わることはよくあることだ。貴方はちょうどその瞬間を目撃しただけ。」

「ふふ。失望するほど貴女に興味も期待もしていなかったんだけど。大分自意識過剰なんだね。……貴女が言う『神』もそうなんじゃないかな?」

「やめて。」


 私からまた奪うのか。


「そんなこと考えている暇があるんだったら、1つでも多く手柄を立てた方が良いでしょう?『神』なんて実態のないものより、余程有意義だと思わない?」

「やめてちょうだい。」


 マイロの顔が見れない。

 見たら全てが終わってしまう気がする。


「結局のところ貴女のそれって、被害者意識から来ているんだよね。どうすることもできず、受け入れている私は可哀想っていう。」

「抵抗もしないで負けた人間はただ蚊帳の外なだけだよ。ガラス越しに暴力を見て、さめざめと泣くんだ。『私ってなんて可哀想なんだろう!』」

「たとえ体に暴力を受けていたとしても、それじゃ他人事と同じじゃないか。…人間は自分さえ平気な顔で見捨てられるんだね。気持ち悪い。」


「黙りなさいっ!わたくしの言うことを聞けないと言うの!」


「そういうところだよ、愚かだね。……これだったら大人しく指揮を任せて、アリオンの流れ弾にでも当たらせるんだったな。」


 正論という暴力は、時に他のどんな兵器よりも効果的に人間を破壊するのだ。


「もっと早く、こうしていれば良かったと言うの…」

「貴女が愚者というレッテルを貼られたまま死にたいんだったら、そうなんじゃないかな。」


 マイロは淡々と獲物を追い詰める。

 父が友人とチェスをしていた時の「カン」という音が聞こえてくるようだった。


「そ、それは…私は戦で死ねば名誉ある死だと…」

「どういうこと?人間はどんな『死』でも違いは無いと思うけど。死んだらウジが湧いて肉が腐るだけじゃないの?」

「そ、そうですが、世間体というものがあるのです」

前線(ココ)まで来てまだ世間体とか言っているの?……やっぱり馬鹿だね。次の作戦では最前線で突撃してもらおう。」

 そうすれば、そのお気楽な脳みそごと粉微塵にしてくれるんじゃない?と頭に人差し指を置いてクルクルと回しながらマイロは言った。


「何か考えている暇があるんだったら、他にすることがあるでしょう?神とか死とか、つくづく人間が考えるものはくだらないね。」

「な、なら!私の人生で、一体何が私のものになると言うのよ!体はこの戦争と男どもに、生死は神の下に、今までの人生は両親と領民のために。神を信じる心さえもないと言うのなら、私はただの抜け殻だわ!」

「人間は死ぬことは出来るけど、生きない、という選択肢はない。貴女が死ねないって言うのだったら、俺たちは貴女を死ぬまで使い潰すだけだよ。」


 抜け殻でも生きることは出来るのだから、それ以上求めてはいけない。

 戦場は合理的。C.H.Rは戦争の道具。

 とするならその論理は必然で、私にも納得のいくものであるのが腹立たしい。


 神よ。私は先ほど得た真理を、ようやく手に入れた私だけの!真理を、もう手放さなくてはならないのでしょうか。


「それに俺たちに、貴女のことを考慮する必要ある?無いよね?俺のマスターなんだから、無駄死になんて許さないから、ね?」

 マイロはそう言って、作り物めいた完璧な笑みで笑った。


 私はもう何も言わなかった。

「私」の生を生きられないことに絶望して、3度自死に失敗し、それでもと思った(よすが)の信仰も否定された。


 もう何も、言う必要はないだろう。


 1番愚かなのは、他人の意見にいちいち動揺していた自分だということは。

閲覧いただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ