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51.息子side

「ばあちゃん?お客さん、ばあちゃんに会いに来たのか?ああ、この商会の斜め前の菓子屋がそうだ。今なら丁度休憩時間に入ったばっかりだからな。会って話せるんじゃねぇか?」

 

「えっ!本当ですか!」

 

「おう、じゃあいくぞ!」


 僕は店員さんに連れられて店を出た。

 店員さんの案内に従って歩く事五分少々、目当てのお店の前に着いた僕は扉を開けて店内へ入った。

 カランカラン♪ 扉を開けると涼やかな鐘の音が鳴る。

 

「ばあちゃん!ばあちゃんに客だぜ!!」


 大声で叫ぶように呼ぶと中にいた数人の店員達が一斉にこっちを振り向いた。視線が集まって気恥ずかしさを覚えたものの直ぐに気を取り直して店内を見渡すと奥の方にあるテーブル席に座っている老婆の姿を見つけた。間違いない。あの人が“ばあちゃん”だ。

 僕の姿に驚いた“ばあちゃん”は店員に後の事を任せると言うと僕を奥の部屋へと案内した。


 部屋に着くと椅子を勧められたので座ると直ぐに紅茶とチェリーパイが差し出された。


「うちの看板商品の一つだよ。お食べ」


 言われるままにフォークを突き刺すと一口頬張る。甘酸っぱくておいしい!今まで食べたどのパイよりも美味しいと感じた。僕は二切れ目を食べると一気に完食してしまった。


「どうだい?うちのパイは?」


「はい、とても美味しかったです」


「そりゃ、よかった。王都からこの子爵領まできたんだ。私に用があるっていってたが……あんたエラの子だろう?あの子に何かあったのかい?」


 僕の母が亡くなったこと。母の身に起きたことを包み隠さず話した。話し終わると“ばあちゃん”は大きく息を吐いて言った。

 

「そうかい……エラが……。本当にバカな子だ。真面目にやってりゃそんな惨めな最後にならずに済んだってのに」


「母は報い受けたんです」


「報いだって?」


「はい。人を陥れて不幸にした報いです。僕が子供の頃から既にアルコール中毒で病院に入る頃にはもう現実と空想の世界の区別もつかなくなっていました。だから僕は医者にお願いしました。母の脳の治療をしてくださいって」


 “ばあちゃん”の顔色が見る間に青くなる。

 

「そしたら先生、なんていったと思います?『あなたのお母様はアルコール依存症ではありません』って言うんですよ。それで母が飲まされていた薬を調べたら違法ドラッグだったんです」


 僕の言葉に驚愕の色を浮かべる“ばあちゃん”を見てさらに続けた。

 

「母はずっと幻覚の中にいたんです。自分の息子の姿を恋敵だと思い込んで罵倒したり殴りつけたり。時に僕が父に見える時もあったようです。物凄く縋られました。そして自分がやったことも忘れていました。ありえませんよね?あれだけの事をしておいて」

 

「それはあの子が悪い」

 

「父は母を憎んでいました。心の底から。恐らく母に違法ドラッグを渡すように指示したのは父でしょう。母は館に監禁状態で常に監視されていました。外にも出られずにいた母がドラックを購入する事は不可能です。つまり誰かが売ったんです。父の手の者以外考えられない」

 

「……」

 

「でも父はやりすぎた。父もまた罰を受けたんです」


 僕はそこで一旦話を切った。するとばあちゃんがポツリと言った。

 

「お前さんの父親も病気だったんだよ。心の病ってやつだね。少しずつ少しずつ壊れていっちまったんだ。新聞には過労としか書かれてなかったけどねぇ」

 

「そうですね。父なりに僕を家族として愛そうと努力をしてくれた時期もありました。でもそれも長くは続かなかった」

 

「愛情っていうのは努力してするもんじゃない。それでもあんたの父親は頑張ったんだろうさ。あんたの思うような愛情じゃなかったかもしれないがねぇ」


 僕は何も言わずに俯いたまま聞いていた。


「私だってそうさ。あんたの母親を怒鳴りつけたりしてた時はそりゃ酷いモンだった。今なら酷い事をしちまったと思うよ。エラをまともな子供にしようと必死だったからね。とにかく人の道に外れる事だけはしないように煩く言い聞かせてたんだが私の育て方が間違ってたんだろうねぇ。結局ああなっちまった」

 

「いいえ!違います!あなたは何も悪くない!」


 僕の言葉に“ばあちゃん”首を横に振った。

 

「あの子はさ、私の妹にそっくりの容姿だ。妹のようにならないように気を付けてたんだ。 まさか、産みの母親と同じような真似をするとは考えもしなかったよ」



 どうやら“ばあちゃん”は母を男爵家に引き渡すのをかなり渋っていたらしい。




 




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