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一人語り  作者: 木ノ下 朝陽
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ルポライター・伍代智世の取材メモより

ふとしたきっかけで作者の中に生まれた「彼女」に、自動筆記の如く「書かされた」物語です。


時に擦り切れそうになりながら、それでも懸命に生きていく、一人の女性のお話です。

本来人見知りで、あまり他人とのお喋りが得意ではないヒロインの「一人語り」に、どうか暫しの間、お付き合いくだされば幸いです。

…はい、少々お待ちください…。……すみません、大変にお待たせを致しました…。

あ、小宮先生。こんにちは、今日はどうもわざわざ…。はい、…ええ、こちらの方が、伍代智世さん…。

はじめまして。…ええ、はい。私が立花葵です。どうぞよろしくお願いいたします。

あの、…本当に伍代智世さん、ですよね?

いえ、あの、私が勝手に想像していたより、ずっと、その…雰囲気の柔らかい方で、それに溌剌とした物言いをされるんだな、って…。その、お借りしたご本の著者略歴や、それに、あの、ネット検索で調べさせて頂いた範囲内では、その、少なくとも私よりも、その、お姉様でいらっしゃいますし、それに、あの、私…良い歳の上に、曲がりなりにも出版業界に携わる身で、本当に世間知らず、物知らずで申し訳ないんですけれど、相当のキャリアもおありみたいですし、…何より、その、私が拝見した限りでは、お顔立ちが、何と言うか、もっときりりとした印象だったので、きっと、その、…一昔前の女子校の先生みたいな方かと…。大変失礼を申し上げました。…いえいえ、本当にどうぞよろしくお願いいたします。

あの、まずはお上がりになりませんか?立ち話も何ですし。

あ、…小宮先生、もうお帰りですか?…え、もう次のお仕事の?…それはどうも、先生、わざわざありがとうございました。ええ、どうぞお気をつけて…。

…あの、伍代さん、とりあえず中へどうぞ。独り住まいで行き届きませんが…。

いえ、そんなことは。広いだけの、古い家で。

どうぞこちらへ。よろしければ、どうぞこちら、お当てください。…え、…あの、いいんですか?ありがとうございます。せっかくですし、遠慮なく頂戴いたします。実は私、これ大好物で…。

あ、後藤さんに聞いていらしたんですね。すみません、わざわざお気遣い頂いて。

お祖母ちゃん、これ、こちらの伍代さんに頂きました。お祖母ちゃんもこれ、大好きだもんね。良かったね。嬉しいね。

…あの、伍代さん、これは大変に不躾なお願いなんですけれど、もしよろしければ、ちょっとお線香を上げてやって頂けませんか?…今日、祖母の月命日なんです。祖母も珍しいお客様は、きっと喜ぶと思います。

よろしいですか?ありがとうございます…。ええ、どうぞ。お願いいたします…。


お待たせしました、どうぞ、本当に粗茶ですけれど…。お茶請けはお持たせで。どこまでも行き届かないことで、大変に申し訳ありません。

いいえ、どうぞご遠慮なさらず。私もお相伴させて頂きますから…。

…ええと、その、拝見した企画書や、それに後藤さんから伺ったお話ですと、伍代さんは、その、…あの事件について、私の話をお聞きになりたい、とのことでしたけれど、…伍代さん、後藤さんに伝手をお持ちなら、調書の大まかな内容くらいは、とっくにご存じなのではないですか…?

あ、…「直接話を聞く」って、やっぱり大事なことなんですね…。分かりました。私の話が、どの程度お役に立つのかなんて、正直全く見当が付きませんけれど…。

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