1. 私の邪魔をする女
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珈琲の美味しい喫茶店。
その店は9時開店だ。
私は9時きっかりにお店に入る。だからいつも一番乗りだ。
まだ誰もいない店内が気持ちいい。
私はいつもの席に着き、読書を始める。
これが私の毎日のモーニングルーティーンだ。
良い一日は、良い習慣から始まる。by どこかの誰か
なのに━━━━━
お客さんが徐々に入り、店内の椅子がポチポチ埋まる頃。
今、私の前にはべらべらと旦那の不満をぶちまけてる女がいる。
相席の断りも入れずにいきなり座って、あたかも私と待ち合わせていたかのように話を始める。
高1、高2と隣のクラスだった(らしい)。
私の顔を覚えていて、懐かしくて声をかけたと言っていたが、なんで覚えてるんだよ。こっちは大迷惑なんだよ。
私がここに毎日同じ時間にいるのを知って、この女も来るようになってしまったのだ。
マジ超迷惑。
お前なんかキライだよ。
わかんないのかね。
相づちすら打たない私に、彼女は一方的に話す。ほぼ100%旦那の悪口。次から次とよくまあそんだけ悪口あるなと感心するくらい出てくる出てくる。
チビだの小太りだのブサイクだの、並んで歩くと恥ずかしいだの早く死んで生命保険金手にしたいだの、他にもまあ言いたい放題。
ずいぶん稼いでくれている旦那のようなのに、よくもそんなに悪く言えるもんだ。
要約すると『金目当ての結婚』
そして始まる身につけてる物のハイ・ブランド自慢。お前に所有されてるハイ・ブランド気の毒。
無視を貫く私になんの疑問も持たずに話すこの女の神経は果たしてどんだけ図太いのか。
ふむ、この場合は『図太い』は適当だろうか?
『図太い』以外に当てはまる言葉はなんだろう?
・・・・。
クソッ!悩み事ができたじゃないか!
あとで調べよう。
いまはこの三島由紀夫を読了するのが私の使命なのだから。
「ねぇねぇ、学校、ほんと、あれからどうなった?あたし、ほら、引っ越ししちゃったしさ、わかんないのよね。友達とも連絡とれなくなっちゃったしね。この前は時間なくて聞けなかったけど」
そういや、この前去り際に笑いながら話してたな。胸くそ悪い。
私は無視を貫いた。