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第1話、プロローグ


「いいかい? 世の中には2種類の人間がいる。モテる奴と、モテない奴だ」


 目の前で尊大にもふんぞり返っている金髪イケメンのルースは、俺に向かってそう言った。


「……何を言ってるんだ?」


 疲れているのだろうか。そう思った俺を、ルースは睨んだ。


「君はクビだよ、ヴィゴ」


 ……は?


「どういうことだ?」

「聞こえなかったのか? クビだよ、クビ。僕たち冒険者パーティー『シャイン』から君は追放になったんだよ」


 イケメン男ルースは、俺を余裕たっぷりに見下した。このイケメン野郎……。


「だから何でそうなるんだよ。俺が何かヘマでもしたか?」

「いいや」


 ルースは首を横に振る。


「君は優秀だよ。僕と同程度には腕も立つし、仕事ぶりも悪くない。ただ……君は僕らの仲間にふさわしくない」

「は?」

「あんたがすっごくモブ顔でダサいって言ってるのよ。馬鹿」


 ルースの隣にいる美少女魔術師――エルザが俺を見上げる。何で馬鹿呼ばわりされなきゃいけないんだ?


 ムカつくことに、ルースの両隣に美少女がいる。右に魔術師エルザと、左に魔法剣士のアルマだ。


 その二人に挟まれてふんぞり返っているのが、我らが冒険者パーティー『シャイン』のリーダー、魔法騎士のルースである。……なお俺と幼馴染みだ。


「端的に言ってしまえば、エルザの言う通り、君はシャインにふさわしくない」

「冗談だろう、ルーズ!」

「ルースだ、馬鹿!」


 イケメンは言い返した。俺は信じられなかった。


「顔のせいか? それだけでクビ?」

「さっきからそう言っているじゃないか」

「ほんと、あんた顔だけじゃなくて、耳も頭も悪いわね」


 うるさいよ、エルザ。伯爵様の娘だからって、言い方ってもんがあるだろうが。


「僕たちのパーティーは最近活躍してきて、評判もよくなっている。僕はBランクになったし、エルザとアルマもCランクに昇格した」


 おめでとう。前に祝ったけど。……で、俺の昇格はまだですか、リーダー。ちゃんと俺の働き、ギルドに報告してる?


「僕ら、ビジュアルで売れてきているところもあるから、その長所を伸ばしていこうと思っているんだ。だから君みたいな地味な……不細工がいると、僕らのきらめくイメージが傷つくんだよね……」


 エルザとアルマは、ルースにさらに抱きつき、しかし俺を睨むのをやめない。


「正直、アタシ、あんたと一緒にいたくないのよね。汚らわしい、ってやつ?」

「あなたはよく働きますが、視線が物凄くイヤラシい。目で犯されているみたいで、気持ち悪いです」


 そんな目で見てないよ! 誤解もいいとこだ。


 しかし面と向かって言われるとショックだ。胸が痛い。ぶん殴られたように頭がグラグラする。


「あんたって女の子に優しいけどさ、下心が透けて見えるのよねぇ。嫌だ嫌だ」

「最低だと思います」


 濡れ衣だ。あ、いや、そりゃあオレも男だから、時々エルザのお胸様に視線が言ったり、アルマのうなじから背中へのラインに見とれることはあるけども、邪念がわかないように我慢してるんだぜ!


「ねえ、ヴィゴ」


 ルースは哀れみの視線を向けてくる。


「僕と君は幼馴染みだ。その縁で一緒に冒険者になって、ここまでやってきた」

「……ルース」

「この際、全部言っちゃうけど、僕が君と一緒にいたのは、君という凡人が僕の存在をより際立たせることができると思ったからなんだ」


 マジかよ。俺は、お前の引き立て役だったってことか?


「要するに、君の容姿がいけないのだよ」


 地味で、どこにでもいそうなモブ顔。それが周囲の評価を分けた要素――とルースは評した。


「君に落ち度はない。いや、あるとしたら、そんな容姿に生まれたことかな?」


 クスクスと、エルザとアルマが忍び笑いを浮かべる。


 容姿ってマジで言ってる? そんなの、オレにはどうしようもないじゃんよ! オレは生まれてこの方、この顔だ。


 死んだ父ちゃんと母ちゃんが作ってくれた顔だ。それのどこが悪い!


「僕たちは光り輝く。だけど、ここまで来ると、汚点である君のほうが目立ってしまうんだ。わかるだろう? 綺麗なものについた汚れのほうが目につくってやつ。だから、君を僕らのパーティーから追放するんだ」

「ついほうー!」


 エルザが生意気な声を上げ、アルマがそっぽを向いた。


 仲間だと思っていた。だがこいつらにとっては、そうじゃなかった。それがこの結果ということだ。


 俺は、この恵まれなかった容姿が原因で、所属していたパーティーから追放された。



  ・  ・  ・



 信じられない。顔がモブだからパーティーから追放って、こんなくだらない理由があるか?


 冒険者は実力がすべて。顔は関係ない。


 いやそれでも、俺は綺麗好きだし、体臭だって気をつけてた。同じパーティーの女の子たちにも配慮したのに、それが気持ち悪いとか言われる始末。


「何で、人並みにモテないんだ……」


 俺もモテたら、こんなことにはならなかったのにな。


 冒険者としては不足はなかった。だがパーティーから追い出された。


 別にソロでやっていけないことはないが、全てをひとりでやっていかなきゃならないところで、中々面倒ではある。仲間がいれば、疲れた時は交代できるし、役割分担もできる。


 どうしたものか。不安を抱えつつ、パーティーのホームを追い出された俺は、いつもの習慣に従い、教会に立ち寄った。


 年季が入っている教会には、老いたシスターがいて、まあ会釈するくらいは親しい。……それは親しいと言えるのか? 俺みたいなその他大勢に会釈してくれる人間なんて希少なんだ。


 寂れた教会、というのは、単に俺が人の少ない時間帯に行くからで、週末にある休養日だと、そこそこの人手がお祈りに訪れる。


 この世界を作りし太陽神。それを象った神像の前に膝をついて、お祈りを捧げる。


 偉大なる太陽神様。モテないためにパーティーから追放されました。どうか私めに、モテる力をお与えください……!


 俺はこれでも、毎日欠かさず、神に祈り続けている。世界には神の与えたスキル、ギフトなども存在しているという。敬虔に神を崇め続ければ、授けられることもある――宗教家がいかにもそれっぽくでっち上げているだけと言われることもあるけど……。


 いや、絶対に、神は信じる者に答えてくれる! 授けられないのは信仰心が足りないからだ。


 俺は呼吸を整えると、深々と神像に頭を下げた。一瞬視界が開けたような感覚に陥った。


 ――もてる……スキル……を……与え……よう……。


「はっ――!?」


 聞き違いだろうか? 俺の耳は、そんな言葉を受け取ったような……。もしや、神が応えてくれたとか!? 信仰深い俺を見てくださった神様がスキルを与えて下さったのかもしれない!

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