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そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第6章 野生児と頂の守り神

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第66話 心に決めた

 風を切り雪をかき分ける俺達の姿は、それなりに目立めだつらしい。

 あと少しでコロニーのもと辿たどり着くというところで、こちらに気が付いた魔物達まものたちが、迎撃げいげき態勢たいせいを取りはじめた。


「おいノーム、これってヤバいんじゃないか!?」

「あいつら気づきやがったな。でも、準備じゅんび万端ばんたんってわけでもなさそうだぜ!!」

 そううノームのゆびさしたほうに目を向けた俺は、1人のゴブリンが雪に足を取られてころんだことに気が付く。


 すぐにそのゴブリンのほう進路しんろ変更へんこうしつつ、てき攻撃こうげき身構みがまえた俺は、小さな雪の山をジャンプ台にして、思い切りび上がった。

 はたから見れば、魔物まもの達の頭上ずじょうおどり出たような状態なわけで、このままじゃ敵のど真ん中に放り出されてしまう。

 まぁ、何も考えてないってことは無いわけで、俺はすぐに声を張り上げる。

「ノーム!!」


 ジャンプと共にさけんだ俺は、頭の上にたノームをつかむと、一緒にちゅうに浮かび上がった岩の板に向けて彼を投げた。

 当然、岩の板に衝突しょうとつしたノームは、声を上げる間もなく板の中へと姿を消してしまう。

 直後、長いやりへと変形した岩を、空中で掴み取った俺は、切っ先を地面に向けながら着地する。


 魔物達は俺をけるように場所を開けたかと思うと、臨戦りんせん態勢たいせいにらみ付けて来る。

 ゴブリンだけじゃなく、熊のような巨体の魔物やおおかみ型のものまで、様々な魔物達が、俺達を取り囲んだ。


 そんな奴らを睨み返しながらやりを構える俺は、ふと、キツネたちの姿が無いことに気が付く。

「あれ? あいつら、どこに行った?」

「おい、そんなことよりも、今は敵に集中しろ! 来るぞ!!」


 やりからニョキッと姿を現したノームにせっつかれ、俺は気を取り直す。

「前も後ろも右も左も、敵だらけだな。いやになるぜ」

「それでも切り開くしかないだろ。それこそ、俺達の得意とくい分野ぶんやだ。道を作るぞ、ノーム!」

「おうよ!!」


 ノームの掛け声を合図に一歩を踏み出した俺は、手にしていた槍で魔物を斬りながら、前に進んだ。

 斬るというよりは、殴るって言った方が良いかもしれない。


 そうして、コロニーめがけて敵の中を進む俺達の元に、次々と援軍えんぐんが現れる。

「ダレン! ノーム! 無事だったチ!?」

「オイラ達ならピンピンしてるぜ! って言うか、心配してくれたのか? ペポ」

「う、うるさいチ!!」

「やめてやれよノーム。俺達だって人のこと言えないだろ」

「まぁ、そうだな」


 飛び交う矢を無数の風で弾き返しながら、頭上を旋回せんかいするペポとシルフィに、俺はそう声を掛ける。

 そんな俺達にチラッと視線を向けた彼女は、少し恥ずかしそうに顔をそむけると、コロニーの上空に戻って行った。

 そうこうしていると、同じように魔物の中におどり出たガーディが、その赤い髪を風になびかせながらけ寄ってきた。


「ダレン!! ブジか!! いまタスケる!!」

「ありがとうガーディ、お互いに無事でよかった! サラマンダーとアパルも無事か!?」

「だいじょうぶ!!」

「ってことは、あとは邪魔じゃまものをどうにかするだけだな」


 そこからはあっという間だった。

 俺とガーディが魔物達を内側からかく乱し、ペポとシルフィとサラマンダーが追い立てる。

 俺達の華麗かれい連携れんけいを前に、魔王軍の連中れんちゅう尻尾しっぽ巻いて逃げたってワケだ。

 まぁ、そんなに強い魔物が居なかったってのもあるけど。


「よし、これであいつらもここには戻って来ないだろ」

 逃げ去っていく魔物達の背中を見て、そう呟いた俺は、ようやっと胸をで下ろし、コロニーの中に足を踏み入れた。


 ここは今まで見て来たコロニーの中で、最も小規模しょうきぼな集落だ。

 家も数件しかないうえに、住民も少ない。

 こんな雪山の中にある訳だから、仕方がないとは思うけど、だとしたら、なんで魔王軍はここを襲ったんだろう。

 そんな疑問を抱きつつ、コロニーの中央に集まっているペポ達と合流した俺は、改めて皆の顔を見る。


 ペポにシルフィにサラマンダーにガーディ、そしてスヤスヤと眠っているアパル。

 どうでも良いけど、あれだけさわがしかったのに、アパルはよく寝ていられるよな。

 と、あきれながら残りの2人を目で探した俺は、彼らがどこにもいないことに気が付いた。

「あれ? ベックスとケイブは?」


 俺がそう告げると同時に、サラマンダーが悔しそうな表情で応える。

「あの2人は、魔王軍の奴らに連れていかれちゃった」

「え? それは本当か?」

「本当チ。さっきの魔物達は、2人を連れ去るための足止めチ」

「デカいオトコ、ユキオトコが、あいつらツレテッタ……オデ、タスケレなかった」


 明らかに意気いき消沈しょうちんしている様子のペポ達を見て、俺は先ほど見た16年前の光景を思い出す。

滅入めいらない方がおかしい……か。まぁ、確かにそうだよな」

「ダレン? どうしたチ?」

「いいや。何でもない。それより、2人はどこに連れていかれたんだ?」


 そんな俺の問いかけに応えたのは、サラマンダーだった。

「多分、例の坑道だと思う。前に海岸で言ったと思うけど、僕達は元々《もともと》、このあたりに住んでたんだ。だから、坑道にいる魔物達を仕切ってる奴の話も、聞いたことがあるんだよ」

「……そうか。と言うことは、間違いはなさそうだな」


 そう言って、俺は躊躇ためらうことなく視線を上げると、皆を見渡した。

「ダレン、どうするチ?」

「決まってるだろ? 助けに行こう」

「オデもいくゾ」

「もちろん、僕も行くよ」

「案内はウチに任せてねぇ~」

「おい! それはオイラの役目だろ!?」

「あれ? そう言えば、ノームの姿が前のに戻ってるチ」

「今更かよ!?」


 迷うことなく賛同を示す皆を見ながら、俺は思わず苦笑する。

 多分、全員が同じことを思い出しているんだろうな。

 砂浜で、彼らが俺達のことを助けてくれたこと。

 それでも、ロネリーを奪われてしまったこと。


 だからこそ、俺は強く決心した。

 ベックスとケイブに恩返しをする。そして、万全ばんぜん態勢たいせいでロネリーを助けに向かうんだ。

 それがきっと、俺達にとって大きな一歩になるんだと。

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