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そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第6章 野生児と頂の守り神

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第63話 変なキツネ

みずのおねえさん!? それって!!」

 おもわずそうらした俺は、あたまうえのノームとかお見合みあわせた。

「ダレン、いまあいつがったのって、ウンディーネのことじゃねぇか?」

「だよな。俺もそうおもう」


 このしろいのがどんな存在そんざいなのか、かっていないけど、1つだけかったことがある。

 それは、すくなくともこのしろいのは、ウンディーネをたことがあるってことだ。

 いつ、どこで、どんなかたち彼女かのじょたことがあるのかからないけど、おおきな収穫しゅうかくだってことにちがいはい。


「もしかして、リューゲにれられてるロネリーもたんじゃねぇか?」

「いや、そういうわけじゃないとおもう。『今度こんどみずのおねえさんがえない』ってってただろ? ってうことは、4だい精霊せいれいあつまってる様子ようすたことがあるんじゃないかな」

「おいおい、それってつまり」

「あぁ、多分たぶん16年前ねんまえぜんだい精霊せいれい継承者達けいしょうしゃたちは、ここにて、こいつらとくわしたことがあるんじゃないか?」


 確証かくしょうまではられていない推測すいそくくちにしながら、俺はあらためて洞窟どうくつなか見渡みわたした。

 もしかしたら、なに痕跡こんせきでものこってたりしないだろうか。

 そんなあわ期待きたいむなしく、洞窟どうくつなか薄暗うすぐらくて、湯気ゆげだけが充満じゅうまんしている。

「なぁダレン、もっとこいつらからなにそうぜ!」

 そうったノームは、いきおいよく俺のあたまうえからりると、まっすぐにしろいのにかってした。


「なぁ、さっきのはなし、オイラたちにもうすこくわしくかせてくれよ」

「さっき? どっち? たっち!! はい!! きみおにね~」

おにごっこだぁ~ こわいぞぉ~」

げろげろぉ~」

「おい! てよ! おにごっこってなんのことだ!? オイラ、おにじゃねぇぞ? ノームってんだ……はなしけよぉ!!」


 さくにはなしかけようとするノームをいてきぼりにして、キャッキャとわらしろいのたちは、りになってげだしはじめた。

 とはいっても、姿すがたえないところまでくつもりはいらしく、遠巻とおまききにノームのことをている。

「ったく、あいつら、言葉ことばつうじるけどはなしつうじないらしいぜ」

「まぁ、なんとなくそんなはしてたよ」

「で? どうする? こいつらのおにごっことやらにうか?」

「それもいけど、俺はもうすこし……」

「ちょっとて! ダレン。なにかがこっちにる。洞窟どうくつおくほうからだ」

「っ!?」


 不意ふい真剣しんけん表情ひょうじょうをしたノームがそうったのをいて、俺はちかくにあったいわかげひそめた。

 とはいえ、がない以上いじょうつかるのは時間じかん問題もんだいだろう。

「ノーム、温泉おんせんおくまりなんだよな?」

「あぁ、そのはずだぜ。すくなくとも、みちはねぇ」

かった。まずは相手あいて出方でかたうかがおう」


 洞窟どうくつなかを俺達のほうかってちかづいて気配けはい

 その気配けはい細心さいしん注意ちゅういはらっていた俺は、予期よきせぬ大声おおごえみみにして、一瞬いっしゅん身体からだ硬直こうちょくさせる。

「パパ! かえってたぁ!!」

「パパ! ちゃんとってたんだよ? えらい?」

「パパ! はやそとおにごっこしようよ~」

「パパ! たっち! 今度こんどはパパがおにね!」

「パパ! それなに? なにってきたの~?」

「パパ! ここあついよぉ! そとたいよぉ!」


 ノームとのおにごっこなんかすっかりわすれてしまったらしいしろいのたちが、口々《くちぐち》にこえげながら、一かしょあつまる。

 そんなかれらに「パパ」とばれた存在そんざい姿すがたにした俺は、おもわずちいさなこえらしてしまった。

「……キツネ?」

随分ずいぶんしろいキツネだな。って、あのキツネがあいつらの父親ちちおやなのか!? どういうことだよ」

「俺にかれてもなぁ」


 しなやかな足運あしはこびで洞窟どうくつなかあるいてしろなキツネ。

 そんなキツネの背中せなかに、しろいのたちっていく様子ようすた俺は、危険性きけんせいいと判断はんだんし、岩陰いわかげかくれるのをやめた。

 そして、なにやらくちふくろのようなものをくわえているキツネの眼前がんぜんち、キツネにこえけてみる。

「おまえが……いや、あなたが、俺達をたすけてくれたのか?」

「……」


 俺のいかけをいたしろいキツネは、ジーッとこちらをつめながらだんまりをんだ。

 その様子ようすに、俺がすこまずさをおぼはじめたとき、キツネの背中せなかっていたしろいのが、ケラケラとわらいながらげる。

「パパがしゃべわけないじゃ~ん。一人ひとり何言なにいってんのぉ? おもしろっ!」

「なっ!?」

「おいダレン、キツネが言葉ことばはなせるわけないだろ? さすがのオイラも、き、づいてたぜ」


 ここぞとばかりにちをかけてるノーム。

 そんなかれするど視線しせんおくりながら、ずかしさでもだえそうになっていた俺を無視むしして、キツネがくわえていたふくろをそのいた。

 そして、鼻先はなさきふくろしめし、俺になにかをうったえかけてくる。


「な、なんだよ? このふくろなにはいってるのか?」

中身なかみせってことじゃないか?」

「あぁ、そううことか」

 ノームにうながされるかたちで、ふくろった俺は、なかはいっていたやわらかななにかをした。

 それは、毛皮けがわ出来できなにかのようで、すこ年季ねんきはいっている。


「なんだこれ?」

りたたまれてるな。ひろげてみろよ」

「これは……ふく、っぽいな」

ろってことじゃねぇか? 流石さすがのキツネでも、雪山ゆきやま半袖はんそで人間にんげんて、おどろいたんだろ」

仕方しかたがないだろ? ってまぁ、それはいとして。たしかに、これはすごくたすかるな。ありがとう。えっと、キツネさん」


 ご丁寧ていねいかわ出来できたズボンまで準備じゅんびしてくれていたキツネに感謝かんしゃげた俺は、すぐにそれらをまとった。

 温泉おんせんちかくとはいえ、さむさはかんじていたから、すごくたすかる。

 と、俺が身支度みじたくととのえるのをっていた様子ようすのキツネが、ゆっくりと温泉おんせんほうあるはじめた。


 途端とたんに、蜘蛛くもらすようにキツネの背中せなかからりたしろいのたちが、さっきとおなじように遠巻とおまきで、俺達のことをている。

 そんなしろいのを無視むしして、温泉おんせんふちすわったキツネは、鼻先はなさき足元あしもといだかとおもうと、俺達のほうかえる。

 まるで、ここにいとでもっているようだ。


へんなキツネだなぁ」

「でも、ただのキツネってわけでもなさそうだよな」

「だな。なんていうか。俺達になにかをつたえたがっているようにもえるし」

「オイラもそういうふうえるぜ」


 キツネがなにをしたいのか、その真意しんい理解りかいすることはできないけど、敵意てきいいのだけはわかった。

 大丈夫だいじょうぶ。そう判断はんだんした俺はキツネのそばあゆると、おおきく深呼吸《深呼吸》する。

「ふぅ……で? ここになにかあるのか?」

「……」


 相変あいかわらず、なにわないキツネは、するど視線しせんを俺にげかけたかとおもうと、なにやら自身じしん足元あしもと視線しせんとした。

 微動びどうだにせず、ジーッと足元あしもとつめつづけるキツネ。

 なにがしたいんだよ、と文句もんくいたくなる衝動しょうどうられた俺は、ふと、キツネのに、せつないひかり宿やどっているようながした。


 かたとし、いまにもきだしてしまうんじゃないかとおもわせるほど、キツネは全身ぜんしんから哀愁あいしゅうただよわせている。

 その光景こうけいおもわずくちつぐんだ俺は、同時どうじに、1つのかんがえがあたまなかしてくるのをかんじた。


 まるで、そこにえないなにかがあるとでもっているようだ。


 そのかんがえにいた俺は、咄嗟とっさにノームにけ、いかける。

「ノーム! いまここで、ワイルドに覚醒かくせいすることはできるか!?」

「は? いや、さっきっただろ? つながりがれたって」

「じゃあ、もう一回いっかいつななおしてくれ!」

「なんでだよ? あれって結構けっこう……」

「あるかもしれない!! あのひかりが!! ここに!!」


 俺の言葉ことばいたノームは、ハッとした表情ひょうじょうかべたあと、じっと足元あしもとつめているキツネをて、うなずいた。

「ちょっとってろ。すぐにつなげてるぜ!!」

 そうったノームが地面じめんなかもぐってから数分後すうふんご、俺はキツネの足元あしもとが煌々《こうこう》とかがやきだしたことにいた。


「おいダレン! どうだった……」

 そうって地面じめんなかから姿すがたあらわしたノームは、かがやひかりにしてだまんだ。

 そんなかれうなずいて合図あいずしたおれは、そっとキツネのそばにしゃがみむと、そのあたまでるようにしてばす。

「まさか、ずっとってたのか?」

 そういかけながら、俺はキツネのあたまれた。それはつまり、同時どうじひかりにもれることになる。


 以前いぜんおなじように、一瞬いっしゅんにしてはなやぐひかりなか、俺はだれかのこえみみにしたがしたのだった。

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