表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第2章 野生児と若草色の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/124

第22話 オルニス族

「どこだ? ここ」

 ぼやける目をこすりながら、上半身を起こした俺は、周囲の様子を見渡した。


 見覚えのない部屋。というか、ここは部屋って言っても良いんだろうか?

 まず、壁がほとんど無い。


 複雑ふくざつからませた柱と屋根だけの小屋みたいな場所に、俺は寝ていたらしい。

 ベッドと思ったものも、柔らかな素材の上に白いシーツをかぶせた物らしく、かなり作りが簡素かんそだ。


 常に吹き込んでくる風で、髪が乱れてしまうのを手で払いのけながら、俺は恐る恐る柱の奥をのぞき込んでみる。

「高っ!? え、ここってもしかして、ロカ・アルボルの上なのか?」


 咄嗟とっさに近くにあった木製の柱をつかみながら、俺はそうつぶやいた。

 取りえず、床がしっかりと作られていることを確認した俺は、ベッドから降り、小屋の外に足を踏み出してみる。


 俺がいるこの小屋は、比較的小さめな岩の上に建てられているらしく、岩山のコロニーから見えていた最も大きな岩よりも高い位置あった。

 軽い分、上昇気流で持ち上げやすいってことなんだと、冷静れいせいに分析した俺は、視界の端で近づいて来る影を目にした。


 浮いている岩と岩の間に薄く広がっている雲をかき分けるように飛んできているのは、気を失う前に見た黄緑色きみどりいろ

 全身を黄緑色きみどりいろ羽毛うもうにおおわれているらしいその姿は、まさしく、オルニス族だ。


 大きな翼で羽ばたきながら近づいて来るそのオルニス族は、俺と目を合わせると、小さなくちばしを開いて声を掛けてきた。

「やっと起チた!! みんな待ってまチ」


 そんなことを言うオルニス族の身体は、俺とあまり変わらないくらいの小ぶりなのに、両腕の翼はかなり大きい。

 多分、片翼かたよくだけで身長の2倍はあるんじゃないかな。

 おまけに、よく見ると両腕の翼だけじゃなくて、背中にも小ぶりな翼が付いている。


 そんなオルニス族は、俺のすぐそばに降り立つと、背中を向けて告げた。

「ほら、つかまっチ」

「背中に乗っても良いのか?」

「チみは軽いから、大丈夫」


 そうは言っても、少しばかりの抵抗を感じた俺は、恐る恐る彼女の背中に乗った。

 彼女の羽毛は本当に手触りが良い。いつまでもでていたいなぁ。


 なんてことを考えた俺は、あわてて気を取り直して、彼女に告げる。

「掴まったぞ」

「分かったチ!!」


 そう言うと同時に、両腕の翼を大きく羽ばたかせた彼女は、一番大きな岩に向けて滑空かっくうしてゆく。

 下から吹き上げて来る風と、宙に浮いている雲が、ひんやりとしていて心地いい。


 対照的に、ほのかな温もりを感じさせる彼女の羽毛に顔をうずめた俺は、心地よさを覚えながらつぶやいた。

「柔らかいな。オルニス族って、みんなこんなに気持ちいい肌触はだざわりなのか?」

「やめるチ!! お前達はみんなそうやるチ!?」

「ごめん。でも、本当に肌触り良いから。そう言えば、助けてくれたんだよな。ありがとう。俺はダレン。良かったら名前を教えてくれよ」

「アタチはペポ。そろそろ着くチ。ちゃんとつかまるっチ」

「分かった」


 彼女の指示に従って、しっかりと羽毛に顔を埋めた俺は、横目で周囲の様子をうかがった。

 俺達が降りようとしている場所は、多分、一番大きな岩と思っていた場所だ。


 だけど、実際にその光景を見た俺は、それを“岩”だと認識することができなかった。

 表面には土があり草花や木が生え、小さな池まである。

 岩が浮いているというよりは、大地がそのまま空に持ち上げられていると言った方が正しい。


 そんな大地に降り立った俺は、少し離れた場所にある屋根付きの広場から、数人がけ寄ってきていることに気が付いた。

「ダレンさん!!」

 真っ先にそう言ってけ寄ってきたのは、長ズボンにき替えたロネリーだった。


 き替えたって言うか、スカートの下にズボンをいただけの彼女は、その金髪をなびかせている。

 そんな彼女は俺の目の前に辿たどり着くと、両手で俺の手をつかみ、あおい瞳でじっと見つめながら問いかけてきた。


「ダレンさん。無事でよかったです。痛むところとかありませんか?」

「あぁ、特に怪我けがとかはしてないよ」

「まったく、あせらせるんじゃねぇよ」


 ぼやくように告げながらロネリーの後から歩いてきたのは、ラルフだ。

 彼は頭をポリポリときながら俺に目を向けると、小さなため息を吐いた。


「悪い。あの時は俺も本気で死んだと思ったよ」

「アタチが助けなかったら、ダレンは絶対にチんでたチ」


 俺の言葉を聞いた直後、ペポが得意げに告げる。

 そんな彼女に対して、ロネリーが真剣な表情を浮かべると、深々と頭を下げながら感謝の言葉を並べ始めた。


「ペポさん。本当にありがとうございました」

「や、やめるチ!! アタチはそんなすごいことチてないチ!!」

「でも……」

「いいから、やめるチ。そんなことより、早く族長の所に行くチ」

「そうだな。ダレン、オルニス族の族長が話があるらしい。ノームとアニカが、あそこで話してる。とにかく、礼も含めて話に行くぞ」

「あぁ、分かった。そう言えばラルフ。あのボーデンっていうでっかい化け物は、あの後どうなったんだ?」

「あぁ、リューゲが空に打ち上げられていった後、急におとなしくなって、元の穴から帰って行ったぞ。その辺も踏まえて、族長と話すとしよう」

「それにしても、やっぱりダレンさんはすごいですね」


 ラルフに先導せんどうされながら、屋根のある広場の方に歩き出した時、不意にロネリーがそう言った。

「すごい? 何が?」

「だって、このロカ・アルボルの窮地きゅうちを救ったんですよ? さすがです」

「ん~。正直、あんまり実感が無いな。でもまぁ、こうしてまだロカ・アルボルが浮いてるってことは、あの風の魔石はこわされてないってことだよな」

「風の魔石を見たでチか!? ダレン、それは本当でチか!?」

「え? あぁ。見たぞ? 遠目からだけどな。そう言えば、オルニス族っぽい格好してたな」

「……どんな姿チてた?」

「えーっと、両腕の翼を広げてて、空を……見上げてたのかな? 空に向かって何かを叫んでるようにも見えた。それと……」


 そこで言葉を区切った俺は、この先を言っても良いのか分からなくなった。

 あの緑色の魔石を見た時に俺が感じた切なさ。この切なさは、一体何なんだろう。


 そんなことを考えているうちに、目的の広場にまでたどり着いたらしく、俺達の会話はそこで中断される。

「おうダレン。目がめたらしいな」

「ノーム。お前も元気そうで何よりだ」

「何言ってんだ、オイラが元気なのは当たり前だろ?」


 そう言ったノームが、いつも通り俺の頭の上によじ登ってくる。

 彼が頭の上によじ登っている間に、俺は広場に集まっている人々を見渡した。


 ラルフの2倍くらいの背丈がありそうなオルニス族達。

 黒や白、茶色などの羽毛に全身を覆われている彼らが、そのするどい目を俺達に向けている。


 ペポは身体の割りに翼が大きい見た目をしているけど、それはもしかしたら、子供だけの特徴とくちょうなのかもしれない。

 そう思うほどに、広場に集まっている大人のオルニス族達は、その翼の大きさに見合った体格を持っていた。


 そんな中でもひときわ大きな翼と白い羽毛を持ったオルニス族が、口を開く。

「目がめたようだの。ノームの継承者けいしょうしゃ、ダレンよ」


 どうやら女性らしいそのオルニス族は、威厳いげんを感じさせるき通った声を持っている。

 そんな彼女を無視するわけにもいかないので、俺は軽い口調で告げた。


「あぁ、助かったよ。ありがとう」

 直後、アニカが声を張り上げる。

「ちょ、ちょっと!! ダレン君!?」

「ん?」


 なぜアニカが驚いているのか分からない俺は、ロネリーがため息混じりに小さくつぶやいたのを耳にしたのだった。

「……ダレンさん、その方がオルニス族の族長、ホーネット様です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ