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そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第2章 野生児と若草色の少女

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第15話 答え合わせ

 怒るハンスになかば追い出されるような形で、俺とロネリーは建物から外に出た。

 そこまで怒られる理由が良く分からず、ハンスに対して文句を言いたい気分だけど、それは後にしておこう。


 取り敢えず、今しがた聞いた話を整理するために、コロニーのはずれにある大きな岩まで歩いた俺達は、そこに腰を下ろして話始める。


「で。ロネリー。これからどうする?」

「……分かりません。どうしたらいいんでしょうか?」

「オイラはロカ・アルボルに向かうべきだと思うけどなぁ」

「その行き方が分からないという話であろう? もう少し考えんか」

「それくらい分かってるっつーの!」

「おいおい、喧嘩けんかするなって」


 今にも言い合いを始めそうなノームとウンディーネの間に割って入った俺は、改めてロカ・アルボルのある東に目を向けた。

 岩山のコロニーのそばから見ると、宙に浮いている岩の大きさに圧倒されてしまう。


 その光景を前にすれば、さっきラルフが言っていた話も容易に想像がつくってもんだ。

 俺はとてつもない上昇気流に空高く吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる様子を想像しながら、身震みぶるいした。


 と、その時。さっきの建物の方からラルフとアニカが歩いて来ている。

 何やら言い合いをしている様子の2人は、俺達が注目していることに気が付くと、取りつくろうように声を掛けてきた。


「まだコロニーを出てなかったみたいね。良かったわ」

「アニカさん。ラルフさん。どうかされたんですか?」

「え? あぁ、ちょっとね。さっきの事、謝っておきたかったから」


 そう言ったアニカは短く謝罪しゃざいの言葉を述べながら、俺達に頭を下げた。

 彼女が言うさっきのことってのは、間違いなくハンスの事だろう。

 正直、アニカに謝罪しゃざいしてもらう必要はないんだけどな。

 俺がそう考えたのと同時に、ロネリーが謝罪しゃざいを返した。


「そんなこと。私達の方こそ、突然やってきてお騒がせしました」

「お騒がせって。あなた達が来る前から、かなり騒がしかったけどね。ねぇ、本当に2人であの魔物達を追い払っちゃったの?」

「え? あ、はい。でも、私はほとんど何も。お礼ならウンディーネとダレンさんとノームさんにお願いします」


 ロネリーがそう言った直後、ずっと黙っていたラルフが女性2人の会話に割って入った。

「へぇ、ウンディーネとノームだけじゃなくて、坊主ぼうずも戦えるのか?」

 突然話を振られた俺は、一瞬言葉を探した後、うなずきながらこたえる。


「ノームと協力すれば、ゴブリン程度の魔物なら、楽勝だぞ?」

 ノームが俺の頭の上で得意げにしているに違いない。

 そんな俺を微笑ほほえみながら見ていたアニカが、悪戯いたずらっぽい笑みを浮かべながらラルフに視線を移して告げた。


「へぇ……ってことは、ダレン君の方がラルフより強いんじゃない?」

「まぁ、それはそうだろうな。剣術だけならまだしも、魔法を使われちゃ、普通の人間がかなうわけないだろ」


 くやしがるでもなく、淡々(たんたん)と言ってのけるラルフ。そんな彼に、俺は質問をした。

「ラルフは剣が使えるのか?」

「まぁな。いつか機会があれば、坊主ぼうずにも教えてやるよ」

「俺も剣なら使えるよ。あと槍と弓矢と棒もな。俺には師匠ししょうがいたからなぁ」

「ほう。それはいつか、お手並みを見せてもらいたいもんだ……っと、そんな話をしに来たわけじゃないんだ。よう坊主ぼうず。それとノーム。良い話を聞かせてやろう。知りたいか?」


「良い話?」

「ダレン君、彼の話は話し半分で聞いてね。ラルフの妄想もうそうが含まれてる話だから」

「何が妄想もうそうだ。俺はこの目で見たんだぜ?」

襲撃しゅうげきの最中に見たんでしょ? 見間違いの可能性だって十分にあるはずよ」


 なにやら情報を持っているらしいラルフと、その情報を信じていない様子のアニカ。

 アニカの様子だと、その情報は少し危険な香りがするのかもしれない。

 そのせいか、口元に笑みを浮かべたまま話し始めたラルフの様子が、俺には少し怪しく見えてしまった。


「ノームがさっき、なぜ魔王軍がこの岩山のコロニーを襲撃したのかって疑問を話してたよな? あれは前提条件ぜんていじょうけんが間違っている」

「間違っている?」

「そうだ。奴らの狙いはコロニーじゃない。ロカ・アルボルだよ。俺は奴らが襲撃してきた時、ロカ・アルボルの穴の近くにいたんだ。そして、奴らの分隊ぶんたいらしきゴブリン共が、穴に飛び込んでいくのを見た」

「穴に飛び込んだ!?」

「そうだ。俺も初めは目をうたがったさ。そして、すぐに奴らが空高く吹き飛ばされると思った。が、結果として、奴らはそのまま戻って来ていない」

「それって……」


 少し考え込みながらつぶやくロネリー。

 そんな彼女を見たラルフは、言葉に力を込めながら続けた。


「話はそれだけじゃないぞ。それとほぼ同時に、魔王軍の奴らは穴の北にある拠点きょてんから、ロカ・アルボルに向かって一斉攻撃いっせいこうげきを開始したんだ。それと同時に、岩山のコロニーの住民は地下に閉じ込められた。これが何を意味するか分かるか?」

「……陽動ようどう?」

「その通りだダレン。奴ら、穴の下に魔物を送り込んでいることがバレないように、周辺に住む人間を地下に閉じ込め、オルニス族の注意を引こうとした。つまり」


 そこで言葉を切ったラルフは、自らの足元を指さしながら、端的たんてきに告げる。

「魔王軍は、ロカ・アルボルの下にある穴の底で、何かたくらんでる」

「穴の底に行けたとして、何ができるのよ。そもそも、穴の底には何があるって言うの?」

「さぁな。それは俺にも分からねぇ」


 全く信じていない様子のアニカに、ラルフは肩をすくめながら告げる。

 そんな2人を見た俺は、続いてロネリーに目を向けた。


「ロネリー。今の話どう思う?」

「色々と分からないことが多いけど、ロカ・アルボルを浮かせている上昇気流は、穴の中から噴き出してるんですよね? ってことは、その風を止めてしまえば……」

「それは無理よロネリーちゃん。そもそも、どうして上昇気流が発生しているのかも分からないし、止め方も分からないけど、穴の底は一番上昇気流が強い場所なんだから、流石の魔王軍でも、何もできないでしょ」


 首を横に振りながら、告げるアニカ。

 まぁ、彼女の言いたいことは分かるけど、少し納得感なっとくかんに欠けると感じた俺は、頭の上にいるノームを見上げながら口を開いた。


「えっと、色々と疑問があるってのは分かったうえで、俺達から1つ提案があるんだけど。まずは、ラルフが見たって言うものの答え合わせをしないか?」

 そう言った俺は、てのひらを上にして右手を前に突き出した。

 直後、待ってましたとばかりに俺の手の上にノームが飛び降りる。


「ノーム、できるよな?」

「あぁ、オイラが穴の底までもぐって行って、ゴブリン共がいるか見て来ればいいんだろ? 簡単だぜ」

 腰に手を当て、胸を張りながら告げるノーム。そんな彼を見て、ラルフがつぶやいた。


「おぉ、ノームってそんなことができるのか。便利だな」

「おい、オイラを便利な道具みたいに思うんじゃないぞ」

「あはは……なんか、このやり取り前にも見た気がするのは私だけ?」

「大丈夫だロネリー。俺も見たことある」


 苦笑いをするロネリーに俺が同意した直後、ノームが地面の中へと飛び込んでいった。

 そうして数分ほど待った後、勢いよく地面から飛び出して来たノームが、興奮気味こうふんぎみに告げたのだった。

「おい!! ラルフの言ったとおりだ!! 穴の底に魔物がわんさか居たぜ!!」

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