表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
最終章 野生児と目覚めの時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/124

第119話 俺達の役目

 得意とくいげにはっせられたミノーラの言葉がきっかけになったのか、うごくことができていなかった俺達は、一斉いっせいに行動を再開さいかいする。


 真っ先に動いたのは魔王ウィーニッシュとその配下達はいかたちだ。

 先ほどまでとはくらべ物にならないほど苛烈かれつ攻撃こうげきを、り出してくる。

 そそかみなりに飛び交う氷のやり。そして怒涛どとうの勢いでせまり来るアーゼン。

 いつの間にか気配けはいを消してしまったフードの男と、虎視眈々(こしたんたん)と俺たちのすきねらい続ける弓矢ゆみやの女も無視むしはできない。


きゅう本気ほんき出して来たな!」

「それだけ、今のオイラ達が脅威きょういってことだろ! 光栄こうえいなことじゃねぇか!!」

 すぐに立ち上がり、身構みがまえた俺は、心の中でノームの言葉を一部いちぶ否定ひていする。


 ウィーニッシュ達が本当に脅威きょういに思っているのは、4大精霊だいせいれいじゃない。

 間違まちがいなく、女神めがみミノーラだ。

 だからこそ、彼女の登場とうじょうおどろき、そのたすけを受けた俺達を野放のばなしにつもりが無いんだろう。


 うらを返せば、これは俺達にとって最大さいだいのチャンスというワケだ。

 出ししみも、油断ゆだんも、している場合じゃない。

 この場ですべてがけっするということ。

絶対ぜったいに勝つぞ!!」

「当たり前チ!!」

「今の僕達なら、負けることは無いと思うけどね!」

油断ゆだん駄目だめですよ!!」


 皆の声を聞きながら、俺は眼前がんぜんから突っ込んでくるアーゼンと向き合い、大きく一歩を踏み出した。

 同時に、足元にいたノームが地面の中へと消えていく。

 直後、俺の手元に岩でできた一本のやりが姿を現す。


 そのやりを手に取った俺は、さきをアーゼンへ向けながら、突撃とつげき仕掛しかけた。

「そんなもの、俺様に通用つうようすると思うのか!!」

 不敵ふてきな笑みを浮かべながらこぶしふりりかぶったアーゼンに、負けじとやりき出す俺は、しかし、あっけなくやりくだかれてしまうのを目の当たりにする。


 でもまぁ、そうなることは分かってたワケで、砕けたやりいきおいよく投げつけながら、俺はアーゼンの股下またしたすべりり抜ける。

「ちょこまかと……!?」

 股下またしたすべける俺に、手を伸ばそうとしたアーゼンは、そこでようやく異変いへんに気が付いたらしい。


 アーゼンが先ほどくだいたやり破片はへんは、当然、彼の周囲しゅういっている。

 そんな破片はへんから無数むすうつたが発生したかと思うと、おそるべき速度そくど成長せいちょうげ、一気にアーゼンの身体からだへとからみつき始める。


「この!! はなれやがれ!!」

芽吹めぶいてつなぐ!! それがオイラのチカラだぜ!!」

「1人目、だな」

 無数むすうつたからまれ、前のめりに倒れ込んだアーゼンが、さらに発生したつたによって地面じめんい付けられていく。


 そんな様子を肩越かたごししに見た俺は、すぐに視線しせんを前に向け、皆の様子に注意ちゅういを向ける。

 巨大化きょだいかしたサラマンダーは、背中せなかにガーディやベックスとケイブ、アパルとホルーバを乗せた状態じょうたいで、おそい来るリューゲや魔物達まものたち迎撃げいげきしている。

 そのすぐ横では、巨大な水のかたまりが炎と氷を駆使くしするバーバリウスにまとわりつき、ジワジワと追いつめつつあった。

 その上空じょうくうでは、増殖ぞうしょくを続けるシルフィ軍団ぐんだんとペポが、ウィーニッシュと彼の配下はいかである弓の女を取り囲み始めている。


 脅威きょういだったウィーニッシュのかみなりも、同じわざ会得えとくしたシルフィには効果がうすいらしい。

 なんなら、彼が放ったかみなり制御せいぎょを乗っ取ってあやつるなんて芸当げいとうまで見せ始めている。


「これが本当のチカラって奴か」

「おいダレン、呑気のんきに見てる場合じゃないぜ。油断ゆだんはできないんだからよ。それと、まだオイラ達にしかできないことがある」

 そう言ったノームは、まっすぐに一点をゆびさした。

「姿を消したって、オイラには居場所いばしょが分かるんだからな」

「やっと見つけたか」

「おい、なんだその言い方は! オイラは必死で探してたんだぜ?」

「悪い悪い」


 足元の地面から顔だけ出しているノームに謝罪しゃざいした後、俺は彼がゆびさした場所、サラマンダーの背後はいごへとけた。

 目的は当然、ウィーニッシュの配下はいかの内の1人だ。


「させませんわ!!」

「っ!?」

 頭上から聞こえた声に咄嗟とっさに反応した俺は、大きく横に飛び退く。

 するどはなたれた氷のやりが、俺達の立っていた地面に突き立つのを視界しかいはしで見る。

 さら追撃ついげき仕掛しかけて来る仮面かめんの女メアリーに反撃はんげきをするため、俺はころがりながらも地面を強くたたいた。


 直後ちょくご地面じめんから伸び出た岩のはしらが、飛んでいるメアリーに向かっていきおいよく伸びていく。

「当たりませんわよ!!」


 強気つよき視線しせんで俺に向かってさけんだメアリーは、柱の合間あいまうようにして飛び込んでくる。

 だけど、それは愚策ぐさくだ。

「当てる必要がねぇんだよ!!」


 そうさけんだのは、岩の柱の中へと移動いどうしていたノーム。

 彼は柱のすぐそばを飛んで行こうとするメアリーの片足を、つたからめとってしまった。

「きゃ!!」

 いきおいよく突っ込もうとしていたメアリーは、つたに足をつかまれた反動で、はげしく柱に衝突しょうとつする。

「おっと、悪りぃ」

 短くあやまりながらも、ノームは容赦ようしゃなくメアリーを岩の柱へとしばり付けてしまう。


「くっ! このようなもの!!」

 すぐに逃げ出そうと、自身をしばり付けるつたこおらせ始めたメアリーは、直後、目の前に現れた巨大な顔を目にして、ほおを引きつらせた。

「とどめは僕がしてあげるよ」

 言うと同時どうじに口を大きく開けたサラマンダーが、容赦ようしゃのない火弾ひだんをメアリーにびせる。


 当然、けることもできずに直撃ちょくげきを受けたメアリーは、防御ぼうぎょのために氷魔法こおりまほう展開てんかいしていたのか、全身から白い蒸気じょうきを発しながら意識いしきを失う。

「2人目か」

「いいや、3人目だよ」


 そう言ったサラマンダーの視線しせんの先では、リューゲが四肢ししを大きく投げ出した状態でたおれている。

 かたきった。ということかな。


「残すは気配けはいを消してるローブの奴と、弓の女。それに魔王2人だな」

「今は手下にかまう必要はないんじゃないかな? と言うより、閻魔大王えんまだいおうを倒さなくちゃいけないんでしょ?」

「そうだけど……」


 サラマンダーの言葉に賛同さんどうしつつ、俺はこちらをにらみ付けて来る閻魔大王えんまだいおうにらかえす。

 ノームたちの力が解放かいほうされたとはいえ、まだ閻魔大王えんまだいおうに勝てるような想像そうぞうができない。

 女神めがみ対等たいとうせっしているような奴だ。一筋縄ひとすじなわではいかないのも無理むりは無いよな。

 何か、やつたおせる方法があれば良いんだけど。たおすまではいかなくても、よわらせることができれば……。


 そこまで考えた俺は、1つのあんを思いついた。

 正直しょうじき、上手く事をはこべるかは分からない。

 だけど、今までに見聞みききしてきた経験けいけんが、俺のかん刺激しげきする。


「なぁ、サラマンダー」

「どうしたの? ダレン」

「どうして俺達にしか、世界をすくえないんだろうな?」

「え? それは……」

 俺の問いかけに少し考え込んだサラマンダーは、ハッとした表情ひょうじょうを見せた後、俺を見下ろして来る。


 そんな彼を見上げながら、俺は告げたのだった。

「今こそが、俺達の役目やくめってヤツを果たすべき時なのかもしれないな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ