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そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第2章 野生児と若草色の少女

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第11話 岩山のコロニー

 高台たかだいから見えた集落の元に向かった俺達は、その道中で、穴の上に浮かんでいる岩の謎を1つ理解することになった。

 と言うのも、地面に空いた穴の中から轟々(ごうごう)と音を立てる程の上昇気流が吹き荒れていたんだ。


 多分、その上昇気流が大量の岩を宙に浮かせているんだと思う。

 まぁ、普通の感覚じゃ理解できないよな。俺も理解できん。

 それこそ、この上昇気流が風の大精霊シルフィの存在を示す証拠なんじゃないかと考えた俺達は、高台から見つけていた集落のそばまでやって来た。


「で、ここもコロニーなんだよな?」

「はい、多分そうだと思います」

「だったら、あれは何が起きてるんだ?」


 そんな会話を交わす俺とロネリーは、コロニーのはずれにある大きな岩の影から、様子を伺っている。

 どうでも良いけど、上昇気流が吹き荒れている穴の周囲には、大きな岩が無数に転がっていた。


 おかげで身を隠しやすいからいいけど、移動には少し不便かもしれない。

 周囲を見渡してそんなことを考えた俺は、すぐに視線をコロニーに戻す。


「多分、ここのコロニーも襲撃を受けていますね」

「だよなぁ」

 けわしい表情で前を見ているロネリーに、小さな声でそう返した俺は、改めてコロニーの様子を観察した。


 平原のコロニーに比べて、この岩山にあるコロニーは建物がしっかりと作られている。

 木材や石材をしっかりと使って作られた建物が並んでいて、おまけにコロニーを囲う柵まであった。

 それなりに整えられている集落の様子から見ても、平原のコロニーよりは発展していたらしい。


 だけど、それも少し前までの話だったようだ。

 建物の間を、ワイルドウルフや緑色の肌を持った人型の魔物が闊歩かっぽしている。

「ゴブリンとワイルドウルフですね。もしかしたら、魔王軍が来て、占領せんりょうしちゃったのかもしれないです」

「あの緑色の奴はゴブリンって言うのか。まぁ、弱そうだし。さっさと片付けるか」

「え? ダレンさん? まさか、単独で倒すつもりですか?」

「うん。大丈夫だって」

「大丈夫じゃないですよ。もしコロニーの住民達が人質に取られたらどうするんですか? もっと状況を観察してから行きましょう?」

「……それもそうだな。確かに、ガスも同じことを言いそうだ。ところでロネリー。その魔王軍ってのは、どんな奴らなんだ?」

「……そうでした。ダレンさんが知る訳もないですよね。まぁ、後でちゃんと説明しますけど。悪い奴らってことは確かです」

「悪い奴らか。それじゃあ、まずは住民達がどこにいるのか調べよう」

「そうですね。でも、どうやって調べれば……」

「そんなことなら、オイラに任せろ!!」

「そうだな、ノーム、頼めるか?」

「おうよ!!」


 そう言ったノームは、いつも通り俺の頭の上から飛び降りると、そのまま地面の中にもぐり込んでいった。

 そうしてしばらくの間、俺とロネリーはコロニーの観察を続ける。


 数分が経った頃だろうか、勢いよく俺の足元の地面から飛び出して来たノームは、地面に人差し指で突き立てて、話し始める。

「コロニーの中は大体こんな感じになってたぜ。そして、住民達はこの建物の地下に逃げ込んでた。魔物達は、その地下への入り口付近を陣取って、住民が外に出てこれないように、見張ってるらしい」


 ノームが話を始めると同時に、彼が指を当てていた地面に、コロニーの地図と思しき図が浮かび上がる。

 岩の硬い地面にこんな地図を描けるのは、どこを探してもノームくらいだろう。


「わぁ……ノームさんって、器用なんですね」

「便利だよなぁ」

「おい、オイラを道具みたいに扱ったら、ただじゃ置かないぞ?」

「分かってますよ。本当にありがとうございます。すごく分かりやすかったです」

「分かれば良いんだよ」


 ロネリーの丁寧ていねいな言葉を聞いたノームは、得意げな表情をした後、俺に鋭い視線を投げてきた。

 そんな彼の視線を、小さな笑みでさばいて見せた俺は、肩のりを伸ばすように首を左右に傾けながら告げる。


「場所も分かったし、敵の位置も把握したし。それじゃあ、突入するか」

「そうですね。早く住民の皆さんを解放してあげましょう」

「ロネリーとウンディーネは、地下室の入り口を守ることに専念してくれ。俺達は早めに敵を殲滅せんめつする」

「分かりました」

「……どうでも良いけど、ウンディーネってあまり姿を見せてくれないんだな」

「あはは、そうですね。まぁ、彼女は少し人見知りが激しいみたいだから。でも、戦闘が始まったら、ちゃんと手伝ってくれますよ」

「さっきも助けてくれたしな。まぁ、それに関しては信頼してる」


 そう言った俺は、背中の剣と盾を手に取り、岩の影から頃に向けて踏み出した。

 途端、俺の姿を見つけたワイルドウルフとゴブリンが、明確な敵意を向けてくる。


「ノーム。準備は良いか?」

「当たり前だ。いつでも良いぜ、ダレン」

「よし」


 返事をしたノームが、そのまま地面に潜り込んでゆくのを見た俺は、気合を入れるために、一度深呼吸をする。

 そしてその直後、俺は大きく一歩を踏み出した。


 盾を前に構えながらワイルドウルフに向かって突進を仕掛ける。

 対するワイルドウルフが左の方に跳んでけようと、四肢を踏ん張った瞬間。

 俺は右手で構えていた剣を右から左へとぐように振り払った。


 切っ先が地面に触れるような低い位置から、左の肩に抜ける、斜めの斬撃。

 そんな斬撃に引っ張られるように、地面から無数の岩の槍が飛び出してくる。


 当然ながら、狙いを定めていたワイルドウルフは、それらの岩の槍に串刺しにされて、息絶えた。

 その様子をただ眺めるわけもなく、俺は次の獲物えものであるゴブリンの元へと駆ける。


 今しがたの斬撃と岩の槍を見ていたらしいゴブリンは、慌てたようにきびすを返そうとするが、俺達から逃げれるわけがない。

「行かすかよ!!」

 そう叫びながら、右手に構えていた剣の切っ先を地面に触れさせた俺は、先ほどと同じような斬撃を繰り出す。


 左に逸れるように飛び出して来た岩の槍は、まっすぐ前を走っているゴブリンには当たらなかった。

 けど、そんなことは分かり切っている。


 左肩の方へと振り上げていた剣を、右手の方へと切り戻した俺は、その斬撃で突き出て来た岩の槍を一閃する。

 当然、俺の斬撃に合わせて切りそろえられてしまった槍の先端を、俺は1つだけ蹴り上げると、落下してくる槍に目掛けて剣をぶち当てた。


 激しい衝撃音と共に剣に打ち出された岩の槍は、まっすぐにゴブリンに向かって飛んでゆく。

 狙い通り、射出した岩の槍でゴブリンを仕留めた俺は、手にしていた剣を見つめながら呟いた。


「ちょっと切れ味悪くなってきたな」

 そんなことを言う俺の視界に、多くのゴブリンとワイルドウルフの姿が飛び込んでくる。

 まぁ、これだけ暴れれば、見つかるのも当然だよな。


「ダレンさん、気を付けてください!! 奥の方に、武器と鎧を身に着けてるゴブリンがいます!!」

「分かった」


 背後から警戒けいかいを促すロネリーに返事をした俺は、足元に転がっている岩の槍の先端を勢いよく蹴り上げると、再び剣を構える。

「さて、何発当てれるかな」

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