8/10

⑻『小説に於ける、真実と虚構の間』

㈠

言葉に静謐になればなるほど、主体的現実からは、遠く離れている様な気がして、昔の小説に目を通しても、やはりそこに、リアリティはない。上手すぎる文章よりも、乱雑な文章のほうが、小説に於ける真実ならば、我々はその現実に、目を背けるだろう。

㈡

所謂、我々が目を通す小説とは、決まって、学生の頃は、きれいな文章である。無駄のない文章である。頭で区切った様な、文章なのである。しかし、小説界で、本物とされるのは、砕けた文章となる、精神の入った文章である、書きなぐった様な、文章だと言える。

㈢

我々は、後世に、虚構の無駄のない文章の小説を、残そうというのだろうか。最も、小説らしい、本質的耽美な文章を、消し去ろうというのか。こう言った、文学の世界において、小説に於ける、真実と虚構の間、の問題は、非常に重要である。後世に、本物を、残すためには、記録しておくためには。