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⑺『小説に於ける、真実と虚構の間』
⑺『小説に於ける、真実と虚構の間』
㈠
小説は、速度を持って、動態する。文章と文章の間をつなぎ、その文章の群れは、小説になる。真実と虚構は、瞬く間もない程に、重なり合い、また、突拍子もなく、具現化される。我々の我々についての、小説のことを言っているのだ。
㈡
小説は、勿論、我々から生じるが、小説からは、我々は、生じ得ない。この矛盾は簡単である、真実と虚構、これを、我々と小説に充てれば十分だろう。小説からは、我々は、生じ得ない、つまり、虚構からは、真実は生じ得ないのである。ただし、小説家は、限りなく、真実に近い虚構を書くことはできるのだ。
㈢
血を吐いてまで、その虚構を、真実らしく、表現するのであって、それは、芸術家なら、誰しもが必要項だと、認めるに違いないと、思われる。こういった観点からも、真実と虚構の間、については、語ることが出来る、という訳なのである。