町一美女とドキドキ恋愛体験
scene1
自慢のアフロで風を切りながら歩く。
今年の春から山崎大学高等学校への入学をきっかけに兎市に越してきたばかりの高校一年生。
入学式を控え少し伸びた髪を切るためにバーバーへ向かう道中、三人の悪漢に襲われ道に迷っていた。
僥倖なことに少し歩いた先にクイックバーバーを発見し、ひとまず髪を切るという目的を果たせそうなことに安堵する。
赤いランプにげんなりしつつも最後尾につく。
"3割減で"
短く要点を伝え席に着く。
ディスプレイに移るCMからふと目を離すと隣に絶世の美女が座っていることに気が付いた。
目が合っている。
確実に目が合っている。
兎市に越してきて間もないがこの街の異常性は十分に理解している。
この街にいる時点でこの女が激ヤバ女であることは疑いようがない。
そんな激ヤバ女がガン見してきている。
今すぐここから立ち去りたいが散髪している店員も激ヤバ店員確定であるため刺激できない。
唯一の救いはこの女のほうが後に来店したことだ。
散髪後速やかに代金を支払い来た道を引き返す。
コツコツと後方から足音が聞こえる。
かなり速足で店から離れたのでまさかとは思うが念のため後ろを振り返る。
さっきの女と目が合った。
全力で逃走する。
死ぬ気で逃走する。
筋トレなんてしなくても兎市に来れば強靭な足腰を身に着けることができる。
しかし兎市住民もまた強靭な足腰を持っているため巻くことは容易ではない。
そんなときのために常備してある石を投げつける。
頭にヒットしよろけた隙に全力ダッシュで無事巻くことに成功した。
そのあとも何度か別の兎市住民に襲われつつも見覚えのある道に出ることができ無事帰宅した。
命からがらの散髪を終え明日からの生活を想像し転校する意思を固めながら就寝した。
scene2
入学式に来た親の車が廃車になったこと以外学校生活初日は穏やかであった。
家に帰るまでは。
帰宅するとアパートのドアや新生活のために揃えた家具が全て破壊されていた。
壁には太すぎる釘で打ち付けられていた手紙。
"ころす"
おそらく血であろうどす黒い液体で書いてあることから推察される犯人は昨日の女であった。
額から流れる血で綴ったに違いない。
しかし女以外にも別の兎市住民の可能性は十分あり得る。
糞投げつけ全裸男、マッパカッパラッパー、100キロ超級露出狂クレイジー岬の犯行が濃厚か。
考えても意味がないのであきらめて田舎に帰るための準備をしている最中、
"ピンポーン"
チャイムが鳴った。
全身が強張り心臓の鼓動が早くなる。
怯えつつも玄関を覗く。
このためにチャイムだけ破壊しなかったとするなら相当狡猾な犯人であることは間違いない。
しかしそこにいたのは兎市一般住民の方々ではなく幼馴染のグレープフルーツちゃんだった。
殺されることを覚悟していたためグレープフルーツの登場に安堵し少し涙ぐむ。
「私が助けに来たよ!」
涙が止まらない。
「もう大丈夫だよ!」
両手を広げたグレープフルーツの右手人差し指が赤く染まっているのを確認し絶望する。
しかし連日の兎市の日常に疲れ果ていたせいか不思議と逃走しようとは思えなかった。
「車に乗ってこのいかれた街から脱出しよう!」
わーい、やったー。脱出だー。
グレープフルーツを疑ってしまったことに罪悪感を覚える。
兎市にいれば右手が赤く染まる程度のことよくあることだ。
アパートの外に止めてあった黒いバンに乗り込むと中には昨日の女が居た。
気を失う前に見たのは、女がグレープフルーツに金の入った封筒を手渡しているところだった。
scene3
目覚まし時計で目を覚ます。
クロロホルムで眠っていたようだ。
手が縛られている。
場所は女の自室だろう部屋。
グレープフルーツと両親そして最愛の妹が縛り上げられていた。
「ドッキリでしたー」
明るいSEと共にプラカードを持って現れた中年おばさんの頭を女がワルサーP38で打ち抜く。
誘拐5、殺害1で6点。
懲役6年だ。
通報さえできれば警察が動いてくれる。
1283494379527、通報のために必要な電話番号を頭の中で復唱しすぐ通報できるように心がける。
「助けて!なんでグレープフルーツまでこんなめにあわないといけないの!」
グレープフルーツが騒ぎ立てるが女が銃をちらつかせ制する。
押し黙ったグレープフルーツの頭を妹が思いっきり蹴り上げる。
「痛い!なんでグレープフルーツを蹴ったの!最低!」
女が妹に向かって銃を発砲しようとしたところをタックルで防ぐ。
弾はグレープフルーツすれすれを通過し壁に穴をあける。
「うわーん、死んじゃうよー!グレープフルーツ、死んじゃうよー」
女が銃の反動で肩をおさえた隙に再度タックルをかましマウントポジションを取る。
そのままかかと落としで顔面を破壊しにかかるが浮いた腰を取られマウントポジション返しを決められる。
ガーターにホールドしてあったナイフで首筋を撫でられながら愛の告白を受けそれに了承する。
2年後塀の中から出てきた彼女を抱きしめ幸せなキッスをした。
-終-