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考古学者は古代文明に夢を見る

作者: 千手 幸村
掲載日:2021/02/15


 -1-


 木造の喫茶店の中はコーヒー豆を挽いた香ばしい香りが漂う。

 コーヒーの匂いも好きだがこの昔からある喫茶店のレトロで独特な雰囲気も好きだ。


 王都の隅っこにこっそりと昔からある喫茶店『黄昏』では考古学者である俺、レイト・カーターと冒険者でるアリシア・フォールドが対面に座り、会話していた。


 話の内容はこうだ。王都からうんと北へ行った所にある砂漠地帯で古代の遺品が見つかったそうだ。そしてその場所には古代遺跡もあるかもしれないと言うことで砂漠地帯では大捜索が行われており、アリシアも一度行ったらしい。でも、まだ誰も手掛かりを見つけられていないそうだ。それで古代の研究を行なっている考古学者の俺に意見を聞きたいというわけだ。


「まあ、考えられるとすれば跡形もなく消えたか、地中の中だろうな」


「跡形もなくなってるかもなのはわかるけど、地中の中って?」


「古代の地形が現代の地形と同じとは限らない。地盤沈下や火山の噴火なんかで古代遺跡が地中の中に潜っていたりする」


「へぇー、そうなんだ。やっぱり専門家に聞きに来て正解だったよ」


 俺の意見に関心したように頷くアリシア。


「でも、もし地中にあるとすれば壊れたしまっているかもしれないわね」


「なんでだ?」


「北の砂漠地帯にはタイラントワームっていう全長五メートルくらいある怪物が砂の中に生息しているだけどそいつらが砂の中で動き回っているのよ」


 なるほどな。確かにそんな怪物がいたら壊れていてもおかしくはないな。


「他にも北の砂漠地帯にはいろんな魔物が生息しているから私たち冒険者みたいなある程度の戦闘力がないとそもそも捜索もできない所なのよね」


 そもそも何故あるかもわからない遺跡のためにそこまで危険を承知で探索に向かう者がいるかというと古代文明は今よりも発展した科学力があったからだ。

 古代文明の遺物である『オーパーツ』と呼ばれる物はまさしく魔法のような力を秘めている。今の科学力では解明できない技術力でできているため相当な価値がする。

 オーパーツの量産化に成功でもすればそれだけで何代も遊んで暮らせるだけの金が手に入るほどだ。

 その『オーパーツ』がたくさん眠っている古代遺跡を見つければ一攫千金。冒険者のような人たちは命懸けの仕事など慣れたものであるし、その上まだ発見されてない古代遺跡を発見した功績とオーパーツが手に入るとなれば命懸けの探索にも納得がいく。


「それでなんだけど専門家であるあなたにも一回現地について来て見てほしいのよ」


 急な提案を受けた俺はしばらく考える。


 確かに興味がないわけではない。考古学者として何故、現代よりも発展した科学力を持っていたのか。何故そこまで繁栄させた古代文明が滅びたのか。様々な歴史の謎を解き明かしたいから俺は考古学者となった。


「わかった、協力しよう。その代わり北の砂漠地帯での護衛は任せた」


「本当に?助かるわ。他にも声をかけたんだけど皆んな命が惜しくて行きたがらなかったからよかったわ」


 俺とアリシアは座りながらテーブル越しに握手を交わし北の砂漠を共に探索することになった。



 -2-


 ゆっくりと空中に浮かぶ飛行船。障害物がなく進むため三日ほどで北の砂漠の街まで来れた。

 これ以上先は飛行船では進めない。というのも人間が管理できている区域の外は魔物や、異常気象が多発するためそこを進もうとすれば飛行船は墜落してしまうためだ。


「ここから先は歩いて行くしかないわけだけど……覚悟はいい?」


 アリシアは俺の方に向き、辺り一面の砂漠地帯を背に問いかけてくるがここまで来て行かない選択肢などない。


「もちろん、覚悟はして来た。古代遺跡の捜索をしていこうか」


 俺とアリシアは砂漠地帯を突き進む。

 肌を焦がすような、ジリジリと照り付ける灼熱の気温。喉は乾き、身体中から水分が奪われる。


「そこに空いている大きな穴には気をつけて。あれタイラントワームが通った後だから」


 アリシアが言った方向を見ると砂漠の大地に巨大な穴が空いていた。

 

「てことはこの辺りにタイラントワームがいるのか?」


「当たり」


 アリシアが当たりと言うと地響きのような音が聞こえる。恐らくはタイラントワームがこちらに気づいたのだろう。

 

「私にくっついて離れないで!」


 そう言われてアリシアの側に行くとアリシアに脇腹のところを片腕で回し掴まれ抱き抱えらる。

 アリシアはタイミングを測り、前方へとものすごい勢いで飛ぶと先程までいた場所には見上げる程の巨体なミミズのような怪物、タイラントワームが巨大な口を開き飛び出していた。

 アリシアに掴まれていなければ俺は今頃タイラントワームに食われていただろう。


「レイト、逃げるから落ちないようにしっかりと私にしがみついてて!」


「わかった!」


 俺はアリシアに言われた通りにしがみつくと腰回りも細く華奢な身体であり、どこに俺を片腕で持ちながら素早く動ける力があるのか不思議に思ってしまう。


 ーーー《重力転換》ーーー


 アリシアは俺を掴んだまま、先程までの比ではない速度で砂漠地帯を駆ける。そしてその速度はどんどん加速していく。まるで垂直に落下しているようだ。

 タイラントワームが見えなくなるまで走り続けてようやく速度を落としていく。


「はあ、はあ、ここまで来ればひとまず大丈夫でしょ」


 流石に息が荒げているが疲れている様子はあまりない。こいつ化け物なのか。


「なに、その化け物でも見るような目は?」


「ソンナコトナイデスヨ」


「なんで片言なのよ、目を逸らさずにこっちを見なさい……はぁ、私の恩恵の力で重力の向きを変えただけよ」


 恩恵とはこの世界に生まれた時から使える超常の力であるが恩恵を持って生まれる者はごく一部だけの人間だけだ。

 恩恵の中には使えないようなくそみたいな力もあるが重力を操る恩恵となればアリシアはかなり有名な冒険者だったのかもしれない。


「言っとくけど私と私に触れているもの限定で重力の向きを変えるだけだからね。あなたが想像している程、強力で使いがってのいい力ではないわ」


「そうか、さっきのは重力の向きを前方に変えたことによってあの速度を出せたのか」


「そう、無限に落下して行けるから落下すればする程加速していけるの」


 思ったほど強力ではないけどそれでもかなり凄い力だと思うのは俺だけなのか。


「というか話変わるんだけど、この先行けないけどどうする?」


 アリシアは指を差して示した先には流砂がいくつも出来ており、ここを抜けて行くのは無理であろう。


「そうだな、流砂に呑み込まれれば命はないしな。迂回して行くか……」


「どうしたの、何か気になることでもあるの?」


 俺が急に立ち止まって流砂の方を見ているのでアリシアから声をかけられる。


「いや、まさかな……ちょっとだけみて見るか」


 俺は鞄からロープを取り出してその先に重しをつけ流砂の中に放り投げる。


「ちょっと、なにやってるの?」


 俺の行動に不信感を抱いたのかアリシアが尋ねてくる。


「この流砂の中に古代遺跡あるんじやないかなってちょっと思っただけ」


「そういえば、あなたと会った時に地中の中にあるかもって言ってものね」


 俺の行動に納得がいかなくもないがまだ疑問があるようでアリシアは続けて質問してくる。


「でも、なんでロープと重しを入れたのかがよく分からないのだけど」


「俺も恩恵を持っているんだ、手で触れたものの過去を見ることが出来る力。大昔の過去を知ろうとするとしばらく動けなくなるくらい疲れるし、余計なことばっかり見えるからそこまでいい恩恵じゃないけどね」


 俺は恩恵を持って生まれてしまったせいで間違いを起こしてしまった。それにアリシアのように実用性はそこまでない。ハズレのような恩恵だ。


「凄くいい恩恵じゃない!」


 アリシアから返ってきた言葉は俺が予想していた言葉とはかけ離れていた。


「凄くいい恩恵?」


「ええ、だってあなた考古学者でしょ。なら過去の謎が知れるならぴったりじゃない。むしろそのためにあるような恩恵と言っても過言じゃないくらいに」


 あまりに純粋にそう言われ、少し面食らってしまう。恐らく今の俺の顔は間抜けな顔をしているだろう。

 この恩恵を聞くとだいたいの人は俺のことを警戒するようになる。自身の過去がバレるからだ。後ろ目たい過去の一つや二つ生きていれば誰しもが持っているだろう。そのため、俺の恩恵を知ると大抵の人は距離を置く。

 今回もそうだと思っていた。でもアリシアは俺の恩恵を凄くいいと言ってくれた。

 何故だか心が軽くなったような気分だ。


 俺は自身の恩恵のせいで家庭を崩壊させてしまったことがある。そのせいでこの恩恵に対するトラウマのようなものがあった。だけどアリシアのおかげで俺は何故考古学者となったのかを思い出させてくれた。あの頃の純粋な気持ち。わくわくとする高揚感とドキドキとする緊張感。大人になっていろんなことを知り、勝ってに擦れていた俺は子供の頃の気持ちを思い出させてくれた。


「……ありがとう」


「何が?」


「気にしなくていい。一人言だ」


 ロープを引っ張り、重しを持ち上げる。そして俺は手袋を外し直接素手で重しに触る。


 ーーー《過去看破》ーーー


 重しに触れた手が一瞬輝くと脳を揺さぶられるような不快感が起きる。恩恵を使った反動だ。少しの過去を見るだけでもこれだけの反動が来るコスパの悪い恩恵で本当に嫌になる。

 不快感と込み上げてくる嘔吐感に苛まれながら、見たこともない鉱石で作られた壁に古代文字が刻まれている空間が見えた。灯りもないはずの地下の空間は何故だか明るかった。


「うぅっおぇ……」


「ちょっ、ちょっと大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。それより見えたぞ、うぇっ」


 込み上げる嘔吐感をなんとか抑えこむ。アリシアを見ると不安そうな表情で俺の顔を除きこんでいる。そんなアリシアの不安そうな表情を掻き消すように俺は笑いながら言った。


「あったぞ、古代遺跡」



-3-



 俺の家は貧しくもなければ裕福でもない、ごく普通の家庭だった。俺が恩恵を持っているのを知った両親は喜んでいたのを覚えている。俺の恩恵の副作用を知ってから手袋を着けるように言われて今でも着けている。というか着けてないと俺の身体が壊れてしまうので着けざるを得ない。


 ある日、町にある大樹はいつからそこにあるのだろうと思い恩恵を使ったことがある。何千年と言う昔からそこにあった大樹の過去を除いていたら古代の文明がそこには見えた。

 見たこともない奇抜な服装。夜中なのに何故か昼間みたいに明るい街並み。見るもの全てが新鮮だった。

 子供の俺は副作用のことなんか頭から抜け落ちていた。酷い頭痛や込み上げる嘔吐感全てを無視するほど夢中になって過去を見ていた。その時に俺は古代文明の虜になっていた。

 その後に溜まった反動が来て一週間は寝たきりで両親には心配をかけた。

 寝たきりの状態から起きた俺は両親を見るやすぐに「俺は将来考古学者になる」と言った。


 あの時に見た景色が忘れられなくて、ずっと追い続けている。あの頃の気持ちを忘れていた今でも。


 俺の気持ちが伝わったのか両親は俺にたくさんの本を買ってくれた。貧しくはないが本は高価なものだから買ってくると生活が苦しくなってくるはずだ。子供の頃は分からなかったが今思えば両親は俺のために頑張って節約したり、仕事を増やして稼いでくれていたのだろうと今なら分かる。

 ここまで育ててくれた両親には感謝しかない。


 そんな順風満帆な家庭が崩壊したのは数ヶ月後のことだ。


 たまたま手袋を外した時に父親に触れてしまった。そのときに過去の記憶が見えてしまった。この頃はまだ恩恵の力を制御しきれていなかったせいで偶然見えてしまった過去。

 まだ九才になったばかりの俺にはその見えてしまった過去の意味は理解できていなかった。


 父親が仕事に行って帰ってくるのが遅いある日、母親が「今日もお仕事頑張っているのね」と呟いた時に俺はこの間見えてしまった過去の話をする。


「お父さん、綺麗なお店で働いているよね」


「綺麗なお店?」


 俺の言葉に母親は不快な表情はして俺に聞き返してくる。

 この時の俺はわるぎなしに喋ってしまった。過去の記憶を。


「このお店だよ。お母さんより若い女の人と入っていってた」


 母親にお店に案内して欲しいと言われお店に案内した。ちょうどそのお店から父親と若い女性が二人で出てきた。その光景をみて母親は肩を震わせて立ち尽くしていた。

 父親も俺と母親がいるのに気が付いたのか酷く焦っていた。

 父親は不倫をしていた。幼い俺にはその意味など分かるはずもなく、ただわるぎなしに恩恵の力で見た過去を喋ってしまったことで家庭を崩壊させてしまった。


 その後、父親と母親は離婚した。


「何でお父さん、どこかに行っちゃうの?」


 自分が何をしたのか分からずにただ父親と離ればなれになりたくはない俺は目に涙を浮かべながら問いかけた。

 父親は俺の方を見てが何も言わずに去っていった。


 不倫や離婚の、この時のことはもう少し大人になってから分かった。自分がしてしまったことも。

 父親は最低な人であったがもっと別の方法があったのではないかと今ならば思う。まだ世の中のことを知らな過ぎた。

 この辺りからだろう、自分の恩恵はいいものじゃない、誇らしいものじゃないと、こんな力持たずに生まれれば良かったと思い始めたのは。

 

 この後に考古学者となり多種多様な人たちと触れ合う中で様々な人の闇をみてしまい、大人になるにつれどんどん心が擦れていき考古学者を目指した理由もあの時の気持ちさえ忘れていた。


 それなのにアリシアはこんな恩恵を、いいと言ってくれた。

 

 「凄くいい恩恵じゃない!」


 この言葉にどれだけ救われただろう。


 子供のころに心を奪われた古代文明のあの景色を初めて見た時のように今はワクワクが止まらない。この流砂の下にある古代遺跡の謎を解き明かしたくてじっとしていられない。


 ──だって俺は考古学者だから。


 レイトの擦れた心を写したような濁りった目は夢を見る子供のようなキラキラとした澄んだ瞳に変わっていた。



 -4-



「ぺぇっ、口の中に砂はいっちゃった」


「それより見ろよこの壁、どんな材質で出来てるのかわかんないけど発光している。地下なのに全然暗くない」

 

 失われた古代文明の技術を使ったであろう外壁や床、天井は発光しているが眩しくはなく場所も相まって幻想的だ。どんな材質なのかと思い壁を叩いてみると金属音に似た甲高い音がする。金属ではないように見えるが金属ににたものなのか、発光する壁に描かれている文様は関係あるのかなど謎は尽きない。


「わぁ、きれい」


 アリシアも古代遺跡の幻想的な風景に見惚れていた。


「本当に古代遺跡があったわね」


「ああ、さっそく調査していこうか。まずは中をくまなく探索だな」


 俺がそういうとアリシアがこちらを見て何故か笑った。

 何か変なことでも言っただろうか。


「あははっ……ごめん、ごめん。レイトっていつも覇気のない顔してたのに古代遺跡を発見したとたんに生き生きした顔してたからつい」


 確かに顔死んでたかもしれないな。疲れてたのもあるだろう。でも、俺一人で見つけてもここまでの高揚感はなかっただろう。アリシアが思い出させてくれたおかげだとは恥ずかしくて直接は言えないが。


「考古学者が未発見の古代遺跡を見つけたらテンション上がるだろうよ、それは」


「それもそうね。それじゃ行きましょうか」


 俺とアリシアは古代遺跡をくまなく探索する。見たこともないものや財宝もあり、持てる分だけ持ちかえるようにする。残ったものはまたここに取りに来ればいい。

 そして探索中に目算で三メートルはある巨大な動く機械のようなものがこちらを見ていた。


「なっ、なにあれ?」


「分からない……けどなんかやばそうなのは分かる」


 人の形に似た機械、人というよりは絵本とかにでてくる人型の怪物のような見た目といった方が正しいかもしれない。その機会はこちらを見て恐らく目の部分になるであろう場所が赤く光っていた。


「シンニュウシャ、ハッケン。シンニュウシャハ、ハイジョスル」


「何か機械が喋ってるんだけど。というか今、排除するって聞こえたんだけど……」


「俺もそう聞こえた……逃げた方がよさそうだな」


 機械が喋ったことや、古代文明に作られた機械がまだ動いているとか驚きの連続だが今は逃げた方がいい。古代文明の超技術で作られたものは現代の人の理解が及ばないことは当たり前だ。

 逃げようとした俺たちの後ろからその巨体からはあり得ない程の速度で襲い掛かってくる。


「レイトっ!」


 ーーー《重力転換》ーーー


 アリシアに捕まれ、天井へと落下するという重力を無視した動きで間一髪のところで避ける。

 古代文明の機械はまだまだこちらを諦めてはいないみたいだ。古代遺跡の天井までは届かないのは分かったのか背中から翼のような形をした突起物が飛び出してきたかと思えば宙を飛んだ。


「はあぁっ!?」


「あいつ、なんでもありだな。オーパーツの類であるだろうけどあれ、実は古代兵器って言われても不思議じゃないくらいに殺意高くないか?」


「少し黙ってて、喋ってたら舌かむわよ!」


 そういうとアリシアは天井を走ったり壁を走ったりと空間を三百六十度使った縦横無尽に逃げ回る。それでも古代兵器(さっき名称)との距離は離れるどころか近づいてくる。

 だが、さすがに修羅場を潜り抜けたきた冒険者だけあって古代兵器の攻撃を躱し続ける。

 

「しつこいなっ、いい加減に離れろ!」


 アリシアの速度より早い移動速度の古代兵器は脅威だ。小回りや緩急を巧みに使っているから避けられているがアリシアにも限界はある。

 どうしたものかと思っていると古代兵器は口を大きく開く。途端に背中に悪寒が走る。


「アリシア、右の通路に飛び込めっ!」


 俺の言葉に横へ緊急回避したアリシア。先程までいた通路が光ったと思ったら爆風が押し寄せてきた。


「よくわかんないけど、今のをくらったら死ぬってことはわかったわ」


「そうだな……アリシア、少し待ってくれ。これであの古代兵器をぶっ飛ばしてみる」


 そう言って俺は背中に担いでいた大きな鞄の中から歪な形をした大きな銃のようなものを取り出した。昔、発見したオーパーツだ。名をプラズマ砲というらしい。

 俺はプラズマ砲を両手に持ち古代兵器がこちらの通路にくるのを待つ。銃口には青白い稲妻が集まり、ブウゥゥゥゥンという重低音が鳴り響く。

 古代兵器がこちらの通路に入ってくるのを見計らって溜まったエネルギーを放出する。


「くらえ、古代兵器。お前と同じ時代の武器だ」


 放ったエネルギーは古代兵器にあたり、けたましい轟音をたてて吹き飛んだ。

 俺の恩恵により古代文明に武器や道具といったものの扱いは俺が一番上手いと言っても過言じゃない。なぜなら俺はその時代に実際使っていた過去を見ることが可能だから。かといって射撃の技量があがるわけではないが。


「あはは、なによそれ。そんなものあるなら早く使いなさいよ。あいつ思いっきり吹っ飛んだわよ」


「溜めに少し時間かかるから俺の技量だとあんなに早く動き回る物体に当たんなかったよ。この通路のおかげだな」


「なるほどね、まあ取り合えず退散しましょう。この遺跡にいてまた別のが来たらやばいでしょ」


「そうだな、急ごう」


 俺たちは急ぎ入ってきた流砂の入り口へと向かう。


「シンニュウシャ、ハイジョスル」


 古代兵器は先程の攻撃が効いていないのか無傷のままこちらに向かって来る。


「おいおい、嘘だろ。さすがにそれはねえだろ」


「とにかく逃げるしかないわね」


 アリシアに捕まり流砂の中を逆方向にの突き進み脱出する。


「あいつ、古代遺跡から出たら追ってこないとかそんな条件ないかな?」


「分からんけど……、そんな条件はないみたいだぞ」


 話の途中で流砂の中から古代兵器が飛び出してきた。


「あいつどこまで追って来るんだろうな」

 

 古代兵器と地獄の鬼ごっこはまだまだ続きそうだ。


「あそこまで行けば何とかなるかも……しっかり捕まってて」


 何かいい考えでも思いついたのか、アリシアは重力の向きを前方に変えて加速する。

 向かった先には見覚えのある巨大な穴がいくつもあった。


「お前、それ、タイラントワームの巣じゃねーか!しかも大量の!?」


「こいつらを古代兵器にぶつけるのよ。化け物の相手は化け物にやってもらいましょ」


「その前に生きてここを通れるのかが心配だよ!」


「任せなさい。これでも数々の修羅場を潜り抜けて来た冒険者よ」


 アリシアの速度は落ちることなく加速し続けている。加速し続ける速度のままタイラントワームの巣を突っ切る。時には回避し、敢えて通るタイミングをずらす緩急に加えて、急激な方向転換。アリシアは見事にタイラントワームの巣を突っ切る。


「タイラントワーム、サイコウランクノマモノ。ジャマヲスルナラハイジョスル」


 古代兵器はタイラントワームの群れに引っかかり身動き取れなくなっている。


「お前もやっぱり化け物側の奴なんじゃ……」


「いいから今の内に砂漠を抜けるわよ」


 俺たちの脱出劇は見事に成功した。



 -5-


 

 木造の喫茶店の中はコーヒー豆を挽いた香ばしい香りが漂う。


 俺とアリシアが出会った喫茶店『黄昏』。このレトロで独特な雰囲気を持つ喫茶店の中で二人は談笑していた。


「あの時は本当に死ぬかと思ったわ」


「あのくらいで情けないわね、男でしょ」


「お前もびびってたろうが」


 あの古代遺跡の探索から時が経つのが早いことにもう一ヵ月が経っていた。あの後、古代兵器が俺たちのことを追って来ることはなかった。タイラントワームの群れにやられたのか今だに戦っているかのどっちかだ。

 古代遺跡を発見した功績でアリシアは高位の冒険者になれたそうだ。俺のも報酬を半分分け与えてくれた。それこそ一生遊んで暮らせるだけの金額を。

 今大量の冒険者を調査に向かわせるため、腕利きの冒険者を集めているらしい。なんでも軍隊も派遣するそうだ。古代文明の超技術が手に入るとなれば国も躍起になってくるだろう。

 まあ、俺は遺跡の謎が解ければそれでいい。というか俺が持ち帰った古代遺跡の中にあったものから恩恵で過去の記憶を見たところまだ見つかっていない古代遺跡が沢山あることが分かった。


 何故そこまで古代遺跡を作ったのかは定かではないがまだまだ解明されていない謎が沢山あるのは良いことだ。その沢山の謎を解明してくのが俺の仕事だからな。


「まあ、それだけの遺跡があるなら今後、冒険者になる人は増えてきそうね」


「そうだろうな、今回俺たちがみんなに夢を与えちまったからな。古代遺跡を見つけさえすれば一生遊んで暮らせるって国中で大騒ぎしてるよ」


 こうした他愛のない話をしていると頼んでいたコーヒーが届いた。二つも。


「あれ、お前も頼んだの?」


「そうよ、頼んじゃ悪い?」


「いや、コーヒー飲んでるイメージなかったからさ」


「レイトに合わせただけよ。ほら私たちあれだけの偉業を成し遂げたのにまだ祝杯もしてないじゃない」


「祝杯ってコーヒーで?」


 確かにあの後、アリシアは疲労で倒れ俺も古代遺跡を発見したことでいろんな偉い人と会ってたからアリシアと会う時間がなくこうして初めてあった場所で一ヵ月後の再開となってしまった。

 まだ祝杯をしてないからここでしようという事なのだろうが別の店にすればよかったんじゃないかと思う。


「いいから、ほら、カップ出しなさい」


 言われるがままにコーヒーカップを前に出し、喫茶店の中にキィンというカップの合わさる音が鳴る。

 

 マナー的にどうなのかはひとまずおいといて本人が嬉しそうだしいいか。これから数々の冒険を繰り広げるであろうパートナーとの交流は大事にしておかないとな。


 二人はコーヒーを一口飲み余韻に浸る。


「にがっ!」


「だから何でコーヒーで祝杯しようと思ったんだよ」


 どうやらアリシアはコーヒーは飲めないらしい。



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