終わらないライブ
遠い地のライブハウス
無観客の配信ライブ
歪んだギターの音色と
空気を切り込むドラムの音
こみあがった怒りと
どうしようもないもどかしさと
外せないかなしみを
えぐり出しながら
ぶつけるボーカル
匂いのない
整えられた音楽に慣れた耳の穴は
衝撃で大きく開いた
遠い地のライブハウス
命剥き出しの叫びは
ミラーボールの下で
波打ち舞い上がり
汗、飛沫、飛び散らせながら
これでもか!と
カメラの向こう側に
手を伸ばし
こちらの心を鷲掴む
無駄で何が悪いとよ!
無駄で何が悪いとよ!
そりゃよ、そりゃよ、世間の人から見たら
ロックもライブハウスも
無駄なことかもしれんたい
でもな
そこでしか生きられん奴がおるんたい!
そこでなら輝ける奴がおるんたい!
そこでしか救われん奴が少なからずおるんたい!
轟く叫びは画面から突き出て
胸の真ん中を掴んで震わせる
いつか見た誰かではない
いつか聞いた音ではない
いつかもらった言葉じゃない
ボーカルの魂の底から
噴きあがったものが
目の前で炸裂している
掻き鳴らされる命!
ドラムは高まる鼓動
鮮やかに切り刻まれる音
汗とともに弾かれる音
疾走するリズムには
甘さも都合のよさもない
どこまでも鋭利に研がれた音の
切れ味
言葉の皮をかぶった
罵詈雑言批判非難の
礫を掴んで引き込んで
共倒れになることも
厭わない
潔さが空を切った
届かない拍手の歯がゆさ
叫べないもどかしさ
ひっくり返った
ノンアルコールビール
湯気立つ画面の向こうと
換気扇の音響く部屋
同じ時間が流れている
真っ赤になった手のひら
で
絞り出た涙を拭いた