第2話 身体測定・体力テスト「前編」
なんか少し長くなりそうだったので、前編と後編を分けました。
読んでもらえたら幸いです!!
2校時目の数学の時間。
昨日寝てないから眠い。瞼を必死にあげつつ、俺は休み時間のことをボォーっと考えていた。
ホームルーム直後の教室は騒がしく、ユミに話を聞く時間はなかった。いや、正確に言うならば、俺もユミに話を聞くことができなかったのである。
先生の短い話が終わるのを、まだかまだかと待ち伸びていたクラスメイト達、しかし先生が教室を出たと同時に、2つのグループに分かれた。
1つは、ユミにいろいろ話を聞く、主に女子が中心のグループ。
そしてもう1つは、ユミに抱き着かれた俺を睨みつける、主に男子のグループだ。
前者においてはまだ楽だろう。みんな転校してきた人への接し方で、仲良く話をしている。俺もそっちのグループに入りたかった...。
しかし俺は後者のグループ、それもその話の中心人物だ。男子全員からの熱い睨みとの激闘の末、何とか誤解は解くことができた。
しかし、それだけで休み時間は終わってしまう。
1校時目が終わった休み時間。
俺はさっきのような失敗をしないよう、後ろの席にいたユミを連れ、人気が無い階段に走って行った。
「ふぅ、ようやくユミとまともな話ができる。」
俺は自分から話を持ち出し、自分が有利に質問できるような状態を作った。
階段で2人見つめ合う。まるで告白でもする前の友達のように。
それに恋心があるのかと聞かれれば否だが、女子と誰もいない場所で目を見て会話するのだ。それも初対面でめっちゃ可愛い子と。当然、緊張する。
相手が緊張しているのかはわからないが、頬が赤い。おそらく、顔に出やすい性格なのだろう。そして、俺に至っては心臓がバクバクだ。みっともない...。
話がそれてしまった。えっとなんだっけ?ユミと俺の関係を聞きにつれてきたんだっけ?
「それで、さっそく本題なんだけど..、俺たちの関係ってどんな感じ..だっけ?」
もしもここで、実は嘘でした!なんていう親父の嘘だったら黒歴史だ。こんなに必死に頑張った俺の努力が無駄になってしまう。この子が俺の結婚相手、本人じゃなくてもだ...。
だから、結婚相手以外には悟られないように、自然な聞き方をするように心がけた。うん、自然には話せなかったんだけどね。
そして気になる相手の返答は、
「え?普通に今日知り合った人だけど...。何?ひょっとして告白でもしようとした..?」
意地悪な笑みを浮かべながらユミは答える。あとから考えると、正直少しウザかった。
けれどそれ以前に、ここで失態をさらして黒歴史ができないように、自然な行動を取るので精いっぱいだ。
違う人だった..?いや、写真で見た人と同じだ。つまり親父の嘘..?同窓会で転校してくる人を知ったから、少々からかった..とか?でもやっぱり親父が嘘をつくとは思えない。それに朝の抱き着きは何だったんだ?
動揺を隠せないで、頬を赤くしながら話の続きを必死に考えてる俺を見ると、ユミは悪ガキのようにくすくすと笑いながら話し出す。
「..嘘!ちょっとどんな反応をするのか気になっただけ。あなたと私の関係は、ダーリンとハニーでしょ?」
完全にからかいながら俺に言った。いや、最後のほうは爆笑してた。
俺の顔は真っ赤に染まり、でも少し安心した。黒歴史はできないし、嘘をめったにつかない親父の言葉は正しかったのだ。
けれど、さっき抱き着いてきたと同時に言った、ツンデレ的な行動は何だったのだろう?ツンとは無縁な態度だし、デレデレもしていない。余りにも恥ずかしすぎてパ二クった...とか?
ゴミみたいに馬鹿な脳みそでは、結論を出すことはできない。
そして話を進める。
知らなかった話を聞きつつ、2人の意見を出し合った結果、今後の関係はこのようになった。
1.学校ではこの関係を隠す。
2.学校では、友達として接する。
3.ユミの家は現在アパートの1室で1人暮らし。俺の家は今日から俺1人。一緒には暮らさない。
大まかにいえば、この3つだけだ。
3に限って言えば関係というよりも今の状況だけど...まぁいいや。
1・2は当然だ。ばれたらみんながしつこくなるのは間違いないし、俺の友達は消える。
お互い文句はなく意見は一致。
そして2校時目の数学が始まった。
そんな出来事があり、ボォーっとしている今に至る。
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前の席に座るセイ君は、確実にボォーっとしている。私は確信していた。だって黒板を見ていないもん。っていうか机に顔を伏せてるもん。さっき話したときに目にクマがあったし、きっと昨日は私のことを考えて眠れなかったのだろう。
逆になぜ私はピンピンしているのか。それは、次が体育の時間だからだ。2時間続けて。
おそらくは身体測定と体力テストだろう。毎年すべての学校が、入学(または進級)して2日目というこのタイミングで仕掛けてくる。
私はこの学校にきて間もないし、運動は大得意だ。つまり、友達をたくさん作るチャンスなのである。
体力テストの点数で男女問わず学年で1番になり、友達をたくさん作る。それが友達をたくさん作るための作戦であった。まぁもう休み時間にたくさんの友達ができちゃったんだけどね。だから今度は親友を作りたい。
体力テストの点数で男女問わずに1番になるときに訪れる障害。それは恐らく、セイ君だろう。彼はあまり積極的な性格、いわば陽キャではないが、友達は普通に多い。それはなぜか?私は、彼の運動神経にあると思う。
小学校時代、私はセイ君に1度も運動で勝てたことがない。勉強では余裕で勝てるんだけど..運動に関して言えば、彼はセンスの塊そのものだ。一体あの筋肉がなさそうに見える体の、どこにそんな力があるのやら。
けどそれは小学校時代の話。今の私を見くびらないで欲しい!!そう心に言い聞かせて意気込む。
数学の授業が終わる。
皆、体操着に着替え終わり、男子は先に体育館、女子は先に保健室へ向かう。
女子と男子は別行動で、女子は身体測定が先なのである。
あいうえお順に、体重、身長、カップサイズを測るので、イシカワが苗字である私が1番最初だった。
「体重、48kg...、身長、160cm、バスト...【ピーッ 規制】!?」
測ってくれていた保健の先生がびっくりしたように驚く。いや、びっくりも驚くも同じ意味か...。
先生が驚いた理由。それは、理想的なその体型だった。
正直私も驚いている。私のカップはF、そのカップだと、この身長にこの体重は理想そのものなのだ。
ほかの女子たちも驚きを隠せないでいるようだった。3年生になって転校してきた人がこんなんだったら、私も普通に驚いてしまう。
そして何より、嬉しかった。
そんな中、
「いいなぁ..、てか次私が測るんだから、もうちょっとハードル落としてくれたって良かったじゃん...。ひどいよぉーもう。」
気軽なノリで、私の後ろで待っていた女子が言った。セイ君の親友であるユウキ君の後ろの席に座る、オオカワ=カオリである。眼鏡をかけているからこそ引き立つその顔立ちは美しい。全体的に小柄な子だが、気軽に話せる優等生といった雰囲気だった。
休み時間に私に話しかけてこなかった、唯一の女子である。他の子が言うからには、気軽に話せるけれど勉強には抜かりがなく、成績は常に学年トップなんだとか。正直うらやましい。
明るい性格なのに転校生に話しかけてこなかったのは不思議だけど...。深く考えるのはやめにした。
勉強は苦手ではないが、私は中の下といったところだ。ぜひテスト前には、一緒に勉強したい人である。
にしてもその体は酷いって言われたって...。身長も胸も小さくできるものではない。大きくはできるけど。
私が反応に困っていると、
「うそうそ冗談だって!そんな、小さくできるものでもないし、私が頑張るから。後さ、今度勉強教えてあげる代わりに、どうしたら胸が大きくなるのか教えてね...(ニヤニヤ」
何を妄想したのかは秘密であるが、私の顔が赤くなった。
顔に思ったことが出やすいのが私だ。自分が有利なときは調子に乗って攻めるのに、恥ずかしくなるとグダグダになってしまう。それが良いところという人もいるが、自分では治したいところである。
それにしても実に気軽に接せる子だ。私はこの子と友達になりたいと思った。
それなら、この後体育館と校庭である体力テストを、一緒に回ろうと誘ってみてはどうだろうか。
私はセイ君のように、スポーツ陰キャではない!陽キャだ。多分...。ここは、この話の流れを利用してさりげなく誘ってみよう。
「カオリさんっ。こっ、この後の体力テスト、一緒に回らないっ?」
たどたどしくなってしまった...!
しかし、私がグダグダになり焦っているのを確認すると、何か嬉しいことがあったかのようにカオリさんはこう言う。
「ふふっ、カオリで良いよ。そんな緊張しないで、同じクラスの一員なんだしさ。じゃ、女子は全員検査終わったみたいだし、体育館に行こうか!」
その瞬間、私の心はホッとし、真の天才とは、頭がいい人の事ではなく、空気を読める人なのだなぁと思った。
次に、体力テストへと移る。
先に体育館でテストをしていた男子は、保健室に行く前に校庭で50m走をしていた。
体力テストは、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、50m走、立ち幅跳び、ハンドボール投げの順番で行う。
言うまでもないが、50m走以降は校庭である。
ほかにも私が1番得意な、持久走とシャトルランのどちらか(友会高校は持久走)があるが、それは別の日だ。
体力テストの途中、カオリが騙された!っといった顔をしていたが気にしない。どうやらカオリは運動が大の苦手のようだった。
私は、テスト中は本気で取り組んだけれど、次の種目への移動中はカオリのペースに合わせてあげた。
しかしそれでも、カオリは騙されたことを根に持っているようだ。ハンドボール投げの時なんて、
「そんな細い体のどこに、そんな力があるの!?」
と言われた。なんか既視感を感じたが気にしない。
こうして身体測定の1日目を終え、残るは持久走のみとなった。
それぞれ男女別に、種目ごとに1~10点が振り分けられる。私の目標は70/80点を超えることだ。男子のほうが点数配分は厳しいが、男女の運動能力比から考えて仕方ない。
合計点数でセイに勝ち、あいつをからかってやる!あれぇ?なんか趣旨が変わってきているような気がするけど...?まぁ気にしないでおこう。
こうして私は、5・6学時目も頑張り、帰りのホームルームを終えるのだった。




