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T・C!  作者: 夏木 岳
3/3

お終いお終い

 continueしまして。


 針井くんと間開くんは二人、キラー・クイーンを追い、やつが消えていった階段を上がりました。二階に上がるとすぐに「錦将会立花組」と書かれた部がありましたが、まるで見えなかったように足早にスルーしました。

 二階の端まで一本道。三階は誰も使っていないはずなので、ここにいるのでしょうか。少しづつ進んでいくと、「あの部」を見つけました。

「これ、先生が言ってた部じゃ……」

「ああ。どうもにおうな」

 キラー・クイーンの消えていった二階。そして今日の目標だった部「ネガティ部」

 二人はここがゴールなんだと感じました。

「間開、入るぞ」

 恐る恐る扉に手を伸ばすと、突然勢いよく開き、男の子が飛び出してきまして。

「あっ!」

 っと言う間に針井くんにぶつかりました。男の子は小さく、転んでしまい、体重のある針井くんはびくともしませんでした。

 びくともしないですがびっくりしました。ボタボタ、と赤いものが針井くんのお腹から垂れてきたのですから……

「ハリィィィィ!」


 閑話、映研。大辻くんは映画を見ていました。ニーナちゃんと久米先輩に洗脳されそうなほど説明を受けたあと、流れるようにシアターの前に座らされたのです。


 さて針井くんはどうなったのでしょうか。男の子にぶつかった途端に赤い赤いものが流れてきたのですが、実はただの染料だったそうです。ネガティ部とは、写真を意味するネガとお茶を意味するティーからなっているそうで、衣服の製作などもしているそうです。制服が真っ赤に染まった針井くんはなにやら素敵なスーツを着せられました。

「ごめんなさいね、うちの子が迷惑かけて」

 この方が部長でしょうか。丁寧な言葉使いで謝っています。しかしなんという格好でしょうか。深紅のドレスを身にまとっています。

「貴人、なつき、二人にケーキでも食べさせてあげて」

 ドレスの子は一年生部員二人に指示しました。彼女は偉そうともとれそうですが、むしろ気高いようでした。

「私は渦藤愛梨佳。君にぶつかったのが蜂須賀修次で、ケーキを運んだのが草間貴人と飾磨なつき。部長の家侘千代子は今席を外しているの」

「一年三組、針井と間開」

「あら、君たちがそうなの」

 愛梨佳ちゃんは一つのアルバムを取り出すと、二人に渡しました。それにはいろんな写真があり、ネガティ部員全員が個性的で素敵な服を着て写っておりました。女の子はどれもすごくかわいいし、男の子はどれもクールです。どの服も高そうで、細かく縫ってあります。すべてネガティ部の作品なのでしょうか。

「こ、これは! 間開!」

 そしてアルバムの最後にデザイナーのサインがあり、それに気付いたのです。それには日呉洋子、高井草壁、ザ・ブーツ、マキスタイル、世界最高峰超美人ドレッサーなつき、そしてキラー・クイーン。

「誰がキラー・クイーンかは言わないけれど。これで満足したかしら」


 日が暮れて、あるファミレス。

「しかしキラー・クイーンがあんなに簡単に見つかるとはな」

「誰かはわからんかったけどな」

「いや、十分じゃないか……おお、大辻が来た」

 二人はキラー・クイーンを発見したのと、かわいい子がいっぱいいたことを話しました。

「俺は……」

 この話の主人公のくせに一番大事なところに立ち会えず、さらにケーキも食べれず。宗教じみた映研勧誘をずっと受けて出番も無くなり、「ローマの休日出勤を白黒字幕なしで見せられて……」


 さらにさらに、実はニーナちゃんと久米先輩が付き合っていることも知ってしまったのです。



 次の日。大辻くんは一応ネガティ部へ向かいました。紅茶の香り漂う素敵な空間でした。

「昨日いなかった人ですね。私は綾瀬万輝。まだみんな来てないから、ゆっくり待ってて下さい」

 可愛らしい小さな子です。彼女に接待されながら少しすると、部員が一人入ってきました。

「アリちゃん、昨日来なかった子来てるよ」

 すすす、すごい可愛い子がきました。むしろ美しいです。なんとたとえましょうか。

「私は渦藤愛梨佳。要件はこれでしょう?」

 針井くんたちと同じく、アルバムを渡しました。キラー・クイーンがいることはわかりましたが、もうなんだかどうでもいいようです。むしろ愛梨佳ちゃんのほうが気になります。まったく惚れっぽい性格ですね。 

「お、俺は大辻健! よろしく!」

 不思議なプレッシャーにどもりながらも、大辻くんは愛梨佳ちゃんと会話することができました。

 五時を回ると、万輝ちゃんは習い事だそうで帰っていきました。今日は部員がほかにいません

。つまり愛梨佳ちゃんと大辻くん、二人きりです。

「あ、あのさ」


 日が暮れて、あるファミレス。デジャヴ。

「大辻の奴遅いな。電話してみようぜ」

 ぷぷぷ、ぷるる。大辻くん出ません。何コールしても出ないので、切ろうとしましたその時。通話状態になりました。

「おう大辻。どうしたんだ? まさかまだネガティ部か?」

「彼女はキラー・クイーン」

「え! なんだって!」

「俺は一二九人目……」

「おい大辻、大辻!」

 ぷつっ。意味深な言葉を残し、電話は切れました。その日はそれ以上繋がりませんでした。

 次の日、大辻くんは学校を休みました。何があったかは、本人が多くを語らなかったためにわかりませんでした。しかし、ひとつだけ。なんとなくわかったことがありました。


 彼はあの日、誰かに告白したようなのです。   


 キラー・クイーンの噂には真実があったのでした。


 fin


さてTC完結。このお話は長くなりそうな連載作品「トラジカメディエ」の番外的作品となりました。トラジカはそのうち日の目を見るでしょう。コメディは難しいものですね。しみじみ思いました。



おまけ。


大辻くん。そのとき勉強してたものからできた名前。大津事件。なんだか重たい由来。


針井くん&間開くん。映画「ホームアローン」から拝借。あの子可愛いよね。いや可愛かったよね……



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