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T・C!  作者: 夏木 岳
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見つけた見つけた

 それは良く晴れた朝でした。じりりと目覚時計が鳴り響いて、布団がもそりと動きます。緩やかな動きで目覚時計を止め、スロウに起き上がる、緩慢な動作でベッドから出ました。

 彼女は部屋に日を取り入れ、ぐぐっとのびました。眩しい光に少し目が眩むけど、眠気はばばっととれました。

 そのまま二階の自室を出て居間へ。階段を下るとき、ベーコンと珈琲がおいしそうにふわりとにおいました。

「おはよう、愛梨佳」

「おはようございます、菊子お姉さま」

 食卓につくと、丁度トーストが焼き上がったようです。菊子と呼ばれたセクシーな女性はトーストを二枚皿に移し、愛梨佳という可愛らしい女の子の前に出しました。

 きつね色に焼き目のはいったトースト。純粋な黄色のスクランブルエッグに、こんがり赤色ベーコン、しゃきしゃき緑色のレタス。温かいミルクも添えて。

「いただきます」

 

 渦藤家から代わりまして大辻家。両親は朝がとても早いので既にいません。

 大辻くんはがばっと起き上がり、うわっと部屋を飛び出ました。いそいで顔を洗って歯を……美しくないので省略。穏やかなやさしい朝じゃないのでとにかく省略。

 省略〜学校に着きました。

「なあ間開。DSって何の略だ?」

「でら凄い。じゃないか?」

「おお、そうだったのか!」

 既に学級の皆は教室にいました。HR前の談笑中です。HRとはもちろんホームルームのことです。ホームランでもハードロックでもありません。

 大辻くんは挨拶を済まし、間開くんと針井くんにキラー・クイーン捜査のことを話しました。

「そうそう、昨日先輩に聞いたんだけど、担任の由紀ちゃんがキラー・クイーンかもしれない」

 昨日の久米先輩の言葉によるば、彼女は女王様だそうです。キラー・クイーンと女王様。何かにおいます。

「じゃあ本人に聞こう」

「そのとおり、それがいい、そうしよう」

 針井くんと間開くんはストレートに攻めるタイプでした。

 HRが終わり、三人は由紀先生が職員室へ戻っていくのを引き止めました。先生はキラー・クイーンですか? と何の脈絡も無く直球を投げました。キラー・クイーンがどんなものなのかも知らないのに、いい度胸です。先生は少し戸惑って、わからないと答えました。

「でもでも、女王様は知らないけどお嬢様なら知ってるよ」

 「じょおう」と「おじょう」何か関係があるのでしょうか。発音的には似ていますが、とりあえずこれしかヒントが無いのだから従うしかありません。三人はお嬢様のことについて聞きました。


 さて、放課後です。今日は三人揃って動きました。いざ部活棟へ。

「でもよ、本当にそんな部活あるんかな」

 その部活はまだ同好会ですが約七名所属しているといいます。二年生が一人、あとは一年生。そして部員全員が月ヶ丘中学卒業という謎の部活です。名前はまだ出し惜しみます。

 浪曼探求会、UMA研、革新倶楽部……奥へ進むに連れて怪しく、また雰囲気も変わってきました。強い敵とか出そうです。

「……」

 通路の先の角に誰かいる。影に気付いた間開くんは針井くんの手を小さくつつきました。そしてまた針井くんも大辻くんの背中をつまみました。ぴたり、と立ち止まり三人。目線は泳がせず、真っ直ぐをみています。でもこの不思議で不気味な空気は、今すぐにでも走り出したいくらいです。

 おや。影が姿を表しました。歩いて前を横切っています。ですが全身真っ黒です。向こうが薄暗いのもありますが、本当に顔も含めて全身真っ黒だったのです。大辻くんはその姿にピンときました。指名手配犯ではないけれどやつです。きっとキラー・クイーンのです。

「針井、間開、キラー・クイーンだ!」

「なんでわかるんだ?」

「そりゃあ黒塗り野郎は犯人って決まってんじゃねえか。名探偵ロナン君知らねえのか」

 それでは実は犯人ではないという人は白塗りなのでしょうか。なんだかよくわからない理屈ですが、とりあえず走って捕まえてみるようです。しかし、黒塗りはすぐに通り過ぎてしまいました。

 いざ角に差し掛かる。その時、がらりと教室の扉が開き、女の子が出てきました。

「高槻先輩!」

 眼前に立ち塞がるのは、金髪っ子のニーナちゃんでした。

「あらこんにちは。大辻くん。お友達さんも」

 ある意味やっかいな相手です。大辻くんにとっては新・憧れの先輩なのですから。キラー・クイーンを追いたいけれども、お話もしたい。

「大辻くん。ニーナお話があるんだ。来てくれるよね」

「大辻、キラー・クイーンは目と鼻の先だ」

 葛藤します。恋と好奇、どちらをとるのか。大辻くんは一人、二つはとれません。

「大辻くんはニーナを偉ぶって信じてる」

 なんてくすぐったい言葉でしょう。

「目を覚ませ大辻。死んでいった者たちの為にも、俺たちはやらなきゃいけないんだ」

 いったい誰が死んだというのでしょうか。物騒な話です。

「大辻くん。来て」

 またギュッと手を握れば決め手になったかもしれません。

「大辻。あの日の般老心経を忘れたか!」

 そんな話を書いた覚えがありません。仏葬な話です。

「俺はキラー……」

 クイーンを。と言いかけました。誰も死んでないのに心が動いたようです。多分フレーズに弱いタイプなのでしょう。

 しかし、ニーナちゃんは突然言い出しました。

「大辻くん。昨日、私の珈琲牛乳飲んだよね」

 なんでしょうか。私の珈琲牛乳。

「ま、まさか」

 昨日久米先輩にもらったものが思い浮かびました。そしてハッと気付いたのです。この戦いに勝ち目はないことに。大辻くんは昨日「ニーナちゃんがお金を出した」珈琲牛乳を飲んだのです。

「女の子がお茶代出したのに、少しも付き合ってくれないの?」

 針井くんと間開くんが目を伏せました。やくざ屋さんと目が合ったときくらい素早く。

「じゃあ行きましょう」

 その時、大辻くんはドナドナの歌を聞いたそうです。

 針井くんと間開くん。二人になってしまいました。

「とりあえず黒塗追おうぜ」


 to bee kontinuud。





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