神様なら人の話を聞けぇ!(拒否権はない)
中二病真っただ中の少年の約束を真に受けて剣と魔法の世界を作った神様
凄いでしょ褒めてほめて!
約束どおり我が子として異世界へご招待するよ
※性別を変更しました
でも頭が残念だった俺は、神様に選ばれた特別な存在なんだとワクワクして、迎えを待った。
しかし待てど暮らせど、神様は現れず、風のうわさも聞くこともなく40年。
そして今に至る。
神様はその大きな鼻の穴を興奮気味に広げて私を見る。
「この前会った時に、剣と魔法が使える世界に行きたいと言っておったであろう?
夢をかなえてくれるなら、うちの子になってもいいとも。
だから急いで作ってきたぞ!」
立派な中年になった平均身長の俺が見上げるくらいの大きさの神を見上げると、ピクピクと自慢げに動く鼻の穴が丸見えだった。
しかし、急いで作ってきたって、40年近く前の話を今されてもなぁ……。
「魔法の仕組みを一から作るのは骨が折れたが、かわいい我が子のためならこの程度の苦労も楽しいものよ。さあ!行くぞ」
「えええ?ちょっと待ってください!いきなり!?」
「剣と魔法の世界に連れて行ってくれるなら、我が子になると約束したではないか」
当たり前の事なのに何言ってるの?みたいな顔をして私を見る。
大きく骨太な体格で首をかしげる姿はシベリアンハスキーのようだ。
ゴリラでハスキーとか獣味強すぎな神様だな!
「すみません俺は今結婚して子供もいます!家族を置いていくなんてとてもとても……」
神様は表情を変えず首を傾け、あごに手を当てる。
「で、その家族は今どこに? 一緒に連れて行ってやろう!」
神様って空気読めないのね。
これだけ行きたくないわ~オーラ出してるのに、行くことは決定してる感じがする。
これは何といえば正解なのか。
相手は神様。
娘は実はもう成人し結婚して独り立ちしている。
しかもまだ新婚、こんなハチャメチャな話に巻き込むわけにはいかない。
40年も前の事なんて、会ったという記憶くらいしか残っていない。
相手は神様。
下手な答え方をして機嫌をそこねたら祟られる可能性もある。
何約束してんの、中学生の俺ー!
「娘は結婚したばかりなので、子供が出来たら剣と魔法の世界では危険だと思うんです。
この世界で娘と共に歩んでくれる人もいるので、そっとしておいていただけますか?」
「ふむ、そうか。かわいい我が子が増えるかと思って少しうれしかったのだがそれなら仕方ないな。
もしだな、もしの話でいいのだが、娘に子供が出来たら、私に少しでいいんだが抱っこさせてもらえないだろうか?
私は子供が大好きでなぁ」
神様は目じりを下げてあごをさする。
これはたぶん事案とかではない、と、思いたい。
「それでは我が子よ。そなたの伴侶は今どこに?迎えに行ってこよう」
神様的には子供が増えるならおっさんでもうれしいらしい。
ウッキウキな笑顔で私の夫の姿を探す。
「あそこにいますよ」
私の人差し指は爪の先ほどの大きさに見える墓石を指さす。
この神社を内包するお寺は、我が家の菩提寺。
今日俺がお寺にいたのは、妻のお墓参りに来ていたから。
十以上歳の離れた嫁だったけど、それでもなくなるにはまだ早い歳だった。
「そうかさすがに私も黄泉の国に行ったものは迎えに行けぬからな……
では、今日の所はお前だけを私の国へ連れて行くとしようか」
神様はいい笑顔で指を鳴らすのだった。