うちの子になりなさい
自称?神様に気に入られた主人公。
養子に来いと告げられてから40年経ってお迎えに。
すっかり育って結婚して子供もいるよ。
お断りする?まさか神が決めたことを覆すなんてあるわけないじゃない。
「迎えに来たぞ」
少し肌寒くなって、モミジが足元を彩る参道を歩いていると突然着物姿の男性に声をかけられた。
数十秒ほど過去の記憶をたどりつつ、ようやく思い出す。
「……かみ……さま?」
我が菩提寺はなぜかお寺なのに境内に神社があって、男は自称そこの神様だと名乗っていた。
眉唾といいたいところだが、神様は初めて会った時から一度も姿かたちが変わっていない。
神主さんが着ているような着物に長い黒髪。
意思の強そうな太くて濃い眉に四角いあご。
はじめて会ったのはまだ俺も珠のように愛らしかった幼稚園の頃だ。
神様ってゴリラみたいなんだなというのが第一印象だった。
お菓子を分けてあげたら、ものすごく感激されうちの子にならないかとしつこく言われたが
「知らない人についていっちゃいけません」
という親からの教育のかいあって、幼稚園児だった俺はは無事何事もなく家に帰ることができた。
次に会ったのは中学生の時。
思い出すのも恥ずかしい中二病全開の痛々しい子供だった。
片眼を隠すために前髪を左右非対称にしてみたり。
真夏に黒の長袖パーカー着てみたり。
マジックで手に魔法陣を書いて日焼けで白ぬけして中学卒業するまで手の甲に白くうっすら残ったり。
そんな脳みそが半分ファンタジーの世界に行っていた俺と話があったのか、なんか魔法的なものを見せてくれたり。
たしかその時もうちの子にならないかといわれたけど、その日は母方の実家から送られきたスイカを食べる予定だったから、それが食べたかったのでその時は断った。
神様もまた来ると言って去っていった。
珠のような幼稚園児をさらおうとするゴリラのような大柄な男神。
完全に事案です。