開幕グロとかマジでやめろ
俺は普通の都立高に通っていた特になんの重たい過去があるわけでも凄い特技を持つわけでもない高校生だ。
或る日突然奇妙な光に包まれたと思ったら見慣れた景色から古臭い小屋の中に飛ばされていた。
倒れ込んだまま上体を起こすと、そこにいたのはやたら露出度の高い奇妙なローブを羽織った絶世の美貌を持つ長い黒髪を揺らす背の高い女性だった…血まみれの。
「…初めまして。私の声は理解できるかな」
澄んだ綺麗な声だった。このまま目を閉じればもうなんかそれだけで恋に落ちるような、そんな美しい声だったのだが、目の前の光景が印象を九十度ほど歪ませている。
まず足元。なんかそれっぽい模様の魔法陣が妖しげに光っているわけだけど、それになんかの動物だったものみたいな肉片が其処彼処に散乱していた。怖い。尋常じゃなく怖い。
ガタガタガタガタと情けなく小刻みに震えてる俺を見兼ねたのか女が近づいてきた。真っ青になっているであろう俺の顔を覗き込んだのは先ほど見たこの世のものとは思えない美貌。
「おかしいな…言語変換の術式は今度こそ正常に働いているはずだが…やはりまた処分か?」
「いえわかります!!理解しきっております!!?」
処分ってなに!?俺も周りの肉片の仲間入りすんの!?というか近い近い近い!!!!
パニックの極限値だった。普通めの生活を送ってきた俺だがこのレベルの美人にここまで近寄られた経験はない。というかこのレベルの美人をみたことがまずない。
女は驚いたような顔を見せて少し離れる。俯いてこほん、とひとつ空咳をすれば俺を見て言うのだった。
「いきなりですまない、私は第十三のアルカナを司る『死神』の魔女。無限の彼方に位置する君の世界から君を呼び出したとっても凄い魔法使いのお姉さんだ。」
ローブをはためかせ、その豊満な胸を張って俺を見下ろすその女…魔女は。
「そんな私からお願いがある。君には…この世界を救うための『生贄』になって貰いたい」
長い長い黒髪を揺らし、赤い目を爛々と輝かせて、生き生きとした美し過ぎる笑顔で、そう言った。
「…うっ」
「…って少年!?」
高校生の俺ができるのは気絶することだけだった。