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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SCP-073

作者: ましゅマロ

初めて投稿させていただきます。SCPにハマりだして書いた作品です。至らぬ点が多々あると思いますが、ごゆるりとお読みください。

 ここは■■■■。一般人が知ることの出来ない、特定機密地域の1つである。広い敷地の中に無機物のみで出来たシンプルな小さな建物のみが置かれた場所だ。その建物の入口にて、3人の人間が立っていた。

「君たち、しっかりと注意事項を読んできたな?」

 先頭に立っている白衣を着た男が、後ろにいる2人の男達に言った。金髪のチャラチャラした男(ここでは職員Aとする)が頭を掻いて答える。

「わーってますって。これで10回目ですぜ?」

「心配性にも程がありますよ、博士」

 もう1人の落ち着いた雰囲気の男(ここでは職員Bとする)が眼鏡をクイッと上げて答える。道中にも同じようなことを何度も言われ、2人はいい加減耳にタコができるんじゃないかと思い始めていた。博士はため息をつきながら振り向く。

「それくらい心配なのだよ。いくら職員とはいえ、君たちはDクラスだろう。今までのことを思い出してみれば、ろくな奴がいなかった。君たちも奴らのようになりたいのか?」

「そういうわけじゃねえですよ。もっと信用しろってことですぜ博士」

「Dクラスに信用などあるか。所詮自由を拘束されていた身だろう。本来なら実験後に自由など与えたくないが…」

「上からの命令には逆らえない、そうでしょう?」

 そう、上からの命令には逆らえない。記憶を消去されここにいられなくなるだろう。言い返したい気持ちは山々だが、博士はそれを抑えて鉄のドアノブに手をかける。

「…さて、本当に準備はいいな?ここからは保証できん」

「いつでもいいですぜ」

「早く済ませましょう」

 博士は2人の了承を得ると、ゆっくりドアを開けた。外装と同じく、中は鉄やガラスなどを使用して造られていた。ドアを開けてすぐ目の前に、ガラスのテーブルと鉄パイプの椅子が置かれていた。奥にはキッチンらしきものがあり、シンクの隣には食器が積まれている。さらに、左側にはこれまた鉄製のドア、右側にはしおれきった花が花瓶の中に入れられていた。

「この花瓶はいつから置かれているんだか…彼が気に入っているようだからそのまま残しているが…先に腰掛けていたまえ。今から彼を呼ぶ」

 博士は2人を椅子にかけさせ、隣の部屋に入った。Aは少し安心した様子で部屋を見回していた。ほかの仲間から聞いたところによれば、実験は完全隔離された実験室で対象を中に入れ、命の危険を伴うような危険な行動をするように指示されると聞いた。それによって、多くの同僚が死んでいった。

 しかし、実際に来てみたらどうだ。隔離はされているものの実験室というには程遠い、変わった家のような場所。また、内容はただ話を聞くだけときたものだ。これだけ楽で、尚且つ自由を手にすることができるとは、自分はついていると感じていた。

 一方、Bは少し落ち着かない様子であった。Bもこの仕事がとても楽なものであることはわかっていた。だからこそ落ち着かない。上手い話かと思いきや、突然の死を迎えるかもしれない。そんなことを考え、Aと違って警戒心を高めた。

 数分後、隣の部屋のドアが開いた。そこから博士が出てきて、その後ろには褐色の肌を持つ黒髪で青い瞳を持つ男がいた。見た目からして、アラブや中東辺りの人間だと思われる。額には何語かわからないが文字が書かれていて、さらにはこの鉄で囲まれた蒸し暑い空間の中、長袖の服を着て、手元は手袋で覆っていた。Bは彼を見るとさらに警戒心が高まる。やはりこの博士が言った話は嘘なんじゃないか、騙したのかと、博士を睨む。博士はそれに気づかなかったのか、無視した。

 博士が彼に座るように言うと、空いた椅子に座った。博士は職員側の空いた椅子に腰掛けて、彼に声をかける。

「さて、悪いが今日も我々に付き合ってもらうよ。ゆっくりしていたところを邪魔して悪かったね」

「別に構わない。守秘義務を伴うものであれば協力すると約束している。ところで、今日も連れてきたのか」

 そう言って後ろの2人を見た。2人は彼の言った言葉に少し疑問を持ったが、それよりも彼の異様な体へ目が向いた。パッと見ではよく見えなかったが、手袋の隙間からチラッと見えた。人の肌とは程遠い色をした、金属のようなものが。一瞬凶器を潜ませているのかとも思ったが、テーブル越しに足元を見てみると、ズボンと靴の間から腕と同じく金属のようなものが見えた。何か装甲を纏っているとも考えた。しかし、それにしてはぴったりとくっつきすぎている。2人が疑問に思っていると、彼は2人に声をかける。

「どうかしたか?なにか気になることでも」

「あ、いや〜…ちょっとあんたの手元とか足元が気になってたり〜、ってな」

 彼はあぁと呟き、革製の手袋を外した。2人はそれを見て驚いた。彼の手は隙間から見えていた金属で出来ていた。とても精巧に作られていて、手袋越しでは気づかなかった。つまり、それだけ精巧で、通常の人間と変わらない動きが出来ていることを示していた。現代技術でさえここまでの再現は不可能だ。一体どうやって作られているのか、本当に謎である。

「元々この体だ。あまり気にするな」

「えぇ…気にしないことが出来れば、ですが…」

「すげぇ…感覚はあったりすんのか?」

「もちろんだ。握手をすれば握った強さがわかる」

 彼は立ち上がり、Aに近づいて手を差し出す。Aは戸惑いながらも軽めに握手を交わす。

「まだしっかり握れていないようだ。緊張しなくても、余計なことをしなければすぐ終わる。博士、そろそろ本題に入る」

 自分の思考を読まれてしまって、Aは少し恐怖を覚えた。

「そうだね、始めようか。本日は…いや、本日も『アベル』についての話だ。あいにく上は聞き出すまではずっと待っているようでね」

「そうか。上司からの命令に逆らえないというのは大変なのだな」

「そういう職なのだよ、仕方がないのだ。だが立場上、今日こそアベルについて話してもらう、と言わざるを得ない」

「そうなると、私も彼のことについて話すことは何も無い。そう答えなければならない」

 博士は淡々と話しているが、2人は『アベル』という言葉を聞いて、顔が青ざめた。普段の姿は四角い石のような見た目であるが、何年か経つと石の中から人型の生物が出てくる、Keterに指定されている、SCPである。かつて収容エリア全域を爆破、殺害を試みたが、無傷の状態で生き残った、化け物。その後窒息による殺害の成功が確認されたが、当時の収容エリアで働いていた職員はほぼ全員が死亡した。なぜそのような化け物の話をしているのか?Aはたまらず博士に聞く。

「な、なぜアベルの話なんてしてるんです?こいつが何か知ってるんですかい?」

「だから質問しているんだろう?あれからもうすぐ20年ほど経つことになる。奴の復活ももうじきだろうからな、彼に色々と聞き出そうとしているのだよ。命令でな」

「だが、私はそれについて教えることは出来ない。話せるのは、機密文書内に記録されていた内容のみだ」

 アベルについての報告書は、別サイトにて保管されているが、完璧に収容するための策はまだ見つけられていないと記されている。また、他のSCPと戦わせてみたりと実験してみたが、全て失敗に終わった。それどころか変な友情が芽生えていた時もあった。そのSCPもKeterということで、大変まずいことになった気がしなくもない。よって、アベルに関しての情報を集め、それを利用した対抗策、保管方法を早急に考えなければならないとO5直々の指令が飛んできた。といったものの、彼は今までアベルに関しての情報を一切割らなかった。

「と、いうわけで困っているのだよ。もうでっち上げて偽の対処法でも報告してやろうかとも考えたな」

「それは私的にはありがたいが、あなた自身が危険に晒されるだろう。それも困ってしまうな。話し相手がいなくなってしまう」

「こんな老いぼれによく言う。後続が配属されるから暇にはならないはずだが」

「あなただから良いのだ。本来なら後ろの2人には即刻退去して頂き、博士のみとの対話を希望するのだが」

 彼は2人に出ていくようにとジェスチャーを送る。2人は共に首を横に振った。

「そいつは出来ねえですぜ。俺たちはあんたとの会話を記録するために来てんだ、出ていっちゃ意味もねえだろう」

「なに、ボイスレコーダーを置けば問題ないだろう?」

「生憎、そうとはいかないですね。どうやら手書きで残すようにと指示されたみたいですから」

 彼はため息をつき、やれやれといった身振りをみせる。彼は立ち上がり、博士の肩を叩きながら言う。

「博士、今日の人選は完全なミスだったな。これなら助手に子供を連れてきた方が正解だったな」

「…あんまり舐め腐ってると痛い目見んぞ…?」

 2人はガタッと席を立ち上がる。

「本当のことだろう。子供はお前達と違って聞き分けがいい。言うことをしっかりと聞く子供の方が、利口だと思わないか?」

 Aはプルプルと拳を震わせる。Bも右手を腰元の拳銃へと持っていく。情報を提供するだけのやつに、子供以下の存在だと馬鹿にされた。情報を吐くどころか自分たちを侮辱され、2人は感情的になっていた。情報を吐かなければある程度の実力行使を認められている。情報もろくに吐かず馬鹿にしてきたことを後悔させてやろうと、2人はそれだけを考えていた。

「…博士、下がってください…ぜってぇこいつに情報を吐かせますぜ…」

「…」

 博士は黙って隣の部屋へ移った。その瞬間、Aは彼に殴りかかった。彼はまったく避ける素振りをみせず、そのまま拳を腹に受けた。彼は少し表情を歪ませた。

「情報を吐かなければ、その痛みがまた襲うことになりますが、それでも吐きませんか?」

 Bは銃を構え、彼に向ける。

「痛みを伴うのは私にとって望ましくないことだ。もしその気があるのであれば直ちに攻撃をやめて頂きたい」

「ならば情報を…」

 吐いてもらう。その言葉を口にするよりも早く、BはAの異変に気づいた。拳を打ち込んでから、まったく動かない。声ひとつあげない。何かがおかしいと感じたその時には、Aが床に崩れ落ちていた。Aは白目を剥いて、口から泡と血が混じったものが出ていた。腹部を見ると、真ん中から血が噴き出していた。

「なっ…貴様、Aに何をした!」

「何を、と言われても説明出来ない。強いて言うなら…自業自得、というやつだ」

「ふざけるな!本当に撃つぞ!」

 Bは引き金に手をかけ、脳天に狙いを定める。

「…これが最後の忠告になりそうだ。攻撃をやめろ。まだその命を無駄にしたくはないだろう」

「黙れえぇ!」

 Bは聞く耳を持たず、銃の引き金を引いた。

 

 隣の部屋から銃声が聞こえた。その直後、静寂が続く。博士は終わったかと呟き、部屋にあったベッドから立ち上がる。そのままドアを開けると、血なまぐさい匂いが鼻に飛び込んできた。その根源があるであろう部屋の右側には、脳天を撃ち抜かれ、顔がぐちゃぐちゃになった死体と、血まみれの割れた眼鏡が落ちていた。博士は先程と同じ場所に座っていた彼に声をかけた。

「今日は君の読みが当たったようだね」

「そのようだ。財団には今度から博士のみとの面会を希望すると記入してほしい」

「可能になるように善処はしよう、期待はしないでくれ」

 博士は転げ落ちている死体をどかして席につく。彼はキッチンの方からポットを持ってきて、ガラスのティーカップにお湯を注いだ。博士は一口飲み、彼に話しかける。

「2人にもを飲ませてやりたかったものだね」

「ただのお湯だろう?」

「最後の晩餐くらいにはなるだろうからね」

「晩餐か。本来ならそれは食事のことだと記憶している」

「たまには君に色々なものを食べさせてやりたいものだ」

 彼は少しだけ口角をあげ、お湯を口にする。

「ここからは博士と収容人ではなく、ただの友人として話をしたい。時間はあるか?」

「おかげで時間が出来たからな。それでは、友として話をしようじゃないか─『カイン』」 

ここまで読んでいただきありがとうございます。暇があればまたSCPの短編を書こうと思っていますので、その際は是非お読みください。それではまたお会いしましょう。

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