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怪盗美少女は困ってるっ!!  作者: ゆっくり★
第1章
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心まで盗むのは犯罪ですか?⑤

-桜華学園-



ブラックダイヤと契約を結んでから2週間



あれから通常授業も始まったのだが、さすが進学校だ。


授業スピードが速すぎて、付いていくだけで精一杯の怜奈と僕のふたりは、休み時間項垂れていた。



「怜奈…大丈夫?」



「ミナトこそ…」



「ふたりともダレ過ぎですよ?足拡げてないでシャキッとしなさい!!」



恭ちゃんに指摘され、無理矢理身体を起こし股も閉じる。男の僕が姿勢を直しているのに怜奈は相変わらず項垂れていた。


そのままの姿勢で怜奈が喋り出す。



「あー、テレビみた?今度の休みに怪盗エンジェルが現れるらしいね!」



ビクっ


「見ました!過去にも盗んだことのある宝石らしいですよ」



ビクっ!!ビクっ!!



ポンっ



「怪盗エンジェル改めてプリンセスらしいな」



渚が僕の肩を叩きながら声を掛けてきた。



「へ、へぇーそうなんだ」


僕は白々しく返事をした。


なぜこんなことになっているのかは、言うまでもないだろう…父さんが勝手に予告状を出したからだ。



休みまでに何をしたらいいか検討もつかないがブラックダイヤを使う練習を繰り返している。



最近では常時ダイヤを出した状態で力をコントロールできるようになってきた。



大体予告状出す泥棒ってどうなんだよ?誰得!?



-怪盗説明講座-



それには理由があって高額な美術品には盗難保険なるものがあって、盗まれたら保険が下りると言ったものだけど…



海外から借用した美術品は“美術品の国家補償制度”と言って保険料は国が払っている!


そのままでは宝石泥棒な上に税金泥棒と呼ばれてしまう。(保険料は美術品の査定額によります)



だから事前に予告状を出して誰が盗んだか明確にし、保険料と宝石代を一緒に持ち主に還しているのだ!!


まあ宝石は還せないからね♪


と言うことを今朝渚から教えてもらいました。



-説明終わり-



「ミナト?何独りでブツブツ言ってるの?」



「えっ?ワタシブツブツシャベッテナイヨ」



「なんでカタコト?まぁいいか?」



危なくとんでもない独り言が炸裂するとこだったけど華麗にスルー!!


「女怪盗とかカッコいいよね!!」


「どんな姿なんでしょ?」


怜奈と恭ちゃんが盛り上がっているなか、僕が不安で一杯になっていると渚が小声で話す。



「コスチュームは完成したぞ、これでも苦労したんだからな」



コスチュームデザインは渚が作成してくれて、機能設計は爺がしてくれたらしい。


渚は妙に気合いが入っていて、今晩は屋敷でフィッティングだ!!と嬉しそうだった。



そもそも、コスチュームのことか初耳何ですけどっ!!僕の意見は取り入れられないのですか!?





母さん、とんでもないものまで受け継がせますね。


もう止めて!!あなたの息子の羞恥心ゲージはもうゼロよ!?



その夜



-神奈川家屋敷-



「昼間言ってたとおり、コスチュームの試着始めるぞ。倫太郎おじさんのOKがなかなか出なくてな…」


こんなに渚が自信満々にアピールすることはほとんどないため、僕は試着するために恐る恐る部屋を移動する。




つい最近渚には失態を見せたばかりだから、格好くらいはビシッとして渚の期待に答えようと意気込んだ……しかし、大きな壁に遭遇した。




そもそも予告状にプリンセスと言うくらいだからドレスみたいな感じかなと、軽く思っていたのが甘かった。



今から着るドレスにはカタヒモが見えてはいけないため『ヌーブラ』です。


「こんなもん着けたことねーよ!!無理だろ!!」



ベチン



床にヌーブラを叩きつける。


泣きそうになっていると、1枚紙切れが落ちてきた。どうやらドレスに挟まっていたらしい。



丁寧にも付け方の説明文が絵付きであった、男としての僕の心の“何か”が失われた気がした…。



「よし、次だ!!」



ドレスは黒を基調として、袖から肩までが総レースで透けていて、胸元と背中が少し空いている。


ウエストにはベルトのような形でダイヤがちりばめられていてウエストの細さを強調している。


スカートの丈は膝上30センチくらいでミニスカートになっている。



着た感じはエレガントにまとまっていて今にもパーティーに行けそうだ。



個人的な感想は、これ以上考えるのを止めて(というより考えたくない)渚に見せに行くことにした。


「こんな感じですけど…」


と渚が待っている部屋へゆっくりと入って行く。



「おおー、良く似合ってる。我ながらなかなか良いセンスかもな」



僕は胸元に手を当てながら渚に聞く。



「これ…着方合ってるのか?」



胸元のレース部分が空いているため、どうしても谷間が強調されてしまう。



ヌーブラ効果はバツグンだ。



「パーティードレスだからな、文句はおじさんに言ってくれよ」




袖があるからまだいいが、こういうドレスは、ほぼ裸みたいな感覚に捕らわれてしまう。女性はみんな恥ずかしくないのだろうか?



「当日はエクステ付けて、髪をアップするのとこれを履いてもらうからな」



これと言って渚が渡して来たのは、踵が8センチはあるミュールだった。




「今日はひたすらミュールで、歩く練習だな。あと3日で慣れてくれよ」



「それと…」



前回のとは違う、別のネックレスを着けてくれた。


今回のは指輪を通すのでは無く、10センチくらいの大きさで石座に直接ダイヤをセットできる形のものだ。





渚は別の準備があると言って入れ替わりに爺がやってきた。



「爺、まず誉めても何もでないからな」



と先手を打っておく。



「まだ何も言っていませんのに…」



爺は残念そうにしている。


「気を取り直して、さっそく始めましょう」












散々爺に指導され、丸々3日かかったがミュールで走れるほどに上達した。




予告日当日



-神奈川家地下開発室-



僕は今朝から渚に色々手伝ってもらいつつ、ドレスに着替え髪をアップしてもらった状態だ。



爺の一言で作戦会議が始まった。


「さぁ始めましょう、まず狙うのは閉館直前です。」



「渚がハッキングをして明かりを消します」



ハ、ハッキングなんて出来るのか!と渚を横目で見たが、真剣な顔をしてるので思わず見とれてしまう。



「明かりが消えたら『深紅のガーネット』が展示してあるホールに侵入してください、ホールは吹き抜けになっており二階部分からテラスに出られます」



僕は今ドレス姿に、眉から鼻先までの長さの真っ白な仮面をつけている。ドレスが黒だからコントラストでよく目立つ。



この仮面は正体を隠すだけでなく、役立つ機能が備わっている。“暗視スコープ”“赤外線サーモ”“望遠スコープ”“カメラ機能”“通信機能”今回の作戦は暗視スコープを使って闇に紛れる手筈だ。


-都内某美術館-


「いよいよだな…渚、爺準備はいい?」


僕は『深紅のガーネット』の展示ホールの前の扉にいる。



「待機完了です」



渚はタキシードで、爺はいつもの執事服で近くに待機している。



心音が渚たちに聞こえてるんじゃないかと思うくらいドキドキと胸を叩く。












「作戦開始!!」





「明かりが消せるのは10秒間だけだ、美術館には内部電源があって10秒経つと切り替わるってしまう」



「そんな短時間で近付いて盗み出せそうにないぞ?客や野次馬でごった返しているんじゃ?」



僕の動きがスムーズじゃないととても出来そうにない。



「見物客は飛び越えます、桃様ご愛用のこれを使って」



そう言って爺が取り出したのは黒くて光沢がある『手甲』だった。



「この手甲にはワイヤーが仕込まれており、最大で5m伸縮します。先端には特殊な金属を使っており大抵のものは貫けます」



「これを天井に突き刺して、一気に移動してください」



あとはカーズジュエルを奪って逃げの一手です。




手甲を使いワイヤーを伸ばして天井に突き刺す。


そのまま『深紅のガーネット』が展示してあるホールの中央にたどり着く。



暗視スコープのおかげで回りははっきりと見え、警備員や観客が戸惑っているのが手に取るようにわかる。


展示してある土台を、ブラックダイヤの力を使い壊した。



ドカン!バラバラ...



暗闇のなか、大きな音が響き渡る。



(あ、力加減間違えた)



土台は跡形もなく崩れ去ったが、おかげでガーネットは手にいれることができた。



「電源復旧するぞ」



渚の声と共に暗視機能を解き、ホールの二階へとワイヤーを伸ばして移動をする。



ここまで順調に見えた。しかし、電源復旧と同時に想定外のことが起こった!



全ての扉と窓が鋼鉄のシャッターで覆われたのだ。




突然のことにざわめくホール


「ガーネットがないぞ!!」


「警備なにやってるんだ?」


「怪盗プリンセスどこだよ!?」



「あそこだ!!」



見物客の中の1人が気が付いて指を指す。指されたときには既にホールの二階だった。



「ヤツは二階だ。捕らえろ!!」



刑事みたいな人が警官隊に指示を出し、警官隊が取り囲むように二階へ上がってくる。








「爺、すまん被害額があがる」



「ミナト様問題ありません」





ブラックダイヤの力を引き出して拳を構える。




けたたましい轟音が静寂を打ち破る。



僕が真後ろの分厚そうな壁をぶち破ったのだ。



ホール内は音もなく静まり返る。



誰も想定してないことが目の前で起き、全員完全に動きが止まる。当たり前だ腕も足もか細い少女が壁をぶち破ったのだから…



僕はペコリと一礼してから、二階のテラスに出てワイヤーを使って外へ逃げ出した。



待機してもらっていた、渚と爺に合流して美術館から離れる。


途中検問があったが、パーティー帰りだと言う自然な理由でこのままの格好でも通ることが出来た。






作戦完了

被害総額 2億円(美術館修繕費含む)




なんとか無事帰って来れた僕たちだったが、朝から気を張っていたからかだろうか、とてつもない疲労感が襲われる。



爺を除いて…



帰って来た後も今回の費用の精算とあと片付け等々を淡々とこなす、執事選手権でもあれば間違いなく優勝だろう。







僕は朝から渚にしてもらったメイクを落とす、パーティー姿にノーメイクでは品がないとかで…


口元くらいしか出てないからいいじゃんと思ったのにわざわざフルメイクに。



改めて自分の顔をまじまじと見つめる。



眉は細すぎず整えられ、睫毛はビューラーで上に向いている、マスカラは付けているが自然な仕上がりに。


アイシャドーは薄くゴールドのグラデーション、アイラインはバッチリ囲みメイクで大きな瞳を強調している。



チークは不自然にならないように薄いピンクで、口紅もナチュラルなピンクで少しグロスが付けてある。



こんなメイクをどこで覚えて出来るようになったのか…さっぱりわからない。




渚は「最近だよ」と言って誤魔化していたが、メイクが出来る男子高校生なんていないぞ!?



纐纈家恐るべし


メイクも綺麗に落としたし、今度は春原家の出番だ。



-地下トレーニング室-



『深紅のガーネット』を両手に持ち契約を結ぶために意識をカーズジュエルへ向けていく。


………

……


-ブラットガーネット内部-




目を開けると、目の前には赤く発光する少年がいた。見た目は大体小学校低学年くらいだろうか。




「あーあ、久々の客が来たかと思ったらただの餓鬼じゃないか」


餓鬼?僕の見た目は今15歳の女の子なはずだ。


寧ろ貴方の方が餓鬼に見えますが!?と怒りを露にするが、空気を読まずにブラットガーネットの主は続けて喋り出す。



「契約を結んでもいいけど、代わりにお前の俺の下僕な?」



ブラットガーネットはかなり生意気な態度しながら僕に近寄ってくる。


目の前まで来たところで、僕の身体の中から声がした。


「儂を出せ」



聞き覚えのある声だったので素直に従うことにした。



そしてちょうど身体から黒い煙りと眩い光が溢れ出し始めたときだった、急にブラットガーネットが怯え出して、終いには腰を抜かしている。



「えっ、えっ、ちょま…」



「問答無用」




ブラックダイヤが出現した瞬間に、ブラットガーネットにドロップキックが入る。そこから流れるようにロメロ・スペシャルが決まっている。




「あ、姉御…ギブです」



ブラットガーネットは明らかに態度が一変した、ブラックダイヤにペコペコしてる。



ちょっと笑えるから離れたところで様子見していた。


何故か僕はガーネットと一緒に正座させられ説教を受けている。


僕はガーネットに舐められ過ぎという訳の分からない理由だが…。



そもそもブラットガーネットはパイロープという種類に分類されるらしいのだが、発掘される際にダイヤモンド鉱床の母岩中に一緒に発見されることが多く切っても切れない縁があるそうだ。



「お嬢も教えてくれれば…」


「そんなこと知らないし」


「おい、ガーネット下僕契約だ。さっさとしろ」



「えー!?、……わかりました」



赤い煙と眩い光が僕に侵入してくる。身体の底から燃えるような熱が込み上げてくる。



「俺の能力は、身体能力の向上だ。戻ったら試すといい、これからも宜しく」



下僕契約はどうやら盟約や条件を必要とせず、契約が結べるらしい。



今回は完全にブラックダイヤおかげで契約が出来たが、絶対に敵に回したくない存在だと認識させられた。



帰ってくると疲れも限界を迎えていて、そのまま部屋に戻って寝てしまう。




-翌朝-



朝食を食べながら、朝ニュース番組を見るがどのチャンネルに回しても「怪盗プリンセス」の話題で持ちきりだ。


「特にバレたりしてないみたいだね」



僕の心配を余所に順調にいっていたようだ。



「ちゃんと、準備してたからな」


渚は当然といった顔だ。



「逃げ出す瞬間は撮られてたみたいです」


爺がスポーツ新聞を見せてくれたが、豆みたいな大きさでしか映っていなかった。



「そろそろお時間ですよ」


爺に送ってもらい、渚と学校へ行く。

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