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怪盗美少女は困ってるっ!!  作者: ゆっくり★
第1章
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心まで盗むのは犯罪ですか?②

朝目覚めると僕はベッドに寝ていた。



昨日の強烈な目眩があったわりには、頭はスッキリとしていた。



ただ何故かパジャマがちょっとダボダボになっている気がした。



起き上がってみると、体は軽く手が小さく感じ、胸のあたりはちょっと重たく…!?ムニュ?




「えっ?柔らかい!?ってなんじゃこりゃー!!」



か、かっ、体がおかしい。何だ?夢か?夢にしてはこの触感はリアル過ぎる。何なんだ?太ったとかそんなレベルじゃない!!まるで女の人の…。



自分の置かれた状況を理解できぬまま、ベッドに座って呆けていると部屋のドアが開いた。


「湊、起きたか?」


ドアを開けて入ってきたのは渚だった。



「渚!!僕の体がっ!!」



喋って気付いたが、声も少女のようだった。


「ああ、俺からは言いにくいから爺ちゃん呼んでくるから待ってろ」



しばらくすると爺がやってきて、一言言った。


「湊様、開けましたね?」


僕は一瞬何のことか分からなかったが、爺の視線が机の上の箱にいっていることに気付き、直ぐに頷いた。


すると爺はこう言った。





「今日から湊様は、お坊ちゃんからお嬢様になられました」


そう言われた瞬間に、十五年付き合ってきた股間のモノを確認して叫んだ。




「ウソだぁーーー!!!!」


そのあと小一時間程泣き続け涙も枯れ果てたのだろうか、涙が止まった途端にお腹が鳴った。




「ぎゅるるるぅー……」


すると爺がご飯にしましょうと優しく声をかけてくれたため、ご飯を食べることにした。



キッチンに移動するとテーブルには朝食が並べられていた。


爺が言うには、僕は丸一日寝ていたらしい。だから消化のいいスープから食べるよう促された。


あれだけ強烈な目眩や熱があったわり、体の影響は女の子になった以外は何も問題ないそうだ、いや女の子になるのは大問題だろ!!と思わずツッコミを入れたくなる。


色々と質問したいことが沸々と沸いてくる、しかしそれを遮るかのように爺が言った。


「このあと10分後に、旦那様とテレビ電話をお繋げします。すべてのことは旦那様からお話があります」


キッチンテーブルに置かれたノートパソコンの画面はビデオチャットが繋がった状態になっていた。


父さんは僕の有り様を見てなんと言うだろうか、説明をしてくれるということは事情を知っているわけだし……



それ以前にどう考えても開けちゃいけないものを、開けてしまったのだからとんでもなく怒られるのじゃないかと不安になってきた。


何度もどうやって、あの“箱”を持って帰ってきたか思い出そうとするがどうしても思い出せない。



頭をひねって考えてたが、答えは見つからなかったため、諦めて父にすべて打ち明けようと考えるしかなかった。


ちょうどその時画面に父さんが映った。


「久しぶりだなミナト、まずだな…ミナトは春原家の血を色濃く受け継いでいる。」



母の名前は春原(はるはら) 桃子(ももこ)写真でしか見たことはないがたしかに僕は母似だろう、僕を産む際に亡くなったそうだ。写真に写った母はとても可憐で、どことなく儚げな顔をしていた。


父は体格がよく背も182cmくらいあって顔もダンディーと言える、顎髭もありそれがまたダンディズムを助長している。


僕はその逆で髭も薄く、身長も165だし、体重も軽く55kg程度だ。あっ?今も同じサイズかな…



「その性別の変化は春原家の呪いみたいなものだ、現に桃がそうだった」


続けて父が喋る。


「原理はまったくわかっていない、ただ呪いの使い方はわかっている。まぁ論より証拠だな…手のひらを前に出して、“これ”と同じものをイメージしろ」


これと言って父が取り出したのはかなり大きめのダイヤだった。



言われるがままイメージをすると、あの箱を開けたときに見た黒い煙と眩い光が両手の間に集まり出した。



煙と光は僕の体から出てきているよう感じた、次の瞬間には画面の先に見たダイヤと同じくらいのものが手のひらに収まっていた。





「なにこれ!?ダ、ダイヤが出てくるってどんなファタジーだよ!!」



「ていうか!母さん元男だったのかよ!?」



「左様でごさいます」



さらっと衝撃の事実を爺が言った。


続けて爺が説明し始めた。


「春原家は代々ブラックダイヤを守る家系で、私ども纐纈家は春原家に仕えておりました」



「ブラックダイヤは不思議な力を持っており、それを悪用させないのが春原家の使命でごさいます」



僕が女の子になるのが、不思議な力なのかと思っているとそれを見透かしたかのように爺が追加で説明を加えた。



「女性化は春原家のみに起きる副作用でごさいます、不思議な力は別にあります」


「それはまたおいおいと…」



そこまで説明されたところで、僕はすごく不安なことが脳裏によぎった。


「本当に僕は母さんの子供なの?元男なんでしょ?」



「……バカなこというな!!ミナトは桃にそっくりだ、それが何よりの証拠だ」



父さんは涙ながらに言ってきた。それを見て爺が鏡を持って僕の前に持ってきた。



現実を受け入れられないこともあって、心のどこかで鏡を見る行為を拒絶していた。



僕は初めて鏡に映った自分自身を目の当たりにした。




僕の目からしても、かなりの美少女が不安そうな顔をしていた。


それは幼い頃から何度も何度も写真で見て、ずっと会いたかった母の顔にそっくりだった。


父さんに申し訳ないことを言ってしまったことを謝りたかった。


「父さん、ごめんなさい」


「いや、いいんだミナト。父さんもミナトが桃に似すぎて動揺していた」


「ダメだ!!もう我慢できん!!日本に帰るぞ、準備だ。」


父は電話を取りどこかへ連絡しだした。


「パパは、今からミナちゃん元へ駆けつけます!!」


と言い放つとチャットの画面が消えた。


「パパ!?ミナちゃん?」


あのダンディーで普段から隙もなさそうな父さんが…。正直ドン引きだ、これからの神奈川グループは大丈夫なんだろかとかなり心配になった。


「ところで爺、これ戻る方法あるんだよな?」


少しは冷静なったため、いろいろ聞きたくなった。


「ごさいますが、春原家でそれを現実にした方は残念ながらいらっしゃいません」



「方法は2つ」



ゴクっ…


爺が勿体振るから、思わず僕は息を飲む。


「この世に12個あると言われている“カーズジュエル”を集めて所有権を得ること、そしてもうひとつの方法はブラックダイヤの所有権を放棄することでごさいます」


「しかしですね…」


爺が最後まで言い切る前に僕は手を翳して遮った。


「方法はひとつだね、そのなんとかっていう宝石を集めることだね」



「放棄するなんて、母さんの意志を…しいては春原家の存在意義が無くなってしまうってことだろ?」



僕がそこまでいうと爺は涙を流してこう言った。


「ミナト様ご立派に育って…うぅ、爺は嬉しゅうごさいます!!」



突然爺が泣き出すので、僕は真っ赤になりながら当たり前だっとぶっきらぼうに言ってしまった。


「ところで宝石の所在は、わかっているの?」



「わかっているのは、ブラックダイヤを含めて5つです、しかしそれはまた後日お教えします」



「えっ?なんでだよっ!!」


僕は声を荒らげた。



「まずそのお言葉、そして仕草!!お忘れですか?ミナト様は今女性なのですよ」


「ましてやこれからは神奈川の名前を名乗るのですよ!!」



爺が怒っている意味が解らなかった。僕は口をポカンと開けてしまった。


すると今まで黙って話を聞いていた渚が喋りだした。


「“春原 湊”のままだと可笑しいだろ?だからお前は“神奈川 ミナト”になるんだよ」


「あっ」


「あっ、じゃないだろ。学校では俺が、それ以外は爺ちゃんがフォローするからミナトも頑張るんだぞ」


僕は学校の存在をすっかり忘れていた。


「ねぇ爺?学校行かないとダメ?」


爺は何も言わずに頷く。もう“神奈川 ミナト”で申請してあり、学校も手回ししてあるそうだ。


それもそうだ、春から通う桜華学園は神奈川グループの経営だからね…当然と言えば当然よね。


僕のフォローのため、渚は今後このマンションで共同生活することが決まった。



それから春休み間は地獄のようなマナー講座と言葉使いの指導が、爺と渚によって永遠と繰り返されました。



僕の心はまだ男の子なのよっ!!これ以上女の子にさせないでっ!!







僕の抵抗も虚しく、マナーと言葉くらいは女の子になりましたとさ。


僕が女の子になって昏倒している間に、爺が採寸したりと準備をしてくれていて服や制服、さらには下着まで用意していた。



「久しぶりにお世話しがいがありました」と満面の笑みで言われてしまったら、女の格好は嫌だとは言えない。




何より母さんをもう一度世話してるようで楽しいみたいだ…。僕も母さんの昔のことを沢山聞けたので何だか嬉しくなった。



やれブラジャーは着けたくないだとか、スカートは嫌だの、制服なんて着れてればいいじゃんなどと意外に母さんは豪快な人だったらしい


どんなことで共有できる気持ちがあれば随分と楽になれるものだ。

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