少女の日常1〜ノワール学院〜
ヒュウゥゥゥ〜
生ぬるい。なんとも不快な気分を煽るような風が少女の側をぬけていった。
今はまだ朝の9時頃だろうか。制服を着た彼女は16歳とは思えないほどの美貌をもち、なんとも大人びていた。ただ、瞳には何も映しておらず、『闇』という表現がただしいのだろうか。彼女の表情も無機質なまるで2次元から這い出してきたホラー映画のオバケのように引き攣り、無表情であった。
「あっついなぁ。」
彼女は一言呟くと胸にかかる紋章に手を置き瞬間移動の呪文を唱えた。
…で、着いたのはノワール魔法学院。彼女が通う学校だ。
小中高一貫で、魔法の使える『強き者』専用のハイレベルな高等技術学校。
ここにいるだけで強き者と言われるほどなのだ。
「ねぇ、また来てるわよ。」
「ほんと〜!帰ってほしいわね。」
「ちょっと虐めたら帰るでしょ!!いつもみたいにさ!」
ただ、彼女は虐められている。まぁ当の本人は気にしてもないが。
飛んでくる魔法を苦ともせず避けると彼女はため息をついた。魔法を放った少女達は怒りでワナワナと震えている。幸せなど望んでいない。むしろいないものとされ、殺された方がどれだけマシだろうか。ここの学生は知らないのだ。真の強き者に選ばれた者がどれだけ強靭な精神力を持たなければならないのか。
とはいえ、どうこう言おうが仕方のないことなのだが。
「めんどくさ。帰ろ。」
彼女は忙しい。糞ガキどもの陰湿な虐めに付き合ってる暇はないのだ。
彼女は手を紋章にかざすと再び瞬間移動の呪文を唱えた。
…で、再びついたのは彼女の部屋。見回せば、資料。資料。資料。資料…。
まぁなんとも資料の山だ。女らしさの一つもない。出来ることといえば料理くらいなものだ。
ーコンコンー
「私です。ミヤ様。」
「どうぞ。」
「上層部の方々がミヤ様をお呼びです。至 急王都へとのことですがどうなさいますか?」
「あー、わかった。今日は帰れないから。」
「かしこまりました。」
また呼び出しだ。とはいえ、要件はわかっている。先日の任務の際にミヤは多くの弱き者に死を告げた。どうせ、その事への評価だろう。…決まって評価は最上級なのだが。それもそうだろう。ミヤはこのヴィラム国で1番の強き者の称号、『白騎士』をもつのだ。
ちなみに、上から白騎士、黒騎士、赤、青、緑、黄と騎士がおり、その下にそれぞれ騎士兵、そして兵士といる。
その中でも白騎士は特別とされ、顔は誰にも知られず、負けは許されず、殺しは黙認され、全てを決める権利を持っていた。
「だる。まぁ仕方ない。」
一人納得させるように呟くとフードを被り王都の幹部の元へと飛んだ。