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8 今なら天空剣だけで斬れるわ!(超電磁マシーン ボルテスV)

○○剣××斬りの元祖は、ボルテスVです。

 1977年放送の「超電磁マシーン ボルテスV」というロボットアニメがあります。

 ボルテスVは、剣を使った必殺技をバンクで使った初めてのロボットでした。

 天空剣Vの字斬りという、天空剣で敵メカの左肩から腹まで斬り下ろした後、右肩へ向けて斬り上げ、斬った跡がVの形になるという技です。

 ちなみに、「バンク」というのは、アニメで同じ絵を使い回すことを言い、ロボットの発進シーンや合体シーンなどによく使われており、気合いを入れて綺麗に描いた絵を使い回せるというメリットがあります。

 毎回同じシーンが流れるということは記憶に残りますし、絵が綺麗な分、印象もいいのです。




 今となっては意外に思うかもしれませんが、「マジンガーZ」では、特定の必殺技というものがありませんでした。

 ブレストファイヤーはもちろん、ロケットパンチにしろルストハリケーンにしろ、決まれば一撃必殺の武器であり、戦いの中で何をトドメに使うかは、その時の流れだったのです。

 ロボットアニメで初めて必殺技がバンクになったのは「勇者ライディーン」です。

 必殺技ゴッドバードアタックでは、ゴッドバードチェンジから照準セットなど一連の流れをバンクシーンで使い回すようになり、それが定着していったのです。

 剣を持っているロボットは、ボルテスV以前にもいます。グレートマジンガーのマジンガーブレード、ライディーンのゴッドブレイカー、コン・バトラーVのツインランサーなど。

 けれど、それらは全て“武器の1つ”であって、必殺技のためのアイテムではないのです。もちろん、それでトドメを刺すことがあったとしても、です。

 その意味で、バンクの必殺技として天空剣Vの字斬りを使ったボルテスVは偉大だったと言えるでしょう。

 なにしろ、戦隊シリーズの巨大ロボも、1号ロボの基本的な必殺技は剣によるものが多いのですから。




 さて、ボルテスVは、敵のパワーアップに合わせて必殺技がパワーアップする展開の嚆矢でもあります。

 敵の巨大メカ:獣士は、中盤から、マキシンガル合金という堅い金属で装甲を作った鎧獣士にパワーアップし、ボルテスVの武器が全く通じなくなりました。もちろん、天空剣でも斬れません。

 マキシンガル合金を破壊するには、もの凄い量の超電磁エネルギーをぶつけて劣化させるしかなく、ボルテスVに、それだけのエネルギーを発生・制御するシステムを搭載するためのドラマで中盤が盛り上がります。

 結局、天空剣の刀身にエネルギーを集めて作った超電磁ボールを鎧獣士にぶつけて装甲を脆くしてからVの字斬りするという形で落ち着きました。

 パワーアップそのものがドラマになるというのは、「マジンガーZ」でもやっていましたが、新必殺技を生み出すのではなく、それまでの必殺技に一手間掛けて強化したというのが新しいところでした。

 こういった流れは、続く「闘将ダイモス」でダブルブリザードがフリーザーストーム→ファイヤーブリザードのコンボになったりとか、「未来ロボ ダルタニアス」の火炎剣十文字斬りが火炎シュート→火炎剣十文字斬りになるなどの形で継承されていきます。

 ボルテスVでは、一連のパワーアップ終了後、鎧獣士に普通の武器でもダメージを与えられるようになっていますが、そこは見ないふりをしてあげるのが大人の対応というものでしょう。

 だって、弱らせないとトドメ刺せないし。




 で、アニメや特撮では、こういう風にパワーアップすると、その後、ほぼ毎回新必殺技でトドメを刺すようになります。

 特に、特撮では、新必殺武器が商品として売られていたりするので、番組内で使わなければいけないわけです。

 「特警ウインスペクター」では、中盤から登場したギガストリーマーによるマキシムモードが新必殺技になりました。

 1発で50センチ四方の鉄の塊を蒸発させるプラズマ光波弾を毎秒60発発射するというとんでもない威力です。

 ところが、ウインスペクターの敵は犯罪者(普通の人間)であるため、その強すぎる威力を持て余すことになりました。

 ある時、誘拐犯が乗った車を追跡していた主人公:ファイヤーは、ギガストリーマー・マキシムモードでその車のタイヤを狙い撃ちました。

 たかが普通の車のタイヤ1つに、鉄の塊を蒸発させるプラズマ光波弾を数十発叩き付けたのです。

 …オーバーキルもいいところです。

 ちなみに、ファイヤーの腰には、拳銃に相当するデイトリックM-2というのがちゃんとあって、それだって鉄板を撃ち抜くくらいの威力があるわけです。

 大人の事情はわかるけど、納得できませんね。




 さて、そこで再びボルテスVです。

 実は、パワーアップ後に、一度だけ超電磁ボールを使わない回があります。

 鎧獣士をチェーンでぐるぐる巻にしたところ、鎧獣士は装甲をパージすることでチェーンを外しました。

 そこで、ボルテスチームの1人が叫びます。

 「今なら天空剣だけで斬れるわ!」

 鎧を失った鎧獣士を、普通のVの字斬りで倒したのです。

 当時小学生だった鷹羽は、小躍りして喜びました。

 だって、「鎧のない今なら倒せる」って、頭いいじゃないですか。

 あの頃から、そういうの好きだったんです。ひねててすみません。


 でもね、普通のお子様には、そういうのウケないらしいです。

 ウルトラマンガイアは、途中からスプリームヴァージョンというパワーアップ形態に二段変身できるようになりました。

 例によって、その後は毎回スプリームになります。

 ところが、これも1回だけ、スプリームにならずに怪獣を倒したことがありました。

 鷹羽は喜びましたが、一緒に見ていた友人の子供(幼稚園児)は、「今日の怪獣、弱かったね」とぽつり。

 そーか、パワーアップしないで倒せる=弱い、になっちゃうんだ…。




 戦隊シリーズは、巨大ロボが登場する前(1話には登場しないことが多い)を除くと、基本的に毎回巨大ロボ戦があります。

 前後編の前編でも巨大ロボ戦をやるために、巨大怪人を倒さずに戦闘させる工夫がなされています。

 「電撃戦隊チェンジマン」では、巨大化しただけのトカゲと戦わせてみたり、怪鳥ジャンゲランの攻撃を受け止めるためだけにロボを使ってみたり。

 ロボを出すのが無理なら、ロボに合体するメカだけでも出します。

 そんな中、シリーズで初めて巨大メカが全く登場しない回がありました。

 「地球戦隊ファイブマン」の「愛をください」です。

 宇宙人の女の子が敵幹部に騙され、ファイブマンを侵略者と思って襲い掛かってくるというお話です。

 このエピソードでは、騙されている女の子の描写に尺が割かれ、巨大メカが出てくる暇がありません。その分、なかなかいい話になっています。

 この女の子の役をやっていたのが、新人の頃の水野美紀さんだったりします。

 当時、戦隊シリーズでは、中盤以降の回に、次回作のレギュラー候補が出演するという習慣があったので、恐らくアクションのできる彼女には次回作への出演オファーがあったのではないかと思われます。

 残念ながら、彼女はこの後「チューして」CMでブレイクしてしまい、戦隊シリーズへの出演はありませんでした。


 そして、「鳥人戦隊ジェットマン」には、なんとレッドが変身しない回があります。

 敵幹部の1人(洗脳されたレッドの恋人)が自我を取り戻し、レッド(変身前)と死に別れるお話でした。

 その後、「五星戦隊ダイレンジャー」では、全員変身しない回があり、素顔のままで名乗りポーズまで取っています。

 元々戦隊シリーズの最終回では、役者本人がスーツを着て変身後を演じるシーンがあるというのが伝統なのですが、素顔で名乗りポーズをやったのはダイレンジャーが初めてでした。




 もう1つ異色作を。

 「おジャ魔女どれみ」シリーズ4作目「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」の終盤に「どれみと魔女をやめた魔女」というエピソードがあります。

 誰1人として魔法を使わず、変身もせず、主人公であるどれみ以外のレギュラーは全部合わせて1分程度しか画面に出ないという、異色中の異色作です。

 どれみが、たまたま出会った女の人とガラスコップを作る、というだけのお話ですが、示唆に富んでいてものすごく面白いです。

 これだけで1本エッセイが書けちゃうほどなので、ぜひレンタルして見ていただきたい。

 ちなみに、ゲストキャラの声は、原田知世さんが演じています。




 ロボットアニメや特撮など、毎回のように繰り返される、ある種ワンパターンな展開の中で、時折パターンを外れるとそれが面白い。

 マンネリの美学の中にキラリと光るノイズ。

 そんな良さも、いつかやってみたいものです。

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