76 敵を殺さない戦隊(未来戦隊タイムレンジャー)
前回書いたとおり、「タイムレンジャー」最終回、タイムレンジャーはギエンを逮捕しようなどとは全く考えずに熱線で攻撃し、ギエンは作中唯一のタイムレンジャーによって殺された犯罪者となりました。
そう、タイムレンジャーが殺したロンダーズ構成員は、ギエンただ1人なのです。
ドルネロはギエンに殺され、リラは逃走し、所謂「怪人」に当たる囚人達は全員圧縮冷凍。
タイムレンジャーは、スーパー戦隊シリーズで唯一“怪人を1体も殺さなかった”戦隊なのです。
『タイムレンジャー』に登場する「怪人」は、全て異星人の犯罪者であり、既に刑に服していたのをドルネロらが解凍したもの。
タイムレンジャーは本来、時間犯罪者を逮捕するために過去に派遣される時間保護局の職員です。
言ってみれば、現実の刑事と同様の存在であり、逮捕権と捜査権はあっても、勝手に犯罪者を処罰することはできません。
もし囚人を殺せば、タイムレンジャー自身が犯罪者になるということが劇中で語られています。
ほかにも、再三にわたり逮捕が目的であることが語られています。
タイムファイヤー登場から3話後の32話『犯罪者を救え』では、事情を知らないタイムファイヤーが囚人DDラデスを殺そうとするのを止め、「お前達も殺してるじゃないか」と反論されて「僕たちは圧縮冷凍して逮捕しているだけです」と言い返すシーンがあります。
実際、タイムレンジャーの使命は、刑務所建物内の全ての囚人を取り戻し、ドルネロ・ギエン・リラを逮捕することです。
最終的に、ユウリ達はギエンを殺す道を選び、なおかつ歴史を変えることまでやっているわけですが。
さて、そのタイムレンジャーですが、『カクレンジャー』以来の“紅一点がリーダー”の戦隊となっています。
これは、ユウリが元々時間保護局の新入隊員ではなく、新入隊員のふりをして潜入してきたインターシティ警察の捜査官だという事情によるものです。
序盤は、時間保護法その他の法律関係にも詳しく、逮捕術や射撃、格闘術にも通じたユウリが捜査活動のイニシアティブを取っています。
ですが、リーダーはユウリでも、求心力を持っているのはやはり竜也なのです。
30世紀から帰還禁止を言い渡されて混乱していたアヤセ達に対し、「自分達の明日くらい変えようぜ」と言ってのけ、能動的に動くことを促した。
このことが、竜也の求心力になっています。
10話『明日への脱出』で竜也自身が言っているとおり、それは軽いノリで言っただけのことでしたが、“明日を変えるため”に危険な戦いに自ら飛び込む竜也の姿は、4人に大きな影響を与えたのです。
伊達に浅見財閥の御曹司ではないというところでしょうか。
狙ってやってるわけではないところが、ますますカリスマっぽい。
アヤセ達未来男3人は、それぞれ居場所を求めて時間保護局に入りました。
アヤセは、発病すると1~2年で死ぬといわれるオシリス症候群に罹っていることを知って、夢だったプロレーサーを諦めて。
ドモンは、グラップの試合をすっぽかしたことで永久追放となって。
シオンは、観察される動物のような境遇から抜け出したくて。
そんな彼らは、竜也を中心に次第にチームになっていく。
20話『新たなる絆』では、時空の乱れからもう1人の自分を見てしまった5人が、予想以上に歴史が狂っているのではないかと不安に陥り、また、時間保護局から見捨てられたのではないかと猜疑心に駆られ、更に最初のヘルズゲート囚:ブラスター・マドウに惨敗して八方塞がりとなります。
その時5人は、タイムレンジャーを続ける意味を自らに問い直し、自分の理由で再びブラスター・マドウに立ち向かうべく走り出す。
真っ先に走り出したのはアヤセでした。
アヤセは、竜也の「未来は変えられなくたって、自分達の明日くらい変えようぜ」という一言で、自分にとっての生き甲斐のある“明日”が見付かるかもしれないという希望を持った。
39話『雨に濡れた嘘』で言っている「でも、力だけじゃ生きられない」という言葉は、端的に言うと生き甲斐とか生きる張りといったものが必要だということでしょう。
アヤセは、人の命を守るために戦う。
ユウリは、ドルネロを逮捕するために戦う。
シオンは、5人でタイムレンジャーをやっている中に居場所を見出したから、タイムレンジャーとして戦う。
竜也は、ドモンに「目の前でやられてる人達ほっとけない。見てられないんだ」「俺達、みんな自分でタイムレンジャーやること選んだんだ。だったら、その意味も結果も自分で掴めばいいんだよ」と言って戦う。
最後に残されたドモンは、気持ちを整理しきれないながらも仲間と共に戦うことを選ぶ。
このエピソードでは、5人がタイムレンジャーとしての決意を新たにすると共にタイムロボとタイムシャドウの合体という、文字どおり新たな絆を描いています。
“この5人で共に戦う”という自分達なりの決意とそれぞれの戦う理由。
これがあるからこそ、30話『届け炎の叫び』でユウリ達4人はシティガーディアンズに勧誘されてもなびかなかったし、リュウヤが指揮してGゾードと戦う際にも士気が上がらなかったのです。
ところで、20話で注目すべきは、最後まで煮え切らないドモンです。
とりあえず戦うことを選んだドモンですが、本来彼は早く30世紀に帰ることを願っていました。
4人の中で最も330世紀に帰ることを願い、そのためにもロンダーズを逮捕し続けることを誓った。
だからこそ、作劇的にホナミというキャラが必要だったのです。
タイムレンジャーの5人のキャラには、1年間通しての縦糸となる物語が最初から用意されています。
『フラッシュマン』での“親探し”のような5人共通の縦糸ではなく、1人1人に縦糸があります。
いくつかの戦隊でキャラ1人ずつに年間通しての縦糸を持たせることはしていまし(『ボウケンジャー』の菜月の正体や『海賊戦隊ゴーカイジャー』のジョーとバリゾーグの因縁など)が、5人全員に縦糸を持たせているのは珍しい…というより、唯一と言っていいでしょう。
『ダイレンジャー』では、知やリンには縦糸がなかった。
『タイムレンジャー』では、11話までの間に5人それぞれの縦糸となる背景を描いており、それが年間通しての縦糸として最終回に結実します。
もちろん、縦糸だけでキャラ描写されているわけではないことがキャラの深みになっているというのが前提です。
竜也は、父との確執。
ユウリは、父の仇であるドルネロの逮捕と、竜也との関係。
アヤセは、オシリス症候群と「明日を変えようぜ」という竜也の言葉。
シオンは、故郷を失った孤独と自分の居場所。
そして、ドモンにはホナミとの恋愛。
現代人である竜也は当然として、アヤセは竜也と関わることで希望を抱き、ユウリは20世紀で戦うことがドルネロ逮捕に繋がり、シオンは、20世紀でタイムレンジャーとして“みんなと一緒に頑張ること”がようやく手に入れた自分の居場所でした。
その中で、ドモンだけは、20世紀を守る明確な理由がありません。
ホナミの登場そのものは9話『ドンの憂鬱』ですが、ドモンとの関連は11話から始まり、具体的に話が回り出すのは24話『黄色、時々青』からとなります。
30世紀に繋がっている20世紀を守るというのでは、具体性を欠く。
だからこそ、ドモンは20話では最後まで煮え切らなかった。
ドモンは、ホナミと恋仲になることで、ようやく20世紀そのものを守りたいという思いを抱いたのです。
ホナミと付き合い始めてから、ドモンは30世紀に帰りたいと言わなくなっていきます。
30世紀への未練は薄れていったが、かといっていつまでも20世紀にいられないことも重々承知していた。
そんな各キャラの描写がラストで結実するのです。
4人は、自分達を救うため無理矢理31世紀に送り返した竜也のため、共に戦った記憶まで消されることへの反発、そして何よりも竜也と共に生きた世界を守るため、都合のいい未来を捨て、時間保護局を裏切り、歴史を変えるという犯罪を犯すために21世紀へと向かうのです。
けれど、その暴挙には、見ている側がすんなり納得できるだけの重さを持った背景がありました。
そして、当然の如く現代に残ることになった竜也は、ユウリ達の時代に続く歴史を紡ぐべく、全力で今を生きます。
1年続いた番組のラストとして、見事に結実したと言えるでしょう。




