74 俺を助けてくれておいて、何を(ぶるうピーター)
今回も敬称抜きでお送りします。
鷹羽は、ちょっとマセた子だったらしいです。
周りに大人が多くて、幼い頃に両親に連れて行かれた飲み会で、赤裸々な話とか下世話な話とかしているのを脇で聞いていたから、変に賢しらな子供になってしまったようです。
祖母が後妻で、自分と血が繋がっていないことを知ったのは6歳の時で、これも伯母達の会話からでした。
あの時のショックは相当でしたね。
幼児を飲み会に連れて行くなよ、と言いたいところですが、共働きの両親が仕事絡みで参加せざるを得ない飲み会が多かったので、1人で家に残すのはなぁ、ということで連れて行かれたようです。
そんな鷹羽は、天知茂の明智小五郎シリーズとか、古谷一行の金田一耕助シリーズとか大好きで、惨殺死体とか(画面で)見るのが全く平気でした。
年齢一桁の子供が夜10時から始まる1時間ドラマを毎週見てるんだから、すごい話ですよね。
当時、1歳上の従姉は、夜9時には寝なさい、だったらしいです。
そんな鷹羽は、土曜夜9時のドラマとかでベッドシーンにも多少触れてはいましたが、漫画で初めてベッドシーンを見たのは、「ぶるうピーター」だったと記憶しています。
「ぶるうピーター」は、1982年から週刊少年チャンピオンで連載されていた漫画で、作者は「小山田いく」という人です。
「宇宙大帝ゴッドシグマ」や「超攻速ガルビオン」のキャラデザをやった漫画家たがみよしひさの実兄です。
たがみよしひさの「軽井沢シンドローム」辺りだと、それこそ普通にベッドシーンが出てきますが、あっちは青年誌ですからねぇ。
父は青年誌は買わない人だったので、当時、鷹羽は青年誌やレディースコミックに触れたことがありませんでした。
「ぶるうピーター」のあらすじは、こんな感じ。
海と船が大好きな明科一帆は、山の中にある高校に入学することになった。
事情により女子寮に部屋を与えられ。女子寮の寮生達と衝突などしながらなじんでいき、寮全体になくてはならない存在になっていく。
いやもう、端的に言うとそれだけなんですよ。
“女子寮で生活する男子高校生の日常”という、よくある学園ものです。
一帆は、幼い頃に母と死別し、父が船乗りで留守がちという家庭環境から、情緒がお子ちゃまなところがあります。
そんな一帆は、1年の夏頃から、同じ女子寮に住んでいる三郷西夜と付き合うようになりますが、2年の春頃、些細なすれ違いから別れることになります。
浮気とかじゃなく、大した事件もなく、なんとなく別れたような感じでしたね。
手元にコミックスが残っていないので、もう何がきっかけだったのかすら覚えていません。
で、次に一帆が付き合うことになったのは、一帆の入学時に女子寮の寮長だった紅尾鈴でした。
鈴は、「おりん」とか「アネゴ」とか呼ばれている、気の強い人です。
鈴が1年の頃、うたた寝している時に、当時仲の良かった男子が触れたのを襲われた的に反応してしまったせいで、その男子が学校を去ることになったのが心の傷になっており、必要以上に男子を遠ざけていました。
それが、闖入者である一帆と衝突を繰り返すうちに、お互いを認め合うようになり。
一帆2年の夏に、寮の仲間数人で泊まりがけで海水浴に行く際には、既に高校を卒業していた鈴もメンバーに入っていました。
そして、夜、1人でヨットで海に出た一帆が現在地を見失った時、鈴が岸辺から懐中電灯を使って「オ・リ・ン、オ・リ・ン…」とモールス信号を送って誘導し、助けたのです。
このモールス信号は、以前、一帆が鈴に「オリン」だけ教えたものでした。
一帆が帰ってこないかもしれないと焦った鈴と、不安な中鈴に道しるべをもらった一帆は、その夜結ばれます。
この時点まで、まだ2人は付き合っておらず、一夜を過ごしたことから付き合うことになったわけです。
当時の鷹羽の感覚では、付き合った後に肉体的なものがついてくるものだったので、ちょっと衝撃的でした。
で、この初体験の描写なんですが、“2人の様子を気にした友人が部屋を覗いたら、ヤってた”というものでした。
一帆が仰向けに寝て、鈴が上に跨がって上半身を起こしていたところから、一帆の顔に顔を寄せていくという姿が見えたのです。
絵面としては、一応、鈴の腰から下は布団がかぶさっており、明かりをつけていなかったため上半身もシルエット的にしか見えない程度のソフトなものでした。
たしか2コマで表現されていて、鈴の胸もはっきりとは描かれていなかったはずです。
が、“何をしているのか”は。わかる雰囲気だったんですよ。
覗いた女の子がショックで吐いたりして、「なんで吐くの?」と疑問を持ったことを覚えています。
キスしか経験のない一帆を、多分キスすらしたことのない鈴が一気にそこまでいっちゃったことに、結構な衝撃を受けました。




