71 東映ヒーロー好きが描く東映アクションしないヒーロー(「ウイングマン」)
「ウイングマン」というマンガがあります。
1983年から週刊少年ジャンプに連載され、1984年には「夢戦士ウイングマン」のタイトルでアニメ化もされました。
作者の桂正和さんは、ラブコメとヒーローものをミックスしたような作品をいくつか描いていますが、「ウイングマン」はその代表と言ってもいいでしょう。
作者自身、東映の特撮ヒーローものがお好きだそうで、コマの背景に戦隊系や宇宙刑事シリーズのヒーローが描かれていることもありますし、作中にオリジナルの宇宙刑事の番組(「宇宙刑事バギャン」など)が放送されていたりします。
「ウイングマン」の内容は、こんな感じ。
ヒーローに憧れ、ヒーローになりたいと願う中学生:広野健太は、自分で考えたヒーロー:ウイングマンの衣装を作り、実際に着たりしていた。
ある日、空から落ちてきた少女を介抱した健太は、少女が持っていたノートにウイングマンを描いたことで、本当にウイングマンに変身できるようになってしまった。
そのノートは、異次元世界にあるポドリムスの王宮科学者ドクター・ラークが作った“書いたことが現実になる”ドリムノートだったのだ。
ラークは、王:リメルが侵略の武器としてドリムノートを使おうとしていることを知り、娘:アオイに自らの記憶を封じたリングとドリムノートを託し、地球に脱出させた。
健太が助けた少女がアオイだった。
アオイは、ドリムノートを始末するよりウイングマンの力でリメルを倒し、父を助けることを決意した。
健太は、基本となる自分の体を鍛え、ウイングマンの能力を強化しながら、ポドリムスの刺客と戦う。
その後、リメルを倒しアオイと別れた健太の前に、再びアオイが現れた。
ポドリムスが何者かに侵略されたというのだ。
ポドリムスを手中に収め、新たに地球を狙う帝王ライエルの魔の手をウイングマンが阻む。
なんか、こう、“拾ったノートに勝手に絵を描く”という正義の味方としてどうなの? って展開はともかく、変身すれば強くなるわけじゃない(姿が変わるだけ)という設定は面白かったです。
ウイングマンは、健太のイメージとしては、強化服ヒーローではなくイナズマンみたいな体自体が変化するタイプのヒーローだったようで、強化服的な基本性能は設定していません。
一度「100mを5秒で走れる」と書いたら制御できなかったので、基礎能力も自分の体力準拠にしたようです。
“変身すると筋力倍加”とかの設定もないんですよね。
ウイングマンには、10分という変身タイムリミットがあります。
これは健太が設定したものではなく、三次元世界におけるドリムノートの能力の限界のようです。
実際、ポドリムスにいる時は変身タイムリミットはありません。
とはいえ、10分というリミットは、ウイングマンの変身のみに適用されており、エアバイクであるウイナアやそれが変形するロボット:ウイナルドにはリミットはありません。
同じようにドリムノートの力で変身するウイングガールズ(アオイを除いた3人)にも時間制限はありません。
彼女らは服装を変えているだけに見えますが、変身により超能力を発揮し、久美子は視力も上がりますが、時間制限はないのです。
健太の無意識下の設定にもないため、このタイムリミットは、中心的な設定でありながら説明不能の矛盾となっています。
どう考えても、無から有を生み出すウイナルドの方がパワーがいりそうです。
また、健太が作ったウイングマンの衣装は、赤地に白の模様ですが、変身したウイングマンは黒地に青の模様です。
黒いのは、ドリムノートに描いたウイングマンをペンで塗ったせいと考えられなくもありませんが、青はどこから来たのでしょう?
巨大ライエルとの戦いでは、ドリムノートに何も書いていないのに巨大化し、赤地に白のウイングマンになりました。
アニメでは「飛べる」と書いてから飛べるようになりましたが、マンガではウイングマンは最初から飛べます。
この辺も若干の謎ではあります。
ちなみに、巨大化した「ウイングマン」が、夜だったためソーラーガーダーのエネルギー不足に苦しんだ時、周囲の人々の懐中電灯などの光でチャージするという展開がありました。
「ウルトラマンティガ」25話「悪魔の審判」で、ティガに周囲の人達が光を与える姿を見て、「ウイングマンみたいなことやってるなぁ」と思ったものです。
「ティガ」のスタッフが「ウイングマン」を見ていたかはわかりませんが。
ウイングマンの攻撃は、基本肉弾戦と光線技で、ちょうど放送中だった宇宙刑事シリーズの影響がほとんどないのが不思議ではあります。
変身ポーズや名乗りは、宇宙刑事シリーズの影響バリバリなんですけどねぇ。
ウイングマンの技などについては、大きく分けて3回のパワーアップがなされています。
① 最初にポドリムスに行って敗走した後に設定したもの
1秒間に数発のパンチを放つコンティニパンチ
頭部の飾りがブーメランになるスパイラルカット
掌から出るビーム:スプリクトフラッシュ
爪先が尖ってドロップキックするウイングルクラッシュ
クロムレイバーを短剣状態で構えてきりもみしながら突っ込むドライバーレイド
上半身全体から放つビーム:ファイナルビーム
ウイナアが変形する戦闘補助ロボット:ウイナルド
② シャフト戦後、新しくなったドリムノートに描き足したもの
時間経過で模様が青→黄→赤に変わる
模様が赤になると使える新必殺技:デルタエンド
クロムレイバーからビーム刃が出た剣:バリアレイバー
美紅・桃子・久美子が変身するウイングガールズ
③ ポドリムスでの決戦用に描き足したもの
ソーラーガーダーとヒートショック
そして、ここに、傷をカバーするための鎧:ガーダー、アイスプラスに対抗するためのヒートウオッシャーなどの一時しのぎの武器が入るのです。
正直、「ウイングマン」は、ヒーローアクションとしては少々弱く、純粋にかっこいいと思える戦闘シーンは結構少ないです。
絵が綺麗かどうかという話ではなく、アクションや戦いとしていいと思えるシーンが少ないんですね。
たとえば、アオイの幼なじみナアスとの戦い。
敵を三角錐のバリアに閉じ込めて爆破する必殺技:デルタエンドを仕掛けたところ自身もバリアに閉じ込められたウイングマンが、自分の方が中心に近かったためにビームを浴びてしまうシーン、「自分の技で死んでたまるか!」の気合いでビームが曲がりナアスに集中していくところなんか、物語の演出としてはともかく、戦闘シーンとしてはイマイチなんですよねぇ。
個人的に、一番良かった戦闘シーンは、分身してビルの谷間を飛んでいる敵に対して放ったファイナルビームです。
幅2mくらいのビームがビルの谷間を抜けて飛んでいくシーンは、戦闘的にも演出的にも絵的にもかっこよかったです。
「ウイングマン」は、ヒーローものの体裁ではありますが、ラブコメ的な面が強く、戦闘自体にもコメディ色が強く出ています。
そうさせたのは、編集の鳥嶋さん(「Dr.スランプ」ドクター・マシリトのモデル)の意見らしいのですが、当時のジャンプは、純粋にヒーローものがやれるような空気じゃなかったんですよね。
「キン肉マン」にしても「風魔の小次郎」にしても、アクションというよりは技とハッタリによるバトルがメインで、アクションで押せる感じじゃなかったのです。
ちょっとわかりにくいと思いますが、たとえば「聖闘士星矢」では、技名を叫んでパンチを打つと派手なエフェクトと共に敵が吹っ飛びます。これ、アクション的にはパンチ一発です。
動画には不向きですよね。
だから、「聖闘士星矢」のアニメ版では、技を繰り出す前に踊ったりしていました。
そうやって、一撃に時間を掛けることで間を持たせるわけです。
これを実写でやろうとすると、「聖闘士星矢」みたいに迫力も何にもなくなります。
なんとかしようと思うと、「るろうに剣心」の実写版のように、手数で稼いだり斬られても斬られても立ち上がるドリフのコントみたいになるのです。
ポドリムス編ラスト頃の3兄弟との決着なんかはマヌケもいいところで、デルタエンドにも耐える無敵のマントの攻略法として、マント同士を結び、ほどこうと躍起になっているところにデルタエンドを仕掛けるのですが、「10秒だけ待ってやる」「いち、じゅう」でずっこけたところを持ち上げてデルタエンドという、ものすごく締まらない決着でした。
ガルダンを倒すために金物屋に針金を買いに行って「しまった、お金を持ってなかった!」とか、シリアスに戦うつもりはなさそうです。
敵怪人が、短期間でシードマン、ディシードマン、バトルシードマン、造人間と変わり、何がどう違うのかイマイチはっきりしなかったのも戦闘色の弱さに繋がっていますね。
「ウイングマン」の人気を支えたもう1つの柱が「えっち」です。
具体的に言うと、肌色率が高いです。
アオイの戦闘服がセパレーツであることもそうですし、戦闘服がしばしば破れるのもそうです。
初戦で、早くもアオイのパンツが破れてますし。
お風呂シーンも多いですが、桃子がノーパンミニスカで戦っていたアイスプラス戦とか、テレビ生放送でアオイ・美紅・桃子が裸にされてそれを放送し続けたザシーバ戦とか、ちょっとびっくりなくらいです。リアルで考えると背筋が凍りますね。
アニメ化に際しては、ラブコメ色とヒーロー色を中途半端に出してしまったため、非常にまとまりのない作品になってしまいました。
ヒーローもの定番の名乗りも、
1つ ヒーロー数ある中で
2つ 富士山ひとっ飛び
3つ 美紅ちゃん愛してる
4つ よい子の友達の
5つ いつでも正義の味方
6つ 無敵のウイングマン
と、子供向けの数え歌みたいなものになっています。
これ、実際企画書に「これを流行らせたいと思います」とか書かれていたものなんですよね。
3なんて、正気の沙汰とは思えません。
それだけでなく、なまじヒーローものだけに、毎回怪人を出さねばならず、ネタにも困りました。
折悪しく、アニメ放映のタイミングで原作者急病のため半年間の休載となっており、更に困りました。
そのため、マッハチェイングとパワーチェイングという、アニメオリジナルのフォームチェンジまで登場しました。
これ、ウルトラマンティガより10年以上前です。
アニメでは、商品化の都合から、おもちゃで人型に変形可能なバイク:ウイナアⅡが登場したり、ガーダーを「ウイングガーダー」としてレギュラー武装にし、右前腕のアーマーからレーダーバードという索敵分析メカを出したりとか、戦闘の幅を広げました。
ちなみに、ウイングマンの超合金も一応発売されました。
そのパッケージは、原作コミックスでアニメ化決定前にネタとして描かれていた超銅金のパッケージそっくりだったりして、なかなか粋だったのですが、本体の方はなぜか同時期発売の「星雲仮面マシンマン」の型を流用していたようで、胸の模様とかがWでなくMベースになっていて、よく見るとかなり変でした。
10月に、特撮版として製作されましたけど、果たしてどんなアクションになるのか、とても興味があります。
連載当時、原作者がレインボー造形に依頼してノーマルのウイングマンとソーラーガーダーの2着のコスチュームを作っていましたが、やっぱりベルトもボトムアーマーもないデザインは、等身大ヒーローとしては異質なんですよね。
「獣拳戦隊ゲキレンジャー」のデザインの締まりのなさを見ると分かりますけど、腰にアクセントがないと、寸胴に見えるのです。
ウイングマンの場合、ベルトはないもののバックルに当たるドリムカセットと、両腰のクロムレイバーのお陰で、デザインとしては締まるんですけど、コスチューム的にはそこで絞れないので、寸胴に見える危険があったり。
見たいよ~。怖いもの見たさが7割くらいだけど、やっぱり懐かしいから、どう料理されるか気になるよ~。




