62 印象深い一言(銀河漂流バイファム、TATTOO HEARTS)
なんでもない一言が、状況によって珠玉の名言になることがあります。
「仮面ライダーW」照井竜の「俺に質問をするな!」や、「未来少年コナン」モンスリーの「バカね」なんかがそうです。
そんな一言の中でも、鷹羽が最上級と思っているのが、「銀河漂流バイファム」32話「雨あがりの再会」でのケンツの「イチゴだイチゴだ」です。
「バイファム」は、移民先の星が異星人の襲撃を受け、民間人を守って軍人が全滅する中、練習艦ジェイナスで脱出した13人の少年少女の物語です。
当初は自分達だけで地球に帰還しようとしていましたが、民間人(親がいるかもしれない)がククト星に囚われていると知り、救出に向かうことにします。
ククト星に到着した時、主人公ロディの乗るバイファムと、ケンツ、カチュアの2人が乗るトゥランファムだけがジェイナスからはぐれ、合流すべく移動していました。
バイファム、トゥランファム共に宇宙用で、トゥランファムのみ復座型です。
本来、大人向けの装備で、ケンツではフットペダルに足が届かないため、「高ゲタ」と呼ばれるペダルの上にはめるフレームをはめて操縦していました。
また、それぞれロボットのコクピットブロックは「ポッド」という小型脱出艇になっていて、トゥランファムのもののみ翼が付いていて大気圏内飛行が可能です。
敵に撃墜されたトゥランファムから脱出したポッドとバイファムは、残り少ない推進剤を気にしながら、ジェイナスを探します。
そして、谷間に掲げられたレッドベアーの旗と、その下にはためくイチゴのパンツを見付けました。
その時のケンツのセリフが「イチゴだイチゴだ」です。
レッドベアーの旗は、地球軍の精鋭部隊のことをケンツが話した時、シャロンが描いた可愛いクマの顔です。
そして、イチゴのパンツはシャロンの愛用のものでした。愛用、というか、シャロンは当初これ1枚しかパンツを持っておらず(着の身着のまま逃げてきたので)、洗い替えがなくて困るとか、何度かジェイナス内で物議を醸した曰く付きのパンツでした。
シャロンとぶつかることの多かったケンツにとって、このレッドベアーの旗とイチゴのパンツは、ジェイナスの象徴です。
これがはためいていたということは、ケンツ達を待っているということで、ケンツにとって“ジェイナスに帰ってきた”という何よりの出迎えだったのです。
パンツを旗と一緒に掲げるという、普通なら「何考えてんだ」と言いたくなることが、ケンツ達限定で“無事に帰ってくることを願っている”というメッセージになっているのです。
こういう、ずっと見てきた視聴者にだけわかる演出って、とっても粋だと思うのです。
蛇足ながら、ジェイナスは軍人向けの外宇宙航行訓練のための艦であり、乗員が成人男性にほぼ限られていた都合上、服飾系も大人の男性向けしかなく、小さい男の子や少女達は、下着なども布から作っていくしかない状況で、非常に苦労していました。
途中、地球軍の部隊と合流した際にも、補給物資として女性用下着が欲しいと言ったくらいですから。
粋と言えば。
週刊少年ジャンプで連載された「TATTOO HEARTS」という漫画があります。
入れ墨を入れた者同士のバトル漫画なのですが、特殊な墨で漢字一文字の入れ墨を彫ると、その文字に応じた特殊な能力を発揮できるというものでした。
主人公の莫山は、“粋”というのを大事する男で、腰痛の鍼治療のつもりで入ったヒロイン花音の入れ墨屋で、「どんな文字がいい?」と訊かれ、「(好きな言葉は)粋」と答えたことから、「粋」の入れ墨を背負うことになりました。
この入れ墨を使って世界征服をしようとする一団と莫山が遭遇します。
曲がったことの嫌いな莫山は、組織のやり方に腹を立て、「粋じゃねえにもほどがあらあ!」と戦うことになりました。
やがて、莫山には相手の入れ墨を墨に戻す力があること、莫山の亡き祖母と花音の亡き父が組織と戦っていたことがわかります。
粋じゃない力の使い方をする組織を潰すことにした莫山が旅立つところで終わるという“俺達の戦いはここからだ!”パターンの打切でした。
いやもう、話もさほど面白くないし、絵は荒いしで、打ち切られるのもさもありなんという感じだったんですが。
でも、どうも鷹羽には印象深いんですよ。
それは、全編通して“粋”に拘っていたからだと思います。
莫山の回想で、幼い頃、祖母から頼まれたお遣いの途中、チンピラに金を奪われたというエピソードがあります。
奪われまいと抗ったものの、力及ばず殴られ蹴られ、ボロボロになって家に戻りました。
金を奪われたことを詫びる莫山を、祖母は褒めます。
「でも抗ったんだろ? 理不尽な暴力に屈しなかったんだろ? 粋じゃないか」と。
そして、最終回、旅立とうとする莫山に、花音はついて行きます。
「父さんがやり残したことをやるのが、あたしのなすべきことだと思うから」
それを聞いた莫山は「…粋じゃねえか」と答え、一緒につれて行くことにします。
たしか、本編中、莫山は「粋でありたい」「粋じゃねえ」とは言っていたものの、「粋だ」と言ったことはなかったと思います。
莫山がただ一度「粋だ」と言って終わる、というのもよい終わり方だと思います。
こういう演出というか、印象深い台詞回しは、自分で物語を紡いでいても、やっぱり憧れますね。
照井竜の「俺に質問をするな!」
質問に答えるのを煩わしがって言うのが通常なのだが、劇場版「FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ」で、翔太郎を先に進ませるため、変身不能のまま敵に立ち向かう。
その際、翔太郎の「おい照井、大丈夫なのか!?」という言葉に「俺に質問をするな!(意訳:俺に構わず進め)」と返している。(35回参照)
モンスリーの「バカね」
モンスリーは、気が強くプライドの高いデキる女で、「バカね」と相手を罵倒するのが口癖。
そんなモンスリーが、最終回、かつての部下:ダイスと結婚する。
ダイスから花嫁姿を「綺麗だ…」と言われ、赤くなって返す「バカね♡」が、それまでの印象から信じられないほど初々しかった。
ファンの間では、「バカね」の三段活用と呼ばれているらしい。