53 スポ根じゃないスポーツ漫画(エースをねらえ!)
鷹羽はスポ根系は苦手です。
なんで苦手なのかはよくわからないのですが、「アタックNo.1」のアニメは、ちょっと見てやめちゃいました。
「巨人の星」もアニメ(たぶん再放送)で見ましたが、毎回見たいとは思えませんでした。
その割に、大リーグボール(そういや当時はメジャーリーグじゃなくて大リーグだった)1号攻略のため、花形が鉄球を打ってるシーンとか、灰をまぶしたボールで大リーグボール2号の仕組みを解き明かすエピソードとか見てたりするんですけど。
燃えてるボールを前方転回しながら足裏ではね返す特訓なんかも見ましたねぇ。
あれ? 結構見てる? いや、ヒーロー系とかロボットアニメに比べると、明らかにテンション低いのです。
どういうわけか「あしたのジョー」みたいなのは好きだったりします。
鷹羽の中で、あれはスポ根ではなく格闘ものというカテゴライズなのかもしれません。
まぁ、世の中には「タッチ」をスポ根ものに分類する人もいますからね。
まぁ、とにかく、鷹羽はスポ根系は苦手で、たとえ見ていたものでもあまり印象強くないものが多いのですが、例外的に「エースをねらえ!」(原作コミック)は大好きで何度も読んでいました。
といっても、最後に読んだのは20代の頃だったと思うので、かなり忘れてしまっているのですが。
「エースをねらえ!」って、タイトル見て真っ先に「ウルトラマンA」での「エースなんか星人に渡しちゃえばいいんだ!」を思い出しちゃうんですけど、それはさておき。
「エースをねらえ!」は、哲学的というか、悟っちゃったみたいなキャラクターが多くて、名セリフが多いんですよね。
宗方の「愛はある、育てる以上。だが、育てて育てて、ほかの男に渡してしまう父親の愛に何の打算がある?」というセリフは、鷹羽の胸に残っています。
鷹羽は、父とは折り合いが悪かったですが、それでも父なりに愛情をもって接してくれていたのだと、今は思っています。
初めて「エースをねらえ!」を読んだ中学生当時、親子関係で結構鬱屈していたものを持っていた鷹羽にも、それなりに響いた言葉でした。
ちなみに、このセリフの前には
「恋なら、相手にも愛されたいという恋の打算があるのなら、どうしてこんなこと(つらい訓練を課すこと)ができる。愛はある、育てる以上…」と続きます。
蛇足ですが、鷹羽が一番好きな宗方のセリフは
「俺は、人に耐えられぬほどの悲しみも苦しみもないと信じている」
という言葉です。
この物語は、テニスの素人だった岡ひろみが、宗方仁コーチに才能を見出され、世界レベルのテニスプレイヤーに育っていくというものです。
ひろみには、特殊な能力や潜在能力のようなものはなく、序盤はむしろテニス部の落ちこぼれでした。
おそらくは、性格とセンスを見出されたのでしょう。
どこが、ということは明言はされておらず、漠然と“俺の全てを受け継げる人間”と称されるに留まっています。
特殊な技があるわけでもなく(タッチを微妙に変えるというテクニックはありましたが)、愚直なまでにボールに食らいついていく精神力こそがひろみの最大の武器でした。
ひろみの周囲には、藤堂、尾崎、お蝶夫人、蘭子といった超高校級の選手達が揃っていましたが、結局、世界レベルで通用したのはひろみだけでした。
この辺りのリアルな残酷さも、特筆すべき部分だと思います。
かなりメジャーな作品ですから、知っている人も多いでしょうが、この作品は、大きく分けて二部構成になっています。
第一部が宗方コーチ編。宗方コーチが死ぬまでですね。もちろん、この呼び方は鷹羽が勝手に言っているだけで、公式のものではありません。
第二部は桂コーチ編。宗方コーチの死の前くらいからです。
細かいことを言うと、第一部のラストと第二部の序盤は時期がかぶっていて、しかも内容に矛盾する部分があります。
というか、第二部をやるために必要なことだったのです。
それが“桂大悟の存在”です。
桂は、第二部のキーパーソンで、宗方の親友という立場ながら、第一部には登場しません。
第二部の冒頭が宗方存命の頃──第一部終盤とかぶるかたちになっているのは、第一部に存在しなかった桂が絡むかたちで描き直すためでした。
なんのために?──物語を続けるためにです。
元々「エースをねらえ!」は、ひろみが渡米のため飛行機に乗り込むに当たり、ちょうど息を引き取った宗方の「岡、エースをねらえ」という声(幻聴)を聞いたところで終わる物語でした。
死してなお、ひろみを励ます宗方の姿をもって感動的に終わったのです。
この時点で、ひろみが後日宗方の死を知った時にどうなるかは、たぶんなかったのでしょう。
一度感動的に終わった物語は、しかし、最初のアニメ化によって人気が再燃したため、3年後に続編連載となったようです。
結果、宗方の死後、宗方に匹敵するキャラが必要になるため、桂が新たに設定されたのでしょう。
そして、第二部の最終回ラストシーンは、遠征のため飛行機のタラップを昇るひろみに、桂の「岡!」という声が聞こえます。
宗方の時を思い出して慌てて振り返ったひろみに、息せき切って駆けつけた桂が「エースをねらえ!」と言って幕を下ろすのです。
共には行けないけれど、常に応援している──宗方が桂に託したひろみの未来は、きちんと守られている、といういい終わり方でした。
このように、第二部では、桂がひろみと心を寄り添わせていく姿が描かれているわけですが、反面、その煽りを受けたキャラがいました。
それが、宗方のもう1人の親友、太田コーチです。
太田は、第一部の割と序盤から登場するキャラで、宗方にとって因縁の相手でもありました。
当初、宗方は膝を壊したために選手を続けられなくなったとされており、その怪我をしたのが太田との試合だったのです。
太田は、その後、よその高校でコーチとなっており、教え子がひろみ・お蝶ペアとダブルスで対戦したりもしています。
この試合で、ボールを追って取れずに転んだひろみが、宗方の方を見て、少し見つめ合った後に立ち上がるというシーンがあります。
ボールを取れず不安になったひろみが、じっと見守る宗方の目に勇気づけられるというシーンなのです。応援の声などはありませんが、宗方の目は、お前が努力してきたことは知っている、それを出し尽くせと言っています。
そして、試合後、太田が宗方と2人で飲んでいる時にその話を出します。
以下、うろ覚えです。
「岡のお前を見る目が印象的だった。心からお前を信じている目だった」
「当たり前だ。信頼を築いている。
心まで支えてこそのコーチだ」
「まったくだ。俺は自分の指導を大いに反省するね。
うちの選手達、俺のことちっとも見なかった」
というような会話がありました。
宗方の名言みたいなのがネットによく上がっていますが、その中にこれはありません。
理由は、多分、相手が太田コーチだったから。
太田コーチは、宗方の親友にしてライバル、というポジションで登場しました。
高校時代からのライバルで、今はライバル校のコーチという、わかりやすい立ち位置です。
おそらく、登場当初は、それだけのキャラのつもりだったのではないでしょうか。
それが宗方の膝の故障が太田との対戦中という話になったことで、因縁のライバルのようになりました。
そして、更に、宗方がテニスを続けられなかった理由は、膝の故障ではなく病気(悪性の貧血系らしい)と変遷しました。
この変遷がどういう理由によるものかはわかりませんが、物語を終わらせるための布石だったのではないかと思います。
最終回、宗方が、見舞いに来ている蘭子を病室から出し、1人で日記に「一行渡米。岡、エースをねらえ」と書き記して事切れ、同時にひろみの耳に「岡、エースをねらえ」という声が聞こえるという運命的なエンディングは、この作品の人気を支える重要なファクターになっていると思います。
太田は、宗方の現役引退と密接な関わりのある役どころでありながら、最初に膝の故障に絡んだ話を出してしまったため、“実は病気でした”という設定変更に絡ませづらく、そのために桂が登場することになったのでした。
もったいないなぁ。
桂とひろみの初顔合わせでは、ひろみは“鬼コーチの友達はやっぱり鬼コーチで、太田さんがいい例で”、などと考えています。
流れ的には、太田も桂と交流があることにせざるを得ないため、“親友でありながら真相を知らない”という可哀想な立ち位置になってしまったのです。
一応、太田コーチは後でひろみ達の高校のコーチになっているのに、ひろみの専属でないため影が薄いまま。
なんて可哀想。
そうして登場した桂と宗方の出会いは、川原でのケンカでした。
本編中、昔話として語られるのですが、宗方と桂は、初めて出会った際、川原で派手に殴り合ったそうです。
加減を知らない高校生同士、たちまち歯が折れ…とか、いかにも後に響きそうな痛い描写で、「うわぁ…」とか思ったものでした。
このケンカは、双方疲れ果てて夕日の川原で地面に大の字に倒れ、同時に「水ぅ!」と言ったことから笑いだして終わり、2人はそれで仲良くなったそうです。
漫画で、素手で殴り合うリアルなケンカ──殺し合いとかでなく──というのは、ほかに本宮ひろ志さんの「男一匹ガキ大将」くらいしか思いつきません。「男坂」じゃ駄目です。
何かを語る際に、原体験が大きく影響するということはよくあります。一番最初に見たもの経験したことが、自分の中でスタンダードになってしまったり。
鷹羽の場合“殴り合いのケンカ”というと思い出すのが、この宗方と桂のケンカになりました。
そして、随分経ってから、殴り合いのケンカという話題に触れたわけですが、それがとても鷹羽らしいです。
「機動武闘伝Gガンダム」後期OP「Trust You Forever」です。
2番の歌詞に「太陽が落ちるまで拳を握り殴り合って 傷だらけのまま似たもの同士と笑ってた 背中を大地に合わせると星空が滲んでた」という部分があるのですが、鷹羽はこの部分を聞くと、宗方達が大の字になって「水ぅ!」と言っている姿が頭に浮かびます。
たぶん、作詞者はそんなこと全然考えてなかったと思います。でも、鷹羽の中では、あれはドモン・カッシュではなく宗方仁なのです。
で、更に数年後、もっと意外なところで似たような構図を見ることになりました。
2009年放映の「フレッシュプリキュア!」です。
え、なんで!?って思いますよね? 鷹羽も思います。
「フレッシュプリキュア」では、当初3人だったプリキュアのリーダーであるキュアピーチ:桃園ラブが敵幹部の1人イースが化けた東せつなと仲良くなっていく描写がありました。
イースとしては、プリキュアの懐に入って情報を入手とか打算から始まったのですが、ノーテンキで裏表のないラブと触れあううちに徐々にラブに好意を感じるようになってしまいました。
それでも敵同士。イースは、遂に正体を明かしてキュアピーチと雌雄を決することにしました。どっちも雌じゃん!というツッコミは却下です。
キュアピーチの戦い方は、基本的に肉弾戦。
そう、“拳を握り殴り合う”のがデフォなのです。
周囲の樹をぶち折りながら派手に殴り合い、双方力尽きて大地に倒れ、本音を吐露する。
なんかねぇ、漢同士のケンカによる和解の図なんですよ、まんま。
こういうのを女児向けアニメでできちゃうのってすごいなぁとか思いましたが、そういうのもジェンダーレスな世界なんでしょうか。
この後、色々あって、イースは4人目のプリキュア:キュアパッションに転生(1回死んでプリキュアとして復活)するわけです。
この決戦シーンを見て、「エースをねらえ!」を連想した人って、ほかにはいなかったんだろうなぁと思いもしましたが、その辺は個性ってことで。
蛇足ですが、「エースをねらえ!」のオマージュという側面を持つ「トップをねらえ!」では、コーチの名前が「太田」なんですね。
これって、何かありそうな気がしますよねぇ。
でも、調べてみたら、某漫画家さんの本名が元ネタだそうです。
「エースなんか星人に渡しちゃえばいいんだ」
「ウルトラマンA」26話「全滅!ウルトラ5兄弟」で、父を亡くした少年が言うセリフ。
このセリフを聞いた北斗星司は、かなりのダメージを受けた。
この回に登場するヒッポリト星人は、最初“実体があるかのような立体映像”を使い、身長200mの巨大宇宙人(エースは40m)として登場しているが、セリフで「200m」と言っているだけでセットのサイズがいつもどおりなので200mには見えない。
このエピソードで、ヒッポリト星人がエースの人形のクビを落とすシーンがあるが、上記の子供の父が子供に買ってきた人形で、それを拡大して立体映像にしていたという設定。
ただし、子供への土産は実際に発売されていたトーク人形っぽいのに、立体映像が持っているのは完全に別物の小道具で、しかも、スケール的に50mのヒッポリト星人がトーク人形を持ってスケールが合うはずもなく、今見ると違和感がある(本放送当時は、さすがに気付かなかった)。
この少年の「エースなんか星人に渡しちゃえばいいんだ」というセリフは、ヒッポリト星人が「エースを渡さないと街を破壊する」と脅したためで、TACの基地には「エースを渡してしまえ」という電話がじゃんじゃんかかってきた。
この手の脅迫は、「マジンガーZ」などで、周辺の街を人質に光子力研究所を渡せ的な近視眼的な使い方をされるパターンだが、ウルトラ系でこれをやったのは、このエピソードだけだったはず。
“エースを渡したらどうなるか”考えていないという疑問以前に、“どこにいるのかわからず、地球人の影響下にないエースをどうやって引き渡すのか、抵抗されて敵に回られたらどうするのか”という根本的な疑問があるため、上滑り感がメチャメチャ強い。




