52 勇気ある者(勇者いろいろ)
「勇者」という言葉、ここ数年は、褒め言葉で使われているのを見た記憶がありません。無謀にも高嶺の花の美少女に告白する男を指して「勇者」と呼んだりもします。
特に「なろう」では、有能な仲間を追放してひどい目に遭う愚か者として登場することが多いですね。
「勇者」…某有名RPGでは、他人の家にずかずか入り込んでタンスなどを漁り、見付けた金銭を勝手に持って行ったり(人、それを泥棒という)、戦いの中で死ぬと「死んでしまうとは情けない」とか言われる職業です。
でも、本来はすごい人なわけですよ。
少なくとも四半世紀前までは、それこそ“人類の守護者”的な使われ方が主流でした。だったはずです。前述のRPGのネタはその頃からありましたが、それでも世界を救うすごい人だったんです。
まぁ、RPGだと“魔王”と対になる存在なんですが、アニメなどではそうでない使われ方も多いですね。
「勇者ライディーン」とか「勇者エクスカイザー」とか、もろに「勇者」と付く作品もいくつかあります。
「勇者エクスカイザー」から始まるタカラの勇者シリーズは、「太陽の勇者」「伝説の勇者」「勇者特急」「勇者警察」「黄金勇者」「勇者指令」「勇者王」と、いずれも勇者を冠しています。
タイトルになくても、主題歌などの歌詞に「勇者」と入る作品も多いですね。
ちなみに、「勇者」の読みは「ゆうしゃ」ですか?「ゆうじゃ」ですか?
国語的に正しいのは、「ゆうしゃ」です。今は、前述のRPGのおかげで「ゆうしゃ」で固定されていますが、昔は「ゆうじゃ」も割と見かけました。「王者」という言葉があるせいでしょうか。
「サンダーマスク」のOPでは、「サンダーマスクは宇宙のゆうじゃだ」と歌われています。
「特警ウインスペクター」の挿入歌でも、「赤いゆうじゃがやってくる」とか「太陽のゆうじゃ」とか歌っています。
「ライディーン」のOPでは、「ゆけゆけ ゆうしゃライディーン」です。40年くらい前、カラオケボックスなどなかった時代に、ギター用のコードが付されたアニメソングの楽譜本が発売されていました。その中に「ライディーン」のOPもあり、そこでOPを歌っている子門真人さんが「音としては“ゆうじゃ”の方が強いが、読みとして正しいのは“ゆうしゃ”なので、そのとおり歌った」というコメントを出していました。このコメントを読んでから、「ゆうじゃ」と歌っているのを聞くと違和感を感じるようになりましたね。「サンダーマスク」、好きですけど。
「宇宙の騎士テッカマン」のEDでも、「スペースナイツは太陽のゆうじゃ」と歌っていました。
「勇者」と言えば、鷹羽にとって印象深いのがジャンプ漫画「ダイの大冒険」です。旅の最初は、パーティメンバーはダイとポップの2人だけでした。
初めて魔王の幹部と戦うことになり、ビビってダイだけを行かせてしまったポップに、偽勇者一行の魔法使いが言います。
「勇者とは、勇気ある者! そして勇気とは打算なきもの! 相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは、本当の勇気じゃない!」
勇気のひとかけらが残っているうちにダイの加勢に行けとポップの背中を押してくれたその魔法使いは、強い相手から逃げ回っているうちに勇気をなくしてしまった人でした。
いかにも昔の熱血漫画といった展開ですが、ポップは序盤は決して強くなく、どちらかというと一般人の感覚に近い弱虫なキャラでした。
ですが、最終決戦ではダイの相棒として、たった2人で大魔王バーンと対決することになります。
バーンの奥義“天地魔闘の構え”の弱点を見抜き、体を張ってダイに勝機を作ったのです。
天地魔闘の構えは、カウンター型の技で、右手の手刀:カラミティエンド、左手の障壁発生技:フェニックスウイング、爆炎魔法:カイザーフェニックスを同時に発動して敵を吹き飛ばす技です。4人で同時に仕掛ければ勝てるのでは?とか言っちゃいけません。
この技は、体内に溜め込んだ闘気や魔力を一気に放出して使うため、使用直後にコンマ数秒の硬直時間が発生するのが弱点です。
仲間の犠牲でそれを見抜いたポップは、硬直時間を作ってダイに攻撃させるべく、自分1人で天地魔闘の構えに挑みます。
「魔王を倒すのは勇者の一太刀って決まってらあ。奥義の食らい役は俺だ!」と、決死の表情で向かっていくのです。
残された魔力の半分を籠めた右手の杖:ブラックロッドと、左手から残り半分の魔力を使った爆裂魔法を放ちながら。
バーンは、ブラックロッドをカラミティエンドで叩き切り、爆裂魔法をフェニックスウイングではね返し、カイザーフェニックスでポップを仕留めにかかりますが、ポップが服の下に仕込んでいたシャハルの鏡(魔法をはね返す鏡)ではね返されました。このシャハルの鏡は、最終決戦に至る過程で、ポップが倒した敵から、「持っていってほしい」と託されたものでした。この辺も燃えます。
そして、硬直中のバーンの左腕をダイの剣技:アバンストラッシュが切り落とすのです。まぁ、この後も戦いは続くんですが。
地表の全てを破壊する6本の塔が世界各地に出現し、ダイが呆然となった時も、ポップは「おめえが死ねば結界は消えるんだろ。おめえを倒して塔を凍らせに行く。順番どおりじゃねえか」と、魔力も残っていない体でバーンに挑み続け、ダイを立ち直らせました。
純粋な戦闘能力では少々心許ないポップですが、初期から見ているとその成長ぶりに驚きます。
はっきり言って、「ダイの大冒険」には辻褄の合わない展開もあるし、アラも多いです。
例えば、オリハルコンを破壊できるのはオリハルコンの武器か消滅魔法だけという設定だったはずなのに、ヒュンケルもマァムもオリハルコンでない武器でオリハルコン製の親衛隊を破壊し、ラーハルトに至っては風圧で破壊しています。ポップの魔法はメドローア以外通じないままだというのに。
ダイの剣を作るためにオリハルコンのアイテムを探し回った意味がありません。
それでも、「ダイの大冒険」は熱くて面白い漫画でした。
まぁ、「超電磁マシーン ボルテスV」でも、超電磁ボールが完成した後は普通の武器でも鎧獣士に傷を付けられるようになりましたけどね。
まぁね。
ジャンプ漫画に整合性を求めてはいけない面もあるんですけど。
理屈を吹き飛ばす勢いというものは、熱い作品には付き物ですし。
「勇者王ガオガイガー」では、合体プログラムが使用不能となり、各メカに人が乗って手動操縦で合体しようとした時、成功確率60パーセントを、「1人10パーセントずつ勇気で補えばいい!」という超理論で押し通してしまいました。所詮は確率ですから、ひっくり返せてもおかしくないのがキモです。
そうそう、「勇気」と言えば、忘れちゃいけないのが「タイムボカンシリーズ ヤットデタマン」です。
「ヤットデタマン」は、1000年未来のナンダーラ王国が次の王を決めるため、候補者2名にジュジャク(クジャクの9を10にしたネーミング)を捜させるという物語です。どこかの時代で何かに擬態しているジュジャクを捕まえた方が次の王になるのです。候補者2名は現代に逗留し、ジュジャクの情報を手にするとその時代に出掛けていき、結局捕まえられずに逃げられ、「ジュジャク、ジュジャク。どこにいるのかジュジャク。誰かジュジャクを知らないか」というナレーションで終わるというのがフォーマットでした。
主人公:時ワタルは、候補者の1人カレン姫(ワタルとヒロイン:姫栗コヨミの子孫)を、自分の職場:遠山探偵事務所の天井裏に住まわせ、ジュジャク探しを手伝います。もう1人の候補者コマロ王子側の妨害に遭うと、ワタルが物陰で「勇気、勇気、勇気…」と唱えることでヤットデタマンになるのです。
ちなみに、ワタルは姫の力によって変身できるようになったという設定で、番宣ポスターには、姫の発する光を浴びたワタルがヤットデタマンに変わっていくシーンが描かれていました。
ワタルが気弱な少年だったり、パートナーのコヨミがヤットデタマンに憧れているのに正体がワタルだと知らなかったり、舞台が探偵事務所だったりするのは、同じタツノコの「破裏拳ポリマー」と同じなんですよね。ワタルの声を演じたのも、ポリマーと同じ曽我部和行さんでしたし。
セルフパロディという側面もあったようです。
最終回、ワタルとコヨミが「私達が結婚しないと生まれてこれない人がいるんです」と探偵長に仲人を頼んでいましたっけ。
本編中に、舞台裏を解説するおちゃらけ回があって、大巨神の発進シークエンスを解説したりするんですが、そこでワタルの変身シークエンスも語られるんですよ。
ワタルが「勇気、勇気、勇気…」と唱えると、未来から数人の変身班がやってきてワタルを殴って気絶させ、超高速で着替えさせつつご飯を食べさせて訓練させて変身完了、という…。
いや、毎回そんなことしてるわけないじゃん! というツッコミ待ちとしか思えないネタでした。
前回ついた筋肉とか、すぐ落ちちゃうのかよ!




