47 欲望の劇場(仮面ライダーOOO)
砂臥環さまのリクエストです。
「仮面ライダーOOO」は、2009年9月から放映された仮面ライダーシリーズ21作目です。平成ライダーとしては12作目に当たります。
タイトルロゴは、3枚のメダルで変身することと引っかけてのものです。前々年の「仮面ライダーディケイド」は1枚のカードで、前年の「仮面ライダーW」は2本のガイアメモリで、翌年の「仮面ライダーフォーゼ」は4個のスイッチで変身と、この時期は毎年アイテムが1個ずつ増えていたんですよね。
「仮面ライダー」には、変身や必殺技の際に音声を発するタイプのベルトが結構あります。
嚆矢となるのが「仮面ライダー555」のファイズドライバーです。変身コードを入力すると「standing by」、変身完了すると「complete」、必殺技の際には「exceed charge」と、無機質な声を発し、そのクールさが大いにウケ、当時の男児玩具売上の新記録を達成しました。
「仮面ライダーキバ」では、ベルトのバックルがキバットバット3世というキャラになっていて、変身の際に「ガブッ」と噛みつくというシークエンスになりました。こちらはポップ系とでも言いましょうか。
「仮面ライダーディケイド」では、変身のカードを入れると「カメンライドォ…ディケイド!」と、やはり無機質系の声を発しました。
「仮面ライダーW」では、ベルトのスリットに挿入したガイアメモリに応じて「サイクロン!ジョーカー!」と音声が流れました。
「OOO」では、歌手である串田アキラさんの声で、「タカ!トラ!バッタ! タ・ト・バ・タトバ・タトバ♪」のように、一定の組み合わせの際にコンボソングが流れます。
ストーリーとしては、
かつて人間の欲望から作られたメダルの怪物「グリード」が封印から目覚めた。
グリードは9枚のコアメダルと大量のセルメダルから成り立つ怪物だが、9枚揃わない状態で復活したため、大きく弱体化していた。完全復活を目指し、自分のコアメダルを探し求めるグリード達。
そんな中、鳥のグリード:アンクは、右前腕だけの姿で復活し、火野映司と契約してオーズに変身させ、コアメダル探しとグリード殲滅を目指す。
というようなものです。
グリードを構成するコアメダルは、鳥や昆虫、猫科肉食獣、大型哺乳類、海洋生物といったカテゴリーから3種3枚ずつになっています。
オーズは、このコアメダルを1カテゴリーごと3種を頭部、腕部、脚部に振り分けて構成し、その能力を発揮するのです。
例えば基本形態であるタトバコンボでは、頭部をタカ、腕部をトラ、脚部をバッタのコアメダルで構成します。
猫科ならライオン、トラ、チーターでラトラータ、大型獣ならサイ、ゴリラ、ゾウでサゴーゾ、昆虫ならクワガタ、カマキリ、バッタでガタキリバ、鳥ならタカ、クジャク、コンドルでタジャドル、海洋生物ならシャチ、ウナギ、タコでシャウタといった具合です。
頭の文字を取ってみたり、途中の文字を取ってみたりと、統一性がありませんが、コンボ名をらしくするために適当にやっているようです。
5種類のカテゴリーで3枚を使って変化させるため、番組開始時点で5の3乗=125種類のフォームになれるという異様な状況になっていました。
一方で、“今手元にないコアメダルは使えない”わけで、理論上125種類のフォームになれると言っても、本当に全部なれるわけではないのです。
具体的には、グリード達とコアメダル争奪戦をしているわけなので、奪われたら使えなくなる、奪ったら使えるようになる、というシーソーゲームなのです。
そのため、毎回の冒頭で「count the medal! 今持っているメダルは」というナレーションと共にオーズ側が持っているコアメダルが表示されます。そして、ラストには、もう一度それが表示された後、新たに得たメダルが表示され、失ったメダルが消えて、今持っているメダルの一覧になるという演出がありました。
この争奪戦により、先週まで使っていたフォームが使えなくなるという展開が生まれ、多種多様なフォームがありながら、どれでもなれるわけではないという特性を持ったのです。
反対にグリードは、自分が持っている(というか内包している)コアメダルの枚数に応じて姿(装飾)と強さが変わります。9枚全部揃うと完全体になり、1枚だとかなりボロボロな外見になります。ですので、グリードはグリードで、自分のコアメダルが欲しくてたまらないわけです。
枚数に上限があるコアメダルに対し、制限がないのがセルメダルです。
グリードにとっては、正に細胞であり、ある程度多い方がいい、ということになります。
逆に、オーズ側には、剣や2号ライダー:バース、自販機型のライドベンダーを使ってのカンドロイド(缶ジュース型から変形する小型メカ)使用などのエネルギー源として利用しています。
銀一色のセルメダルは、それこそゲームセンターのメダルじゃらじゃらのイメージで、しかも怪人を切ると血の代わりにセルメダルが飛び散るという画になっていました。
対してコアメダルは、赤、青、緑などのクリアカラーのメダルで、金色で縁取りされているデザインです。
これは、元々は金属で作るつもりが、商品化の兼ね合いでできなくなり、だったらとクリア素材で綺麗に見せるという方向にシフトしたらしいです。
「OOO」の商品展開は、当然、変身ベルト:オーズドライバーが中心になるわけですが、バックルに入れたメダルをスキャナーでスキャンすることで信号を読み取り、スキャナーに内蔵されたスピーカーから対応する音声を発するという仕組みです。コアメダル内部の基板には、クレジットカードなどと同じ技術を利用したICチップがあり、そこからの微弱な電波をスキャナーが拾うのです。
電波ということは、金属で遮断されてしまうので、コアメダルを金属で作ることができなかった、というわけです。
ちなみに、コアメダルは、ベルトに付属するものと各コンボ用セット売りのデラックス版のほか、ガシャポンや食玩で廉価版が発売されていましたが、デラックス版が縁の金色を金属製にしていたのに対し、廉価版は縁がプラスチック製でチープな外見でした。
この点は、前年の「W」のガイアメモリがデラックス版だけLED内蔵だったのと同様、デラックス版のアドバンテージとなっています。
コンボ用セット売りがとにかく品薄で、入手には相当な苦労が伴いました。
鷹羽は、トイザらスがテナントとして入っている建物の前に早朝から並びましたが、午前10時開店の店なのに、午前7時にはもう整理券の配布が終わっているという恐ろしい事態でした。
並んでいるのは、お母さんやおじいさんといった顔ぶれで、再販情報などママ友ネットワークが大活躍していました。
結局、鷹羽は毎回午前6時くらいには並んでいました。いくら息子のためとはいえ、自分のでもこんなに朝早くから並んだことないよなぁと苦笑いしていましたっけ。
「OOO」は、メイン脚本が小林靖子さんだったので、キャラが安定していてストーリーの矛盾が少なく、割と安心して見ていられました。
飄々としてつかみ所のない映司のキャラも、都合4回の劇場版を含めて見ればちゃんと理由があり、再三出てくる「明日のパンツさえあればいい」というセリフの背景も4つめの劇場版「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX」で語られています。裸一貫という覚悟なんですよね。
鷹羽は、ジャンプ漫画「花の慶次」での「褌は男の最後の着衣だ!これこそ己の心の様に輝く白であるべきだ!」というセリフを思い出しました。
ああ、劇場版といえば、暴れん坊将軍とも共演しましたっけ。ライドベンダーと馬が併走しているシーンは、悪い夢を見ているようでした。あの馬、よくバイクのエンジン音に怯えなかったなぁ。
「OOO」は、一貫して欲望が原動力となっている番組で、映司だけは“身近な人を守りたい”という私利私欲から外れた欲望ですが、誰もが自分の欲を前面に出しています。
アンクがアイスを食べたがるのは、元々は単なるキャラ付けと、何かあった時の交渉材料としての動機付け(アイスやるから手伝え的な)だったわけですが、これが終盤、“メダルの怪物の自分が、人間に憑依したことで味覚を得た”という話になってきます。
最終回、アンクが「ただのメダルの塊が死ぬとこまできた。こんな面白い満足できることがあるか」と、見果てぬ欲望の果てを見付けて“満足できる死”を得たこと、映司が真っ二つに割れたアンクのコアメダルを持って、アンクの幻と共に旅に出たこと、前述の劇場版で、“未来において復活したアンク”と出会って希望を得たこと、これらが、キャラクターとしての物語をまとめ上げました。
テレビだけで終わらないのはどうかと思いますけど、劇場版も含めての物語なら、これもありかなぁ、と思います。一応、テレビだけでもエンディングにはなっていますしね。
蛇足ながら、「OOO」28話は、「仮面ライダー」シリーズ通算1000話に当たり、メタ的な話になっています。
ちょうど「仮面ライダー」1話と同じ4月3日の放送で、タイトルロゴを「仮面ライダー1OOO」とやったり、冒頭の「count the medal!」が「count the episode!」になっていたりと、かなり楽しかったです。
冒頭で、映司達がショッカーの戦闘員の衣装を着ているのですが、ヒロインも着ていて、“あんな体の線が出る衣装を!?”と思ったら、ちゃんと上から黒のショートパンツをはいていたのでホッとしちゃいました。




