44 1年続けた特番(海賊戦隊ゴーカイジャー)
茂木多弥さまのリクエストです。
「海賊戦隊ゴーカイジャー」は、2011年に放映されたスーパー戦隊シリーズ35作品目です。
スーパー戦隊シリーズでは、当時、毎年のように「VSシリーズ」を製作していました。
「VSシリーズ」は、放映中の戦隊が前年放映の戦隊と共演するというもので、昔の東映まんが祭の「マジンガーZ対デビルマン」のような“夢の共演”です。
当初はVシネマのオリジナルビデオとして作られていたのが、やがて新年公開の劇場版として作られるようになり、それに伴って翌年の戦隊まで登場するようになりました。いわゆる顔見世興行です。
劇場版として制作されるようになったのは、「仮面ライダー」シリーズの劇場版が年末にも制作されるようになったことに対応しています。
劇場版だと予算が潤沢にもらえて、しかもそこで作った着ぐるみなどは本編に流用できるので、非常においしいのです。今はどうか知りませんが、ひところは「仮面ライダー」シリーズの番組終盤には、夏の劇場版で登場した着ぐるみがバンバン出演していました。
「ゴーカイジャー」も、そういった恩恵を存分に受けて作られた作品です。
「ゴーカイジャー」のお話はこうです。
かつてザンギャックの大艦隊が地球に攻め込んできた時、全てのスーパー戦隊がその力と引き換えに撃退した。放出されたスーパー戦隊の力は、レンジャーキーという小さな鍵になり、宇宙中にばらまかれた。
そのレンジャーキーを集めて回る男がいた。その男・アカレッドは、マーベラスとバスコという2人の仲間と共にレンジャーキーを集めていたが、バスコの裏切りにより倒れた。マーベラスはアカレッドの遺志を継ぎ、レンジャーキーを集め続ける。やがて4人の仲間を得たマーベラスは、ゴーカイジャーとして“宇宙最高のお宝”を手に入れるべく地球にやってきた。
偶然にも再び地球侵略にやってきたザンギャックの1隊と出会したゴーカイジャーは、成り行きからザンギャックと戦いつつ、“宇宙最高のお宝”を手に入れるために必要なレジェンド戦隊の“大いなる力”を集めていく。
レジェンド戦隊──本編では、歴代の戦隊をそう呼んでいる──は戦う力を失っており、その力はレンジャーキーとなって、ゴーカイジャーとバスコがそれぞれ集めています。
レンジャーキーは、戦隊戦士の人形が鍵に変形するというものです。
ゴーカイジャーは、変身アイテムであるモバイレーツにレンジャーキーを挿入することでそのレンジャーキーの戦士に変身し、その力を振るえるようになります。ゴーカイジャーは、この力を「海賊版」と呼んでいます。
「仮面ライダーディケイド」が、歴代の平成ライダーに変身できたように、ゴーカイジャーも歴代の戦隊ヒーローに変身できるのです。
ゴーカイジャーの場合、レンジャーキーを使えば、それが男性であれ女性であれ、変身した本人に合わせてスーツが変わります。具体的には、男性がスカートのある女性戦士に変身すると、スカートのないデザインに変更されるのです。
前述の、劇場版の恩恵というのは、スカートのない女性戦士のスーツやスカートのある男性戦士のスーツを新規製作し、劇場版の予算で作ったそのスーツをテレビ版で流用したということです。
おかげで“全員がピンク”とか“全員がブルー”などの絵面ができています。
「ゴーカイジャー」のもう1つの特徴は、“年間通してVSシリーズをやった”という点です。
“大いなる力”は、レジェンド戦隊のメンバーから認められることで、その戦隊のレンジャーキーの持つ本当の力が覚醒するというものです。つまり、レジェンド戦隊のメンバーが最低でも1人登場することになります。
スーパー戦隊シリーズは、基本的にはそれぞれ独立した世界観を持っており、ヘドリアン女王の続投により明確に続編となっている「電子戦隊デンジマン」と「太陽戦隊サンバルカン」を除いては、全て別世界の物語です。
だからこそ「VSシリーズ」というお祭りが存在するわけですが、「ゴーカイジャー」では、敢えて“全ての戦隊が同じ世界に存在する”という世界観にして共演させたのです。
しかも、「ディケイド」とは違い、出演する役者は元作品に出演していた本物です。
これは、毎年5人以上(サンバルカンのみ4人)役者がいるため、各番組から1人くらいは出演できるという事情があります。平成ライダーだと、全作品から主役を引っ張ってくるのはほぼ不可能ですからね。
例えば「未来戦隊タイムレンジャー」からは、レッド(竜也)ではなくイエロー(ドモン)が登場します。
ですが、決して余り物だからとかではなく、ちゃんと意味あるかたちで。
「タイムレンジャー」最終回では、未来人であるドモンがいなくなった後、ドモンの恋人であるホナミがドモンの子供を産んでいるのです。
「ゴーカイジャー」のタイムレンジャー回では、小学生の子供が登場しますが、ラストシーンでホナミが登場し、彼がホナミとドモンの息子であることが明かされるのです。
「タイムレンジャー」が好きだった人には、とんでもないご褒美でした。
また、「忍風戦隊ハリケンジャー」の回では、ハリケンジャーの3人が全員登場し、変身し、ゴーカイジャーと並んで名乗りを挙げるという豪華版でした。
「星獣戦隊ギンガマン」の回では、黒騎士ヒュウガ役の小川さんが、既に引退していたギンガレッド・リョウマ役の前原さんを説得して“炎の兄弟ふたたび”を実現しました。
「鳥人戦隊ジェットマン」の回では、既に死んでいるブラックコンドル(凱)が女神の力で一時的に甦って現れます。この回でブラックコンドルのスーツを着たのは、当時ブラックコンドルを着ていたスーツアクターでした。ついでに言うと、ブラックコンドルがあんまり強くないのも個人的にツボでした。
そして、凱は死の国に帰る前、マーベラスに
「綺麗な空だ。目に染みやがる。わかってるな、お前らが守る番だ。あの空を」
と言っています。この台詞は、「ジェットマン」最終回で、死ぬ寸前の凱と竜(レッド)の
「空が目に染みやがる。綺麗な空だ…」
「ああ、俺達が守ってきた青空だ」
を引き継いだものです。ああ、もう! 20年も経ってから、続きがあるなんて!
もっとも、「超獣戦隊ライブマン」回では、イエロー(丈)が“悪魔に魂を売った友を救えなかった”というようなことを言っていて、3人の友のうちオブラー(尾村豪)を救えたことを忘れていたのは大きなマイナスでした。
もちろん、こういった作劇を行ったことによる反動というものもあります。
その最大のものが、「ゴーカイジャー」という番組独自の世界観が希薄、というものです。
ゴーカイジャーは、海賊として“宇宙最大のお宝”を求めて地球にやってきました。1話では、たまたまザンギャックの襲撃に遭遇し、その時食べようとしていたカレーライスを食べ損ねた憂さ晴らしに戦っています。その時、“地球に守る価値があるかなんて知ったことじゃない”というようなことを言っており、地球を守るためではなくなりゆきで戦うのがメインでした。
それが最終決戦では、「俺達はこの星を守る。その価値があると知ったからな」と、地球を守るために戦うのです。
本来、「ゴーカイジャー」の世界観というのは、“たまたま地球を訪れた流れ者が、地球人との触れ合いを通して地球の良さを知る”というものなのでしょう。
ところが、レジェンド戦隊の回では、“レジェンド戦隊のメンバーとの触れ合いの中で、レジェンド戦隊から認められる”のが主眼になります。そうなると、価値を認める側から認められる側にシフトしてしまうのです。レジェンド戦隊回ではVSシリーズ的な世界観になり、「ゴーカイジャー」の世界観でなくなってしまいます。
しかも51話の中で34ものレジェンド戦隊と触れあわなければならないのです。劇場版で多くの戦隊が登場し、バスコが“大いなる力”を強奪したせいで直接触れあわなかったレジェンド戦隊もありましたが、それでも年間の半分近いエピソードがレジェンド戦隊回なのです。
おかげで、「ゴーカイジャー」の世界観がえらく希薄になってしまいました。
もう1つの問題は、レジェンド戦隊は現役の子供=レジェンド戦隊をリアルタイムで見ていない層にはわかりにくいということです。もちろん、知らないと面白くないというほどではないでしょうが、前述の元番組ありきの演出は全く通じません。「タイムレンジャー」回で言えば、ラストでドモンが涙ぐんでいるのを見ても“なんで泣いてるの?”となってしまうでしょう。
ちなみに、敵方のネーミングは、ザンギャック(残虐)、ワルズ・ギル(悪すぎる)、アクドス・ギル(あくどすぎる)、ダマラス(黙らす)、バリ・ゾーグ(罵詈雑言)、インサーン(陰惨)、デラツエイガー(でら強え)、ザツリグ(殺戮)、ダイランドー(大乱闘)、バスコ・タ・ジョロキア(タバスコ・ジョロキア)などと、かなりストレートなネタです。
アカレッドも、5年前のVSシリーズに登場したキャラだったりします。胸のマークが5増えてますけど(^^)
余談ですが、「ゴーカイジャー」の年代設定は、「天装戦隊ゴセイジャー」の数年後であり、実際の放映年よりも未来になっています。明確には語られていませんが、ゴセイジャーも参加している戦いでレンジャーキーが放出され、その数年後が舞台なのですから、これは当然です。
そのため、次作「特命戦隊ゴーバスターズ」では、舞台をパラレルワールドとして、「新西暦2012年」という特殊な年代設定にしています。
そんなとこ、拘らなくてもいいのにね。
もう1つ、この年は「VSシリーズ」が制作されていません。前番組であるゴセイジャーが春の劇場版に登場してしまっているせいもあるでしょうが、代わりに「宇宙刑事ギャバン」とコラボしています。
この劇場版では、冒頭、“宇宙刑事が宇宙海賊を逮捕する”という自然な展開で、ギャバン対ゴーカイジャーの戦闘を見せ(ギャバンの圧勝)、その後、銀河連邦警察の腐敗によるギャバン拘束と、ギャバンとマーベラスの縁、ゴーカイジャーによるギャバン救出と共闘など、中身はないながら燃える演出が多々ありました。
CGを駆使した電子聖獣ドルはかっこよかった。
ラストでは、ギャバンを演じた大葉健二さんによる、ギャバン・バトルケニア・デンジブルーの揃い踏みもやっています。
これは、「宇宙刑事シャイダー」最終回後の特番「3人の宇宙刑事」でのギャバン・シャリバン・シャイダーの揃い踏みを踏まえたものでした。蛇足ながら、劇場に一緒に連れて行った息子(当時小学生)が「これって宇宙刑事だよね」と、元ネタをわかっていたことが嬉しかったです。




